ゲームブック ドスくん落ち
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……やっぱりだめだ。
元の世界も大切だけど、やっぱり私はあと人がいないと生きていけない。
彼を捨ててまで、だなんて有り得ない。
最近部屋に閉じこもってばかりだったから情緒不安定だったのだろう。私はなんて事を考えていたのか。
時計を見ればもうすぐ昼食の時間だ。せっかくだから気分転換にフョードルさんと何か食べよう。監視役に伝え厨房に向かう。簡素な作りの厨房は最低限のものしかない。いつでも移動できるように、らしい。
セキュリティのしっかりしたホテルも好きだけどこういうのも結構好きだったりする。
以前購入したブリヌイや生クリームを冷凍庫から探し出し解凍しておく。本当は以前食べたスメタナというクリームが欲しかったがなかなかこっちでは売っている店が少ないのだ。それまた今度、フョードルさんがロシアに行ったときのお土産に期待しよう。
料理は苦手だけどたまにはなにか作ろうかと悩み無難にトーストにすることにした。半熟の目玉焼きとベーコン、インスタントのコンソメスープでいいか。欲を言うならばサラダやフルーツも欲しいが材料がないので諦める。
あってもフョードルさんは少食だから食べれないだろうし。出来上がったそれらをお盆に乗せるが二人分は持てない。往復するのも面倒でスマホからメッセージを送ればすぐに既読がつく。待っている間にデザートを用意しておこう。流水で程よく回答されたクレープのような生地に生クリームを乗せていく。
「お待たせしました」
ちょうどいいタイミングでフョードルさんがきてくれたので二人で私の部屋に運ぶ。
「ありがとう、助かります」
「いいえ、お安い御用ですよ。準備ありがとう。段差気をつけて」
厨房の出入口の段差に躓かないように声をかけてくれる。鈍臭い自分にはとてもありがたい。
「そういえば今日、お昼からお仕事?」
「ええ、数日留守にします。お留守番お願いしますね」
部屋で食事をしながら予定を尋ねるとそんな寂しそうな顔をしないでくださいと言われる。寂しいのはもちろん、あんな事を考えてしまった負い目も多少感じる。
「だって最近忙しいみたいだし」
「おや、随分と素直ですね」
愉快そうに目を細めて笑う。素直な子は好きですと続くと頬が熱くなるのを感じた。赤くなった頬を誤魔化すべくデザートを口にする。
「また食べ過ぎてお腹が痛くならないよう気をつけてくださいね」
「…今回はちゃんと少なめにしましたから!」
食べ過ぎて痛い目を見たのは記憶に新しい。
「なまえさん、ぼくにも一口」
ご丁寧にあーんと台詞まで薄い唇が開かれご要望通り口にいれる。
「うん、いつも通りの味ですね」
ロシア育ちの彼には慣れ親しんだ味なのだろう。
「ではどうぞ、あーん」
呑気な声にぎょっとする。こういう甘い雰囲気は嫌いじゃない。のだけれどもあのフョードルさんが相手だとどうにも羞恥心が消えない。「ふふ、関節キスですね。ご馳走様でした」なんて言うから動揺して舌を噛んでしまった。クリームに鉄の足が加わって最悪だ。
「キス以上の事だってしているのに、何を今更。さあ、見せてください」
容赦なく舌先を掴まれて観察されるではないか。更なる羞恥プレイに涙が滲む。というか手で舌を触るなんてやめて欲しい。
「……」
「ひょうしはの」
そして無言もやめて欲しい。どうしたのと聞くはずがなんとも情けない声共にと唾液が零れそうになる。
「いえね、なかなか悪くない眺めだなと思いまして」
「ん~!」
「ふふ」
なんだかしたくなってきました。なんて平然と言うものだからこっちが飯能に困ってしまう。そしてそろそろ離してほしい、唾液がそろそろ限界である。零れそうになった瞬間、生ぬるい舌が掬い舐めとりそのまま舌を絡め始めた。溜まった唾液と血が混じりぬるりと口内を汚していく。
「っ!?」
「ん、…ふふ。残念ながら今日は時間が少ないのでここまでですね。帰ってきたらたくさん可愛がってあげますから」
いい子で待っていてくださいね、なんて耳元で囁かれては頷く以外他ない。
「愛しています。ぼくの愛しい人」
どろりとした執着を宿す瞳にぞくりとした。
本能的な恐怖のような気もするし快楽なのかもしれない。どちらにせよ私はもうこの人から離れられない。
ああ、今は原作のどこなんだろう。
今後の展開は、この人は最後どうなってしまうのか、もうほとんど覚えていない。
それでもいい。行き着く先が地獄でも構わない。フョードル・ドストエフスキー以外もう何もいらない。
もうあなた以外考えられなくて