Dear Saiyans 3話・悲しき運命

フリーザの宇宙船を飛び出してから数時間、クリスは万が一に備えて治療用の器具や手当てする為の緊急箱、メディカルマシンの準備をしていた。
クリスは幼いながらも厳しい英才教育を受けて育った為、宇宙船の事も、医療の事についても詳しい。
しかし同時に、愛情を知らず辛い思いをした幼少期を過ごした故に、10歳を迎えた頃から、困っている人を放っておけないという情が芽生えていた。
そして、サイヤ人の温かさ、家族や仲間を想う優しさに触れ、いつしかサイヤ人を愛するようになった、同時にフリーザ軍への疑問を抱くようになった。
ー兄さんが星の制圧とか悪い事をしないで、宇宙の為に頑張ってくれたら、サイヤ人のみんなは幸せになれていたし、他の星の人たちも傷つく事もなかったのに…。
クリスの心はズキズキと痛んでいた。

クリスはラディッツの安否を確認する為、ラディッツのスカウターと埋め込まれたチップの情報をもとに、コンピューターを使って検索を試みた。
古い宇宙船とはいえ、すぐにラディッツのスカウターとチップにアクセスすることができた。
そして、ラディッツのスカウターから映された映像が出てきた。
もう既にラディッツは地球に到着していた。スカウター越しに映る地球の風景は、若干ぼやけているものの、言葉を失うほどの青くて美しい空と、大きな岩山、そして広くて鮮やかな緑色の草原が見えた。
「地球ってこんな星だったんだ…。すごくきれい…」
クリスは見たこともない地球の美しさに心を打たれた。
その時、聞いた事もない声が聞こえた。見ると、そこには地球人であろう男の姿が立っていた。
彼はどうやら、農家の人のようだった。
男はラディッツを見て銃を構えながら震えていた。
ラディッツは農家の男を見て呟いた。
「やはりこの星の奴らは生きていたか…。カカロットの奴め…」
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