ゲームブック ドスくん落ち
夢小説設定
ご利用の端末、あるいはブラウザ設定では夢小説機能をご利用になることができません。
古いスマートフォン端末や、一部ブラウザのプライベートブラウジング機能をご利用の際は、機能に制限が掛かることがございます。
異様な気持ち悪さを感じて目が覚めた。
自室とは違う、最低限の家具。窓の無い殺風景な白い部屋。
その壁際にあるベッドに寝ていた。
ここは何処だろう。早く逃げなくては。
起き上がろうとして、違和感を感じ止まる。
「は、...えっ!?なにこれ...!?」
シーツを捲り違和感の正体にパニックに陥った。
あの人なら、いつかやりかねないとは思っていたがこれはあんまりだ。
足には、何も無かった。
文字通りに、膝から下の足が無いのだ。
切断にしては、痛みが無い。
なら、異能か。会った事は無いが天人五衰の一人ゴーゴリ、彼ならきっと可能だろう。脳裏に、異能で足を切断されナイフで切り刻まれていた主人公の中島敦くんが浮かび、ゾッとした。まさか、私もああなるの?身の毛もよだつ恐怖に歯がガチガチと音を立てて涙が溢れる。
その時、ドアが開き彼が入ってきた。
「おはようございます。目が覚めたんですね」
なんて事はない普段通りの挨拶に、怒りよりも恐怖が勝った。
「ね、ねえ返して、私の足、ご、…めんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさいもうしません許してください」
「安心してください。貴方の足は安全な場所で保管してあります。いい子にしていたらちゃんと返してあげますよ」
「そんな、こんなのって酷い」
「心外ですね。ぼくの愛と信頼を裏切った貴方の方が余程酷い人だ」
「っ、裏切った、わけじゃ...」
「裏切りですよ。ぼくよりも元の世界を選んだ。ぼくが居るというのに、強欲な人だ」
怒りに燃える瞳に、涙は止まることを知らない。怯えから口篭る私を心底愉快そうに追い詰めていく。ベッドに腰掛けて私の頬に触れてまるで死人の様に冷たい手に一瞬息が止まる。
「でも構いません。ぼくは神の下僕ですが貴女を楽園から追放はしません。貴方も貴方の罪も許し、救済したいのです。心配はいりません」
壁際に後退るがフョードルさんも身を乗り出して覆いかぶさった。
頬から少しづつ上に撫でて、さらりと耳元で髪が音を立てた。こわい、いやだ、やめて。本能が警笛を鳴らす。おねがい、もうにどとしません。ごめんなさいゆるしてください。ごめんなさ、
「ぼくは貴女を許します。贖罪を終えた貴方と二人で罪無き楽園で暮らしましょう?死してなお永遠に、ね」
全てがスローモーションのように幕を閉じた。
「ああ、良かった。目が覚めたんですね。...足は本当に残念ですが、今の医療ならきっと歩けるようになりますよ。大丈夫、治らなくともぼくが居ますよ。ずっとあなたを支えますから安心してください。
...どうしたんですか?記憶が、無い?...事故の後遺症でしょうか。
ぼくは貴方の恋人、フョードル・ドストエフスキーと言います。大丈夫ですよ。記憶が無くてもぼくは貴方を愛していますから。ぼくだけは貴方を見捨てません、何があっても絶対に、ね?」
ああ、少々悲しいですが、これでやっとぼくだけのなまえさんになりましたね。