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「仕方ないなぁ、もう」


長い長い沈黙を破ったのは、私だった。
途端に強く抱きしめられて、嬉しいですと弱々しい声が聞こえた。
きっと長くいるうちにこの人に毒されてしまったんだ。もしかしたら洗脳でもされてるのかもしれない。どちらにせよあんな顔は反則だ。
…あんなに元の世界に帰りたいと思っていたのになぁ。
微かに震える背中を一定のリズムで軽く触れる。まさか魔人だの吸血鬼だのと呼ばれるこの人が泣いているのだろうか。ちらりと目線を向けても長い髪で表情は見えない。
瞼を閉じれば暗闇のなかに誰かが浮かんでは消えていく。大切な思い出たち、ごめんね。
きっともう、思い出してあげられない。
さようなら。




この人を選んだからには、私も探偵社やポートマフィアに殺されてしまうのだろう。