ゲームブック ドスくん落ち
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突然掛けられた言葉に当たりを見渡すと、雲の切れ目から漏れる月光が黒い蓬髪の男を照らした。
「ぁ、」
太宰、治。
咄嗟に後ずさると逃がさないと言わんばかりに詰め寄られ右手を強く掴まれた。
「うふふ、あの魔人が隠していたお宝が君みたいな女性だなんてねぇ。驚いたよ」
「離してっ...!」
「経歴も不明、異能も持たぬ一般人である君が何故ドストエフスキーに付き従う?
このヨコハマで何があったか、ドストエフスキーが何をしたか、君は知っているはずだ。
地 下 奥 深 く ま で よ く 響 い た だ ろ う ?」
「そ、れは」
フョードルさんは何も言わないが、時期からしてきっと組合との戦争があったのだろうとは予想していた。太宰さんの言う通り地上の銃声がときおり聞こえていたのだ。けれど、自分にはなにもできないのだからと、我が身可愛さに知らないふりをし続けた。
目の前の瞳が逸らすことなく私を見続け、形のいい唇が次から次へと言葉を紡いでいく。
「経歴不明と先程言ったが、実は君が何者かは検討がついているんだ。ドストエフスキーは初めから君を元の世界に返す気など毛頭ないよ」
「!?いい加減な事を言わないで..!だってあの人は」
「先日の戦争の最中、状況を危惧した異能特務化が用意していた空中無人戦闘機の幾つかが、外部からのウイルスにより制御不能になり墜落してね。ねえ、 ど こ に 堕 ち た と 思 う ? 」
「 え ? 」
どこって言われても分からない。疑問を口に出すより早く懐から取り出された物を見つめる。写真に写るのはどことなく見覚えのある赤い、もとは立派な鳥居だったであろうもの。激しく燃えたのか木々は全て焼け倒れている。小さく右下に写る欠けた社柱。激しく様子が変われど確かにあの場所だった。
うそ。声にならなかったそれを読み取ったのか太宰さんは尚も話し続ける。
「ここの神主が異能力者だったんだ。君はその異能力でここにきた。もっとも、すでに彼は殺されたけどもね」
「、」
そんな、なぜ?
うそ、本当は分かりきっている。でもそれを認める覚悟が私には無かった。しかしそれは許さないと言わんばかりに彼の口は止まらない。
「彼のせいで君は見知らぬ世界に飛ばされ不運な目にもあっただろう。だがそれは彼が死んで償わなければならないほどのことなのかい?」
「ちがう、私じゃない」
「直接手にかけたのは君じゃあない。けど君が原因で殺されたのには違いない。彼にはね、妻子がいたのだよ。一家全員亡くなったけどね」
私のせいで、人が死んだ。受け入れ難い事実に視界が歪み呼吸が苦しくなり、掴まれた腕がじんじんと痛みを訴える。
「君がドストエフスキーといる限り、やつは何度でも同じことを繰り返すだろう」
これ以上自分のせいで死者を増やしたくないのなら手を引けと、そういうことだ。
自分のせいで、誰かが死んだ。
私はその事実を、
受け入れた
受け入れることができなかった