ようやく買い物を拾い終え、若者はクリスにお礼を言った。
「ありがとな、えっと名前は？」
「え、あ、クリスです…」
クリスは少しビクッとして言った。
「オレはクリリン。悟空達と武道家をやってるんだ。だけど、悟空は死んじまったんだ…」
クリリンは悲しそうに言った。
「…え？」
クリスは驚いた。
「何日か前に、ラディッツって悪い奴が現れて、悟空の息子・悟飯君を連れ去ったんだ。悟空はピッコロと一緒に戦ったんだけど、ラディッツをやっつける為に…」
「そ、そんな…」
クリスは初めて、カカロットが死んだ事を知った。
でも、あの時なぜかカカロットの姿がなかった。ラディッツと一緒に倒れたはずなのに。
「その、カ…ゴクウさんは…？」
クリスが言うと、クリリンは答えた。
「ピッコロの話だと、悟空は今界王星って所で修行をしているらしいんだ。1年後にやって来るサイヤ人に備えて…。それでオレ達も修行を始めたんだ」
クリスは黙ってクリリンの話を聞いていた。
「…そんな事があったなんて、大変だったんですね…」
クリスはごまかした。
今自分がフリーザの弟だということや、ラディッツを助けに地球に来た事を話せば、クリリンを怖がらせてしまうと。
だから、クリリンには今までの事を何も話さなかった。
「でもお前、この辺では…。いや、地球の人じゃなさそうだけど、どこの星の人なんだい？」
クリリンの意外な質問に、クリスは慌てた。
「え、その…、宇宙を放浪してたら、地球がすごくきれいだったから思わず…」
思わず適当な答えを口に出してしまった。
「宇宙を放浪って、家族はいないのか？」
「…はい」
その答えだけは本当だった。
「分かったよ、クリス。これからも地球の事をたくさん教えてあげるから、わからない事があったら何でも言ってくれ」
クリリンは明るく言った。
「あ、ありがとうございます。よろしくお願いします」
クリスは喜んだ。

それからというもの、毎日クリスはクリリンから地球で暮らす術を学んだ。
そしていつの間にか、クリスは地球に詳しくなっていき、仕事を終えて宇宙船に帰ると、必ずラディッツに話しかけていた。ラディッツは相変わらず眠ったままだが、クリスの話を毎日聞いていた。