文豪ストレイドッグス
夢小説設定
ご利用の端末、あるいはブラウザ設定では夢小説機能をご利用になることができません。
古いスマートフォン端末や、一部ブラウザのプライベートブラウジング機能をご利用の際は、機能に制限が掛かることがございます。
天気のいい休日午前10時より少し前。最近オープンしたばかりのケーキ屋さんに急いで向かう。まだ予定より10分ほど早いがもうあの子は着いてるだろうか。遠くに長い髪がふわりと揺れた。どうやら看板に書かれたメニューを見ているようだ。
「鏡花ちゃん!お待たせ!」
「大丈夫、私が早くに来ただけだから」
こちらを振り返りそう言う彼女は今日も可愛い。本当に、可愛いのだ。白い肌につぶらな瞳、桜色の唇に長いまつ毛は儚い少女なのにどこか凛々しさを感じる。ときおり風に靡く艶やかな髪に大きな髪飾りも、赤い着物も華奢な彼女の魅力を引き立てている。
「ちょうど開店時間。入ろう」
「そうだね、まだお客さん居なくてよかったよ」
オープンしてから日は浅いものの、開店前だからか他に客はいなかった。小洒落たステンドグラス風の扉を開ければベルの音と店員のいらっしゃいませが店内に響く。
「おぉ…、なんか…お洒落…」
まだ真新しい壁にはセンス良さげなポスターや、造花が飾られておりアンティーク風の飾り棚には焼き菓子が並べられ、素敵な店内だった。ぴかぴかのショーケースの前に並べばお目当てのケーキ達が照明の光でキラキラ輝いている。
「わぁ」
小さく感嘆の声が聞こえた。鏡花ちゃんの瞳はケーキ達に負けず劣らず輝いていた。
「これ、かわいい」
彼女が見つめるのはころんとした白い雪うさぎに似たケーキだった。
「ふふ、可愛いね。中はスポンジとラズベリーだって」
「うん。これにする。飲み物も決まった」
さて、自分はどうしようか。ここは動物をモチーフにしたお店で他にも熊や猫、犬…たくさんの動物が小さくなって私を選んで!と訴えているようだ。せっかくだからモンブラン風の熊ケーキにしよう。
それと、さっき見かけたあれもお持ち帰り用で注文しよう。
「注文しておくから、先に席とっておいてもらえないかな?」
「でも、」
「ね、私鏡花ちゃんとのデートを楽しみにお仕事頑張ったんだから私に出させてほしいな。働く楽しみがなくなっちゃうよ」
財布を取り出そうとする鏡花ちゃんにそっとお願いする。もしかしたら元ポートマフィアだし私よりお金持ちかも知れないが、子供に出させる趣味はないのだ。
「…わかった。ありがとう」
律儀に頭を下げてから席に向かっていく。
からん からん。
ベルの音が響いてお客さん達が入店してくる。早めに来ておいてよかった。
うさぎのラズベリーケーキとモンブラン熊のケーキ、アイスティーを2つ。それから猫とうさぎの形をしたクッキーの詰め合わせ。これなら日持ちするし帰ってから敦くんとも食べられるだろう。クッキーはあとで帰りに取りに取ると伝えてケーキと飲み物をトレーに乗せてお行儀よく座ったあの子のもとへ。
「ありがとう」
「ううん、こっちこそ、混み始めたから助かったよ」
いただきますと挨拶してからそっと口に運ぶ。濃厚なモンブランの下には軽やかなタルト生地。おお、これは美味しい。思わず口がにんまりしてしまう。鏡花ちゃんはどうだろう。着物のせいか、和菓子のイメージが強いのだけど気に入ってくれるだろうか。
ちら、目線を向けるの彼女の口角も同じように上がっていた。お口にあったようで何よりだ。
「おいしい。今度はあの人にも食べてほしい」
「そうだね。敦くんも気に入ってくれると嬉しいなぁ」
「次は三人でこよう」
「えっ」
「…だめ?」
「ううん、まさか!」
だめなんてとんでもない。とてもとても、心底嬉しい。家だったらきっと踊り狂っているかもしれない。私は鏡花ちゃんのことがとても大好きだ。可愛くて強くて、まだ幼いのに凛々しくしっかりしていて。漫画越しの姿も今こうして生きている彼女も全てが尊い。
だけど、彼女を救った主人公の敦くんは特別な存在で、二人だけの絆がある。なのに自分が二人の間に入ってもいいのだろうか。
「私がいても邪魔じゃないかな?」
「そんなことない。私も敦もあなたのことが好き」
「そ、そっかぁ。じゃあご一緒しようかな」
どうやら杞憂だったようで、思いがけない強烈過ぎる言葉に天にも召されそうだ。
ああ、神様ありがとう今日も推しが尊いです。ごめんね敦くん、今日は私が鏡花ちゃんを独り占めさせてね。
「鏡花ちゃん!おかえり!」
「敦、お土産。なまえさんから」
「わ、クッキーだ!なまえさんとお出かけいいなあ」
「あなたは先週、私のいない間になまえさんと昼食を共にした。私はしてないから今回は私の番。次、三人で行こう」
3/6ページ