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Dear Saiyans 44話・怖い夢にうなされて

すると、クリスの目の前に映像が浮かび上がった。
今、浮かび上がったこの映像こそが、今ラディッツが見ている夢だった。
クリスは人を癒やすだけでなく、眠っている人の夢を見ることもできるのだ。
「これは、ラディーの夢?」
クリスはラディッツの夢の映像を眺めていたが、まだモヤがかかっていて見えなかった。
やがてモヤが晴れると、そこには恐ろしい光景が広がっていた。
「これは、あの世!?しかも地獄!?」
クリスはびっくりして、思わずたじろいでしまった。
ラディッツは高熱によって、魔貫光殺砲の古傷が痛み出したことで、地獄に落ちた記憶が夢に出てきてしまったのだ。

夢とはいえ、地獄は本当に恐ろしい場所だった。
剣の山に血の池、火の海、痛め付けられもがき苦しむ人々…。
生前に悪事を働いた人に罰を与える場所とはいえ、あまりにも恐ろしい光景だ。
夢の中では、ラディッツは地獄に連れて行かれ、鉄の台の上に寝かされていた。
地獄では戦闘力が失われている為、戦うことができない。
その時、上から火を纏った斧がものすごい勢いで振り下ろされた。
その瞬間、ラディッツは弱々しい小さな悲鳴をあげた。
「ラディー!ラディー!」
クリスは、ラディッツを怖い夢から覚まさせようと必死に声をかけた。
さらに他にも、ラディッツが煮えたぎる血の池で苦しむ姿、フリーザやクウラ、ピッコロ、そしてフリーザ軍だった頃の怖いベジータの幻影に襲われる瞬間まで映っていた。
「た、助けて、くれ…!クリ、ス…様…!」
ラディッツは寝言で叫んだ。
クリスは、泣くのを我慢してラディッツを抱きしめた。 
「ラディー、ぼくはここにいるよ。大丈夫だよ、ラディー!」
すると、クリスの癒やしの力が効いたのか、突然地獄の映像が消えて、先程までうなっていたラディッツは落ち着きを取り戻した。
悪夢から解放されたラディッツは、強張っていた表情から穏やかな寝顔に戻り、静かな寝息を立て始めた。
ただ、ラディッツの目からは小さな涙がこぼれ落ちていた。
「…クリス様……」
ラディッツは寝言でクリスを呼んだが、それはフリーザ軍だった頃の呼び方だった。
高熱で夢なのか現実なのか、過去なのか現在なのか分からなくなっているのだ。
「ラディー、ぼく達はもうフリーザ軍じゃないよ。そして、ここは地球だよ。ぼく達のお家だよ」
クリスは目に涙を浮かべながら、ラディッツの長い髪を撫でて言った。
ラディッツは、自分は今地球に住んでいること、もうフリーザ軍じゃないこと、ひとりぼっちじゃないことが分かると、思わず泣き出してしまった。
よほど怖い夢を見ていた為、子供のように泣きじゃくっていた。
「もう大丈夫だよ、ラディー。もう怖くないよ。ぼくがずっと側にいるからね、ラディー」
クリスは涙を流しながら、ラディッツを抱きしめた。
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