散文

その日は俺の家に集まっていた。
当たり前の様にソファに寝転がる太宰を横目に、キッチンへ向かう。
何故か。夕飯の準備の為だ。
冷蔵庫から食材を取り出し、包丁で切る。
「中也ぁ」
「どうした?」上体だけを起こして此方を見ている太宰に不覚にも愛しさを覚えた。
「うふふ、何でもないよ。」にこにことそう告げられた。
「はぁ??」心底訳が判らない。
だが理由もなく名前を呼ばれるのは悪い気もしない。きっと今俺の口角はあがっているだろう。それを誤魔化す様に料理に戻る。
視界の端で揺れる太宰に気を取られないよう、より一層集中した。

机に出来立てのご飯達を並べながら太宰を呼ぶ。「はぁい」と気の抜けた返事と共に起き上がる音が聞こえる。
「寝てただろ」太宰を一瞥し、椅子に座る。
「…バレた?」うふふ、と笑って向かいに太宰が座る。
『頂きます』
二人揃ってそう云い、箸を進め出す。全く美味しそうに食べてくれるもんだから次も食わせたくなる。
「今日は一段と美味しいねぇ!なんかいい事でもあったのかい?」
別にいい事があった訳ではないが、褒められたのは悪い気がしない。
「美味そうに食うな。」
「それは返事になってないのだけど!」そう云って口を尖らせた。
かわいい。思わず笑みを溢してしまう。
「…?」自覚がないからか、なんで笑ってるのか訳わかんない、とでも云う様に首を傾げられる。
「そういうとこだよ。」と告げると、太宰はまた会話になってないってば!と云う。本当にかわいい。
手を伸ばして撫でてやる。「早く食べ終わんな」そう云って俺は食器を片付ける。「え、嘘早いって!」などと云いながら急いで食べ始める太宰。
その必死さがなんとも愛おしい。頬が緩むのを自覚しながら太宰から視線を外した。




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