Dear Saiyans 6話・緊迫の出会い

その夜、ラディッツは泣き疲れて、また眠ってしまった。クリスは、ラディッツの涙を拭き、背中を優しく傷に触れないように撫でながら、窓の外の星空を眺めていた。
地球から見る宇宙は、とても綺麗だった。
だが、夜空を眺めているうちに、クリスはある異変に気付いた。
それは、月が見当たらない事だった。
本来、惑星は衛星となる星が無ければ、重力や自転が乱れたりして、天変地異や異常気象が起こり、生き物が住めなくなってしまう。
ところが、今の地球は月がないにも関わらず、こうして無事でいるのが不思議だ。
「でも、どうして月が消えたんだろう…。そういえば、ラディーをメディカルマシンに入れた時に、何度か小さな地震が起こったような気が…」
あの時クリスが、ラディッツをメディカルマシンで治療していた時に、小さな地震と地鳴りが起こっていたのを感じたのだ。
さらにこんな事も思い出した。
「そうだ、地震と地鳴りが起こった時に、大きな動物の鳴き声みたいなのも聞こえた気がする…。一体、なんだったんだろう…」
クリスが呟いていると、ラディッツが一瞬だけ小さく唸った。背中の傷をうっかり触ってしまったのだ。
「あ、ごめんねラディー!痛かった?」
クリスはあわててラディッツに謝った。

しばらくして、クリスは日記を書きながら、師匠バーダックと過ごしてきた日々を思い出していた。
あの時は勉強漬けだった上に、親や兄達からの愛情も受けず、ひとりぼっちだった。
バーダックとギネ、カカロット、そしてラディッツ達と出会ったのは、まさにそんな時だった。
彼らと出会わなかったら、今頃自分はサイヤ人は本当は優しく勇敢で、温かい人々だという事を知らずにいたのかもしれない。
バーダックと出会えたから、ギネをはじめ、多くのサイヤ人達を、ラディッツを救うことができた。
「…バーダック師匠……」
クリスの目から、涙が溢れた。
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