「ラディーが、こんなに傷ついているから目を覚まさないんだ…」
クリスは暗い表情を浮かべて言った。
「心にここまで深い傷を負っていたとは…。揃いも揃ってかわいそうだ…」
農家のおじさんは悲しい表情で言った。
医師はクリスに言った。
「気持ちは分かるけど、なるべく暗い印象を与えないように心掛けたほうがいいよ」
「暗い印象を、与えないようにですか？」
「今のラディッツさんは、強い罪悪感と不安感に支配されているんだ。だから、彼が安心できるように、元気になれるように、なるべく楽しく明るい話をしてあげたほうがいいと思うよ。例えば、歌が好きなら、大好きな歌を聞かせてあげるのもひとつの手だね」
ー歌…。
確かにラディッツもベジータもナッパも、クリスの美しく透き通った歌声が大好きで、フリーザに引き離されるまでずっと聞いていた。
クリスはこの事を思い出した。
しかし、クリスは自信がなかった。それで、ラディッツは元気になれるのかと。
「…確かに昔は、ラディーと仲間だった二人はぼくの歌を聞くのが大好きだったんです。でも、ぼくははっきり言って歌が得意じゃないし、それが癒しになるかどうか…」
クリスが困っていると、農家のおじさんが言った。
「きっと大丈夫さ。それにお前さん、とても男の子とは思えないぐらいきれいな声じゃないか。オレもお前さんの歌を聞いてみたくなったよ」
「僕も聞いてみたいよ。もしかしたら、ラディッツさんも聞きたがっているかもしれないよ」
二人の期待に戸惑ったクリスだったが、意を決して歌ってみることにした。
「…わかりました。やってみます」