制裁!
「何でも、って云ったのは君だからね。」
そう云って太宰はズボンのポケットから録音機を取り出し、得意気ににやりと笑った。
くそ。此奴録音なんてしてやがったのか。確かに此奴ならやりかねない。が、いざやられると腹が立つ。
思わず舌打ちが零れる。別に約束を反故にするつもりだった訳では無い。だが、万が一、そう万が一此奴が妙な事を云い出した時のための逃げ道くらいは残しておきたかった。
だが、それが今、目の前で無慈悲に塞がれたのである。
「さあ中也。覚悟はいいかい?」
「…おう。」気を張り直す。そうだ、俺はこれでもポートマフィアの五大幹部の一人だ。
太宰の無茶振りくらい如何という事はない。…筈だ。
にこ、と不敵に太宰が微笑んだ。嫌な予感しかしない。
残念でならないが、大抵この嫌な予感は当たるのだ。
「じゃ、遠慮なく。」
視界の端で太宰の腕が動く。何をする気かを理解した途端、思わず身構えた。
ぱん、と乾いた音が部屋に響く。頰が横へ弾かれ、じわりと熱が広がった。
「…っう、」
痛む頰を気に留めず、睨もうと顔を上げる。
端正な顔には、満足そうな笑みが広がっていた。ぁ、と思わず小さく声が漏れた。これは駄目だ。此奴、スイッチ入りやがった。
如何やらまだ終わりでは無いらしい。
「場所を変えよう。」
そう云って立ち上がって歩いていく太宰に後ろから着いて行く。
そうだ、此奴はこういう奴だった。
何となく予想はついていたから、先回りして首領に頼んで明日、休日を貰っていて正解だった。
歩きながら頰に残る熱を指先で確かめる。
じわりと広がった痛みは未だ消えない。太宰とは云えど軽い力では無かったなぁ、と他人事の様に思う。
連日働きすぎただろうか。胸の奥が妙にざわついて落ち着きならない。
熱を持つ頰を撫でる指先に、知らず力が籠る。
痛い。
確かに痛い筈なのに。
何故だか、その痛みすら心地良いもののように思えてしまう自分がいた。
馬鹿らしい。そんな筈があるか。
俺は小さく眉を顰める。
だが頰に残る熱は、指先でなぞっても消えてはくれない。まるでそこだけが太宰に触れられた証であるかのように、いつまでも鮮明だった。
胸の奥がひどく騒がしい。
理由など判らない。
判りたくもない。
ただ、あの乾いた音が耳の奥にこびりついて離れず、思い返すと喉の奥が熱くなる。
俺は吐き出すように息をついた。
──くそ。
本当に、如何かしている。
それなのに頰に残る痛みが消えてしまうことを、ほんの少しだけ惜しいと思った。
思えば、こんな気分になるのは初めてじゃない。
太宰は定期的に俺に暴力を振るう。
また息を吐き出す。
本ッ当にこの男は人を狂わす。自分の2、3歩前を歩く太宰を見て思った。
そう云って太宰はズボンのポケットから録音機を取り出し、得意気ににやりと笑った。
くそ。此奴録音なんてしてやがったのか。確かに此奴ならやりかねない。が、いざやられると腹が立つ。
思わず舌打ちが零れる。別に約束を反故にするつもりだった訳では無い。だが、万が一、そう万が一此奴が妙な事を云い出した時のための逃げ道くらいは残しておきたかった。
だが、それが今、目の前で無慈悲に塞がれたのである。
「さあ中也。覚悟はいいかい?」
「…おう。」気を張り直す。そうだ、俺はこれでもポートマフィアの五大幹部の一人だ。
太宰の無茶振りくらい如何という事はない。…筈だ。
にこ、と不敵に太宰が微笑んだ。嫌な予感しかしない。
残念でならないが、大抵この嫌な予感は当たるのだ。
「じゃ、遠慮なく。」
視界の端で太宰の腕が動く。何をする気かを理解した途端、思わず身構えた。
ぱん、と乾いた音が部屋に響く。頰が横へ弾かれ、じわりと熱が広がった。
「…っう、」
痛む頰を気に留めず、睨もうと顔を上げる。
端正な顔には、満足そうな笑みが広がっていた。ぁ、と思わず小さく声が漏れた。これは駄目だ。此奴、スイッチ入りやがった。
如何やらまだ終わりでは無いらしい。
「場所を変えよう。」
そう云って立ち上がって歩いていく太宰に後ろから着いて行く。
そうだ、此奴はこういう奴だった。
何となく予想はついていたから、先回りして首領に頼んで明日、休日を貰っていて正解だった。
歩きながら頰に残る熱を指先で確かめる。
じわりと広がった痛みは未だ消えない。太宰とは云えど軽い力では無かったなぁ、と他人事の様に思う。
連日働きすぎただろうか。胸の奥が妙にざわついて落ち着きならない。
熱を持つ頰を撫でる指先に、知らず力が籠る。
痛い。
確かに痛い筈なのに。
何故だか、その痛みすら心地良いもののように思えてしまう自分がいた。
馬鹿らしい。そんな筈があるか。
俺は小さく眉を顰める。
だが頰に残る熱は、指先でなぞっても消えてはくれない。まるでそこだけが太宰に触れられた証であるかのように、いつまでも鮮明だった。
胸の奥がひどく騒がしい。
理由など判らない。
判りたくもない。
ただ、あの乾いた音が耳の奥にこびりついて離れず、思い返すと喉の奥が熱くなる。
俺は吐き出すように息をついた。
──くそ。
本当に、如何かしている。
それなのに頰に残る痛みが消えてしまうことを、ほんの少しだけ惜しいと思った。
思えば、こんな気分になるのは初めてじゃない。
太宰は定期的に俺に暴力を振るう。
また息を吐き出す。
本ッ当にこの男は人を狂わす。自分の2、3歩前を歩く太宰を見て思った。
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