ゲームブック ドスくん落ち
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今日は午後から知り合いに会うため此処を留守にするのだと以前から聞いていた。だからフョードルさんが出かける前に話すべく彼の部屋に向かう。きっと、分かってくれるかもしれない。
「急にどうしましたか?そんなに浮かない顔をして」
手を止めて閉じこちらを振り返る。
液晶と配線だらけの不気味な部屋ももう慣れた。相変わらず、パソコンの光に照らされる顔色は相変わらずすこぶる悪い。
「忙しいのにごめんなさい。少し大事な話があって、二人きりで話したくて」
そう言えば返事はせずとも目線で話を促されたので話を続ける。大丈夫、大丈夫。不安を掻き消すべく心の中で何ども唱える。
この世界に私の住んでいる住所は存在しなかったが、あの神社は存在していた。
そこに行けばもしかしたら帰れるかもしれない。
「帰ることがなまえさんの望みなんですね」
相槌も打たず黙っていたフョードルさんが不意にぽつりと零す。
ごめんなさい、小さくと謝る。
「いえ、いいんです。貴女には貴女の帰る場所がある。それだけの事です。仕方の無いこと。ぼくの方でも何か調べておきましょう」
寂しげな顔に心が全く痛まない訳ではない。
彼より元の世界を選んだのだから仕方ないのだ。中途半端な気持ちで恋人などという深い関係になった自分が悪いのだ。
「ただし、ぼくが帰ってくるまでは勝手に行かないでくださいね。今何かと物騒なので」
どうやら最近敵組織の活動が過激になっているらしい。原作で書かれていた武装探偵社やポートマフィア、軍警察以外にも敵は多いらしいのだ。
このアジトがバレたとは考えにくいがスパイや付近に狙撃手がいる可能性があるのだという。
武装探偵社に関しては自分と似た男以外は差ほど脅威では無いと言っていたが、似た男とは間違いなく太宰治なのだろう。確かに彼以外なら捕虜として捕まっても手酷くすることは無い筈だ。だって彼らは優しい、善の人間だ。この人とは比べようがない程に。
彼ならば貴女を、ぼくをおびき出す為の駒にするでしょう。
そして異能を持たぬ一般人といえ万が一軍警察に捕まれば犯罪者である自分の関係者として死より辛い拷問をされるでしょうから、なんて恐ろしいことまで言い出した。この人の元で世話になったときから考えてはいたが実際に言葉にされると心臓が嫌な悲鳴をあげる。
頷くことしか出来ずそのままフョードルさんを見送る。
「離れるのがさみしいです。とても」
そう言った彼の顔は酷く悲しげだった。赤紫の美しい瞳が憂いている。
そうさせているのは間違いなく自分なのだが。
それから三日経ってもフョードルさんは帰って来なかった。
イワンさんが連絡をとっても応答がないらしい。こんなことは初めてだという。
有り得ない。だって彼は物語のラスボスで、武装探偵社以外に負けるなんてそんなこと有り得るはずがない。
なら、ならば何故帰って来ない?
まだ"共食い"前のはず。
投獄されるのは、少なくとも共食いのあとだったはず。まさか、私がいたから彼の行動が原作から外れてしまったのか?
…そんな馬鹿な。
ゾッと背筋が凍る。一番恐れていた事だ。
…いや、ありえない。たかが私一人の介入で何かが変わるはずが無い。
それに、自分は元の世界に帰りたいのだから。そう思ってはいても不安は消えない。
真夜中。
溜息を吐きながらベッドに潜る。ここ最近他の人達は何やら忙しいのか声をかけづらい雰囲気だ。
いったいなにをしているの。
せめて連絡の一つでもあれば。
そう考えていた矢先、携帯がメールの着信音を立てた。慌てて確認すると送信元はもちろんフョードルさんしかいない。
少々面倒なことになりました。他の部下には囮を命じているのでヨコハマ港のターミナルまで来て下さい。拠点を移します。
理解するよりも先に私は携帯と護身用の銃を握りしめ部屋を飛び出していた。
彼は人を否、全てを掌で操るような恐ろしい魔人。そんな彼が面倒なことだと?いったいなにが。焦りでもつれそうになる足を必死に動かして迷路のような地下を走った。
監視の呼び声など無視して数少ない外出の記憶を手繰り寄せながら走るとなんとか外に通じた。
ここに来てから、初めて1人で月を見るのは最初の日以来だ。あの日以外は、いつも彼がそばにいた。
月が出ていても雲がかかっているせいで薄暗く見通しが悪い。そのくせ風に乗って聞こえる人やサイレンの音となにかが焦げたような匂いがひどく不愉快だ。
広い交差点にでるとどこからが煙が上がり人が野次馬の如く集まり騒いでいる。一部の建物に規制テープが張られ崩壊している箇所もあった。警察が規制しているが何よりも好奇心を抑えられない野次馬達にはあまり意味がないようだ。
そもそも港ってどこだ。慌てて携帯の地図を起動して確認するが人が多いせいか起動してくれない。自分の方向音痴が憎たらしい。
なんとか標識を頼りに走っていく。
港といえば当然船だ。船といえばAだったか名前は定かではないがマフィアの幹部と対面しているのではなかったか。
ああ、ならもしかしたら怪我をしているかもしれない。どうせなら包帯とかタオルを持ってくれば良かったと後悔する。あの人は風邪をひくと拗らせて非常に面倒臭いのだから。
もう、どうして今なの。私が帰ったあとにいくらでも好き勝手やってよ。ねえ原作通りなんどよね、ちゃんと無事だよね。問いかけには誰も答えてはくれない。
月明かりが意味を成さない夜を息を切らしてひたすら走り続けた。
なんとか海岸沿いまで着いたもののそこは街中から少し離れた静かな場所で街灯は少なく、人の気配も無く明かりの付いた民家も見当たらないため暗くて周りがよく見えないうえにコンテナが邪魔をして更に視界が悪い。いったい何処だと探し回っていた時だった。
「やあ、綺麗なお嬢さん」
誰かに後ろから襲われた
「急にどうしましたか?そんなに浮かない顔をして」
手を止めて閉じこちらを振り返る。
液晶と配線だらけの不気味な部屋ももう慣れた。相変わらず、パソコンの光に照らされる顔色は相変わらずすこぶる悪い。
「忙しいのにごめんなさい。少し大事な話があって、二人きりで話したくて」
そう言えば返事はせずとも目線で話を促されたので話を続ける。大丈夫、大丈夫。不安を掻き消すべく心の中で何ども唱える。
この世界に私の住んでいる住所は存在しなかったが、あの神社は存在していた。
そこに行けばもしかしたら帰れるかもしれない。
「帰ることがなまえさんの望みなんですね」
相槌も打たず黙っていたフョードルさんが不意にぽつりと零す。
ごめんなさい、小さくと謝る。
「いえ、いいんです。貴女には貴女の帰る場所がある。それだけの事です。仕方の無いこと。ぼくの方でも何か調べておきましょう」
寂しげな顔に心が全く痛まない訳ではない。
彼より元の世界を選んだのだから仕方ないのだ。中途半端な気持ちで恋人などという深い関係になった自分が悪いのだ。
「ただし、ぼくが帰ってくるまでは勝手に行かないでくださいね。今何かと物騒なので」
どうやら最近敵組織の活動が過激になっているらしい。原作で書かれていた武装探偵社やポートマフィア、軍警察以外にも敵は多いらしいのだ。
このアジトがバレたとは考えにくいがスパイや付近に狙撃手がいる可能性があるのだという。
武装探偵社に関しては自分と似た男以外は差ほど脅威では無いと言っていたが、似た男とは間違いなく太宰治なのだろう。確かに彼以外なら捕虜として捕まっても手酷くすることは無い筈だ。だって彼らは優しい、善の人間だ。この人とは比べようがない程に。
彼ならば貴女を、ぼくをおびき出す為の駒にするでしょう。
そして異能を持たぬ一般人といえ万が一軍警察に捕まれば犯罪者である自分の関係者として死より辛い拷問をされるでしょうから、なんて恐ろしいことまで言い出した。この人の元で世話になったときから考えてはいたが実際に言葉にされると心臓が嫌な悲鳴をあげる。
頷くことしか出来ずそのままフョードルさんを見送る。
「離れるのがさみしいです。とても」
そう言った彼の顔は酷く悲しげだった。赤紫の美しい瞳が憂いている。
そうさせているのは間違いなく自分なのだが。
それから三日経ってもフョードルさんは帰って来なかった。
イワンさんが連絡をとっても応答がないらしい。こんなことは初めてだという。
有り得ない。だって彼は物語のラスボスで、武装探偵社以外に負けるなんてそんなこと有り得るはずがない。
なら、ならば何故帰って来ない?
まだ"共食い"前のはず。
投獄されるのは、少なくとも共食いのあとだったはず。まさか、私がいたから彼の行動が原作から外れてしまったのか?
…そんな馬鹿な。
ゾッと背筋が凍る。一番恐れていた事だ。
…いや、ありえない。たかが私一人の介入で何かが変わるはずが無い。
それに、自分は元の世界に帰りたいのだから。そう思ってはいても不安は消えない。
真夜中。
溜息を吐きながらベッドに潜る。ここ最近他の人達は何やら忙しいのか声をかけづらい雰囲気だ。
いったいなにをしているの。
せめて連絡の一つでもあれば。
そう考えていた矢先、携帯がメールの着信音を立てた。慌てて確認すると送信元はもちろんフョードルさんしかいない。
少々面倒なことになりました。他の部下には囮を命じているのでヨコハマ港のターミナルまで来て下さい。拠点を移します。
理解するよりも先に私は携帯と護身用の銃を握りしめ部屋を飛び出していた。
彼は人を否、全てを掌で操るような恐ろしい魔人。そんな彼が面倒なことだと?いったいなにが。焦りでもつれそうになる足を必死に動かして迷路のような地下を走った。
監視の呼び声など無視して数少ない外出の記憶を手繰り寄せながら走るとなんとか外に通じた。
ここに来てから、初めて1人で月を見るのは最初の日以来だ。あの日以外は、いつも彼がそばにいた。
月が出ていても雲がかかっているせいで薄暗く見通しが悪い。そのくせ風に乗って聞こえる人やサイレンの音となにかが焦げたような匂いがひどく不愉快だ。
広い交差点にでるとどこからが煙が上がり人が野次馬の如く集まり騒いでいる。一部の建物に規制テープが張られ崩壊している箇所もあった。警察が規制しているが何よりも好奇心を抑えられない野次馬達にはあまり意味がないようだ。
そもそも港ってどこだ。慌てて携帯の地図を起動して確認するが人が多いせいか起動してくれない。自分の方向音痴が憎たらしい。
なんとか標識を頼りに走っていく。
港といえば当然船だ。船といえばAだったか名前は定かではないがマフィアの幹部と対面しているのではなかったか。
ああ、ならもしかしたら怪我をしているかもしれない。どうせなら包帯とかタオルを持ってくれば良かったと後悔する。あの人は風邪をひくと拗らせて非常に面倒臭いのだから。
もう、どうして今なの。私が帰ったあとにいくらでも好き勝手やってよ。ねえ原作通りなんどよね、ちゃんと無事だよね。問いかけには誰も答えてはくれない。
月明かりが意味を成さない夜を息を切らしてひたすら走り続けた。
なんとか海岸沿いまで着いたもののそこは街中から少し離れた静かな場所で街灯は少なく、人の気配も無く明かりの付いた民家も見当たらないため暗くて周りがよく見えないうえにコンテナが邪魔をして更に視界が悪い。いったい何処だと探し回っていた時だった。
「やあ、綺麗なお嬢さん」
誰かに後ろから襲われた