Dear Saiyans 54話・我が弟よ

フリーザ軍時代、ベジータやナッパと共に宇宙を巡り、惑星を荒らし回ったこと、弟との再会を喜ぶ暇もなく惑星侵略に誘い、傷つけ合ったことを思い出したラディッツは、先程の楽しげな表情から一変し、悲しみの表情を浮かべていた。
「オレは両親に反発し、クリスの言うことを聞かなかった。だから、今までのことが全て自分に返ってきたのだと思う」
身勝手な行動と無理をした結果、地獄に堕ち、生き返っても満足に戦えない身体を背負いながら生きなければならない。
まさに天罰だった、ラディッツはそう思いながら過ごしていた。
ラディッツの話を黙って聞いていた悟空は、そっと言った。
「確かにラディッツもナッパも、ベジータも悪いことをしてきた。でも、今のラディッツ達は、昔のことを反省して、自分達の壊した星や人々を生き返らせて、皆の為に一生懸命頑張ってる。だから今は、誰も兄ちゃん達を責めちゃいねぇぞ」
「本当か?」
「本当さ。それに、あの時はオラも悪かった」
悟空の悪かったという言葉に、ラディッツは目をまるくした。
「まぁ、いきなり現れてオラのアニキだって名乗られたら、そりゃ誰だってびっくりするけどな。でも、本当は嬉しかったんだ。生き別れの兄弟に会えたってな」
悟空は笑いながら言った。
「…だが、オレはお前を悪の道に引きずり込もうとしたから、最悪な再会になったな」
「まぁな。でも、その時は兄ちゃんの事情も分からねぇで、兄ちゃんがすごく大変だったということにも気付けなくて、オラも悪かった」
悟空もまた、ラディッツの心境を察することができず、最後は命をかけた戦いになってしまったことを悔やんでいた。
しかし、だからこそ前に進まなければならない。
いつまでも悔やんだり引きずったりしても、何もならない。
「…カカロット、オレのかわいい弟よ。これからもお前の家族を、この世界を守ってやってくれ」
ラディッツは悟空に抱きついて言った。
「あはは!なんだよ、やめろって!暑苦しいじゃねぇか!」
悟空はそう言いつつも、ラディッツを抱きしめた。
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