Dear Saiyans 34話・心の傷

その頃、クリスは眠気に負けて眠ってしまった。
しかし、またしても悪夢を見ていた。
自分がフリーザに処刑される夢だけでなく、ラディッツをはじめ、大切な友や人々を失う夢、さらに自分が年をとり、生涯を全うして、親友であるラディッツと共に新しい生命として生まれ変わってしまうという悲しい夢まで見るようになってしまった。
クリスは、自分が死ぬよりもラディッツ達を失うことを何よりも恐れていた。
それがさらなる悪夢を産み出してしまったのだ。
『…ラディー…、ぼく達は、何に生まれ変わってもずっと一緒だからね…。ずっと、ずっとだよ!』




そこへ、ラディッツがクリスの部屋に入って来た。
ラディッツは、クリスの寝ているベッドに近づくと、そっとクリスの顔を覗き込んだ。
「…ラディー…、ぼく達は、何に生まれ変わってもずっと一緒だからね…。ずっと、ずっとだよ!」
クリスは泣きじゃくりながら、そして寝言を呟きながら眠っていた。
大粒の涙を流し、体を震わせながら泣いていた。
ラディッツは、このままではかわいそうだとクリスを起こした。
「…おい、クリス。しっかりしろ」


クリスは目を開けた。目の前にはラディッツがいた。しかし、クリスは涙と眠気で視界がぼやけていて、ラディッツの顔や周りの景色がよく見えていなかった。
「…ラディー?」
「…大丈夫か、クリス…」
「…ここは、天国じゃないの?ぼく達、年をとって…天国にいって…、新しい命に生まれ変わるって…」
クリスはボーッとしていて、まだ夢の中にいると思っていた。
ラディッツはクスクス笑って言った。
「何言ってやがる。オレ達を勝手に殺すんじゃねぇよ。周りをよく見てみろ、ここは家だ。それに、オレ達もお前も生きてるぞ」
「…」
クリスはラディッツに抱かれながらじっとラディッツの顔を見上げていた。
そしてラディッツは言った。
「親父から聞いたぞ。最近怖い夢で眠れてないってな。だが、もう大丈夫だ。オレ達がついているから安心しろ。今度はオレ達がお前を守ってやるからな」
「ラ、ラディー!」
クリスはラディッツに抱きつきながら泣いた。
そして、たくさん泣いたクリスは疲れてまた眠ってしまった。
ラディッツは、クリスが眠ったのを確認すると、部屋を後にしようとした。
しかし、このまま一人で寝かせるのは、と考えたラディッツは部屋に戻り、クリスのベッドにもぐり込んだ。
クリスはまた怖い夢を見て泣き出していた。
そこでラディッツは、怖い夢に震えているクリスをそっと抱きしめた。
するとクリスは、ラディッツの温もりと鼓動を感じて安心したのか、すぅっといつものかわいらしい寝息に戻った。
悪夢から解放された瞬間だった。
ラディッツは、クリスが安心しきったことを確認すると、そのまま眠りについた。
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