ゲームブック ドスくん落ち
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別れの挨拶でもするべきかと思ったが、正直あの人、恋人のフョードルさんを見たら決心が鈍る。ただ単に目の前で非人道的な行動をしなかっただけなのだろうが、この世界で私に対しては実に優しかったのだ。
それに、あの人は口が上手だから言いくるめられてしまう。
今いるこの基地はヨコハマ郊外の外れだと、以前聞いた。この基地に来てからというものの、1人で外に出た事がないが、日本なのだからきっとなんとかなるだろう。これがロシアでなくて良かったと心から安堵した。
...この世界に私の住んでいた住所は存在しなかったが、あの神社は存在していた。
元の世界でも観光スポットとして密かに人気があった場所だ。もしかしたら帰れるかもしれない。最悪手がかりだけでも掴めるかもしれない。
電車をいくつか乗り継げば今日中にでも行けるだろう。最悪野宿でも構わない。
フョードルさんはお昼から知り合いに会いに行くと言っていた。今まで従順を装っていたのが幸をなしたのか近頃は監視の目も緩い。
今日を逃せば、今度いつ彼の監視が無くなるか分からない。
...大丈夫、私ならやれる。
ふと時計をみれば針が十二時を指しておりそろそろお昼ご飯の時間である。
できるだけ食事は一緒にとる約束だ。
土壇場作戦ではあるけども負担通りに振る舞えばいいだけだ。
部屋の前にいる監視に声をかけ彼の仕事部屋に向かう。ノックをすればどうぞと聞こえたので遠慮なく扉を開ける。いつもより力が強かったかもしれない。
「フョードルさんご飯にしましょう?」
「もうそんな時間でしたか」
カタカタと忙しなくキーボードを叩く手が止まる。画面にはよく分からない数字や英語が敷き詰められている。
ふぅとため息をついてから赤紫の瞳がじいっとこちらを見つめる。「おいで」それは可愛がりたいの合図だ。配線に引っかからないように彼に覆い被さると首筋に顔を埋められて悲鳴が出そうになるのを耐える。
「ああ可愛い。なまえさんはいい子ですね」
フョードルさんの手が背中に周りもう片方で髪を撫でる。この時間は、結構好きだった。
こんな華奢な体でも抱きしめられると力強くて守られているような安心感に包まれるから。ずっといい子でいてくださいね。小さな囁きに肯定を示すべくそっと口づける。
「ぼくは仕事で2、3日空けますが何かあったら必ず連絡するんですよ」
「うん、分かってるよ。大丈夫」
昼食を済ませ出発までもうすぐ。
心做しかいつもより表情の曇る彼に、これが最後だと思うと名残り惜しくなって、もう一度キスをした。
身長差のある彼に私からキスをする時は肩に手を置くのが合図だった。
そっと右手を乗せれば私に合わせてその長身を屈めてくれる。青白い顔が近づき、長い睫毛の隙間から覗く赤紫の瞳がゆっくり閉じていく。
「ん、...なまえさん」
互いの唇が触れ、下唇を啄むと艶やかな掠れた吐息が耳を擽る。唇が離れると同時に腰に手が当てられ、抱きしめられる。何度も彼に抱かれた体はそれだけで疼いてしまう。
「ふふ、どうしました?寂しいですか?」
「...うん。早く帰ってきてね」
ふわりと香るフョードルさんの匂い。もっと、とすり寄れば服越しに聞こえる微かな鼓動。何となく、心拍数が早いような気がする。
「本当に、愛らしい人だ。すぐに帰りますから続きはその時に、ね」
赤紫の瞳が愛おしくて堪らないとばかりに弧を描いた。
目立たぬように出来るだけ軽装備でお財布と、...フョードルさんから貰った貴金属だけを幾つかバッグに詰めた。彼には申し訳ないが最悪お金に困った時の為の保険だ。道を覚えるのは苦労したがスマホは位置情報アプリとか入っていそうだから置いかねばならないので仕方ない。
日が沈み真っ暗になった夜。
部屋を出て外に行こうとするとティーセットを持った彼の部下に呼び止められる。
「おや、なまえ様?」
揺れる長髪に特徴的な頭部の包帯。
ああ、面倒な人に捕まってしまった。寄りにもよって今夜の監視はこの人だなんて。
「一緒にロシアンティーでもと思ったのですが、こんな時間にどちらにいかれるのですか?」
「あれ、連絡まだ来てませんか?その、...フョードルさんに会いたいって我儘言ったら、夜間列車の手続きをしてくれたので会いにいこうかと」
「そうでしたか。道中の護衛は?」
「駅の方で合流するので大丈夫ですよ。せっかく用意してくれたのにごめんなさい。それじゃあ行ってきますね」
「ええ、いってらっしゃい」
不幸を感じないのだという不思議な彼に、その場凌ぎの嘘で誤魔化して通り過ぎる。
そしてアジトを出て予定通り無事に駅に着き、目的地まで行く。
はずだった
それに、あの人は口が上手だから言いくるめられてしまう。
今いるこの基地はヨコハマ郊外の外れだと、以前聞いた。この基地に来てからというものの、1人で外に出た事がないが、日本なのだからきっとなんとかなるだろう。これがロシアでなくて良かったと心から安堵した。
...この世界に私の住んでいた住所は存在しなかったが、あの神社は存在していた。
元の世界でも観光スポットとして密かに人気があった場所だ。もしかしたら帰れるかもしれない。最悪手がかりだけでも掴めるかもしれない。
電車をいくつか乗り継げば今日中にでも行けるだろう。最悪野宿でも構わない。
フョードルさんはお昼から知り合いに会いに行くと言っていた。今まで従順を装っていたのが幸をなしたのか近頃は監視の目も緩い。
今日を逃せば、今度いつ彼の監視が無くなるか分からない。
...大丈夫、私ならやれる。
ふと時計をみれば針が十二時を指しておりそろそろお昼ご飯の時間である。
できるだけ食事は一緒にとる約束だ。
土壇場作戦ではあるけども負担通りに振る舞えばいいだけだ。
部屋の前にいる監視に声をかけ彼の仕事部屋に向かう。ノックをすればどうぞと聞こえたので遠慮なく扉を開ける。いつもより力が強かったかもしれない。
「フョードルさんご飯にしましょう?」
「もうそんな時間でしたか」
カタカタと忙しなくキーボードを叩く手が止まる。画面にはよく分からない数字や英語が敷き詰められている。
ふぅとため息をついてから赤紫の瞳がじいっとこちらを見つめる。「おいで」それは可愛がりたいの合図だ。配線に引っかからないように彼に覆い被さると首筋に顔を埋められて悲鳴が出そうになるのを耐える。
「ああ可愛い。なまえさんはいい子ですね」
フョードルさんの手が背中に周りもう片方で髪を撫でる。この時間は、結構好きだった。
こんな華奢な体でも抱きしめられると力強くて守られているような安心感に包まれるから。ずっといい子でいてくださいね。小さな囁きに肯定を示すべくそっと口づける。
「ぼくは仕事で2、3日空けますが何かあったら必ず連絡するんですよ」
「うん、分かってるよ。大丈夫」
昼食を済ませ出発までもうすぐ。
心做しかいつもより表情の曇る彼に、これが最後だと思うと名残り惜しくなって、もう一度キスをした。
身長差のある彼に私からキスをする時は肩に手を置くのが合図だった。
そっと右手を乗せれば私に合わせてその長身を屈めてくれる。青白い顔が近づき、長い睫毛の隙間から覗く赤紫の瞳がゆっくり閉じていく。
「ん、...なまえさん」
互いの唇が触れ、下唇を啄むと艶やかな掠れた吐息が耳を擽る。唇が離れると同時に腰に手が当てられ、抱きしめられる。何度も彼に抱かれた体はそれだけで疼いてしまう。
「ふふ、どうしました?寂しいですか?」
「...うん。早く帰ってきてね」
ふわりと香るフョードルさんの匂い。もっと、とすり寄れば服越しに聞こえる微かな鼓動。何となく、心拍数が早いような気がする。
「本当に、愛らしい人だ。すぐに帰りますから続きはその時に、ね」
赤紫の瞳が愛おしくて堪らないとばかりに弧を描いた。
目立たぬように出来るだけ軽装備でお財布と、...フョードルさんから貰った貴金属だけを幾つかバッグに詰めた。彼には申し訳ないが最悪お金に困った時の為の保険だ。道を覚えるのは苦労したがスマホは位置情報アプリとか入っていそうだから置いかねばならないので仕方ない。
日が沈み真っ暗になった夜。
部屋を出て外に行こうとするとティーセットを持った彼の部下に呼び止められる。
「おや、なまえ様?」
揺れる長髪に特徴的な頭部の包帯。
ああ、面倒な人に捕まってしまった。寄りにもよって今夜の監視はこの人だなんて。
「一緒にロシアンティーでもと思ったのですが、こんな時間にどちらにいかれるのですか?」
「あれ、連絡まだ来てませんか?その、...フョードルさんに会いたいって我儘言ったら、夜間列車の手続きをしてくれたので会いにいこうかと」
「そうでしたか。道中の護衛は?」
「駅の方で合流するので大丈夫ですよ。せっかく用意してくれたのにごめんなさい。それじゃあ行ってきますね」
「ええ、いってらっしゃい」
不幸を感じないのだという不思議な彼に、その場凌ぎの嘘で誤魔化して通り過ぎる。
そしてアジトを出て予定通り無事に駅に着き、目的地まで行く。
はずだった