ゲームブック ドスくん落ち
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ねえどうしてなの。
いきがうまくできなくてくるしい。
「私、どうすれば」
じわじわと涙が視界を侵して頬を伝っていく。
どうして、フョードルさん。
私には、誰かが死ぬほどの価値なんてないのに。私なんかのために死んでいい命なんて、ないのに。
「どうやら君は、私が予想していた以上にただの人間だったようだ」
掴まれていた手が緩やかに離れる。
立つことすらままならず地べたにしゃがみこむと、風に髪を靡かせた太宰さんが私を見下ろしていた。
「...昔、友人が私にこう言った。
"どっちも同じなら、いい人になれ。人を救う側になれ"と。だから武装探偵社に入ったんだ」
どこかで、聞いた覚えのある言葉に顔をあげる。伏せられた瞳は哀愁を帯びていて、ああ、彼の亡き友人の事かとぼんやりと思い出す。
「私はこれでも色んな人間を見てきた。だから解る。君に闇の世界は向いていない。帰れないのならこの世界で生きていくしかない」
離れたはずの手が、再び伸ばされる。
生きていくしか、ない。日頃心中を口にする貴方がその言葉を言うのか。
元の世界への手がかりはもう無くなってしまった。もしかしたら、異能力で帰れるのかもしれない。だけどその能力者はきっとあの神主と同じように殺されるのだろう。
今までは人の死とは遠い場所にいた。それは原作の通りだと、自分関係なしに必要な犠牲なのだと思い込んでいた。
だけど既に違っていた。
この手をとったら、もうフョードルさんの元には帰れない。
...もう、帰らない。
「なら、人を救う側として生きていく方がとても素敵だ。そうは思わないかい?」
そして伸ばされるがまま私はその手をとった。
「私は太宰。武装探偵社の太宰治だ」
「私は、なまえ。ただのなまえ」
終
掴んだ手は暖かかった。この世界で初めてただのなまえとして新しい人生を生きていく。