Dear Saiyans 29話・心をひとつに

ところが、地球からは少ししか元気が来なかった。
魔人ブウによって一度は命を奪われたトラウマから、誰も悟空達のことを信用していなかったのだ。
さらに悟空達に対する悪口や、本当は全て夢で、魔人ブウは存在していなかったという話まで出てきた。
「そんな…。どうして…」
クリスがガッカリしていると、突然大きな声が聞こえた。
「キサマらぁ、いい加減にしろ!!さっさと協力せんか!このミスターサタンの頼みも聞けんというのか!」
なんとミスターサタンの声が響き渡った。
さらにサタンは続けた。
「私が魔人ブウを倒してやるから、力を貸すんだ!みんなで魔人ブウを倒すぞ!」
実際に戦っているのはサタンでなく悟空だが、地球の世界チャンピオンで地球人の憧れであるミスターサタンの言葉に、地球人達は次々と元気を送った。
さらに、動物や昆虫達からも元気が送られた。
「サタンさんすごい!みんなの心を動かしちゃった!」
クリスが言った。
「サタンさんは、戦闘力は悟空さんやラディッツさんと比べて低いけど、人々を想いやる心は世界中の誰よりもすごいんだ。だからみんなにとって憧れの存在なんだ」
医師が言った。
「人々を思いやる心、か…。確かにそうだな…」
ラディッツが言った。

その時、元気玉が完成した。
その元気玉は地球よりも大きく、太陽よりも明るいエネルギー弾となっていた。
悟空は魔人ブウめがけて、元気玉を投げた。
しかし、体力が弱っている悟空は魔人ブウに力負けしそうになった。
すると、突然悟空の体力が全快した。
なんとデンテが、最後の願いで悟空の体力を回復させたのだ。
悟空は力を取り戻し、形勢逆転した。
そして、悟空は魔人ブウに言った。
「たった一人でここまで立ち向かうなんて、おめぇは本当にすげぇ奴だよ。今度は良い奴に生まれ変われよ…。またな…」
悟空の顔はとても寂しそうだった。
魔人ブウは完全に力負けしてしまい、元気玉とともに光の粒となって消えていった。
サタンはみんなに言った。
「地球の諸君!たった今、魔人ブウを倒したぞーー!!」
サタンの言葉に大喜びの地球人は、みんなでサタンコールをした。
「…悟空さん、ベジータさん、そしてサタンさん。魔人ブウを倒し、みんなを助けてくれてありがとう!」
ジングルは心の中でお礼を言った。
だが、敵だったとはいえ、兄だっただけに少し寂しかった気もしていた。
しかし悟空達のおかげで、地球はもちろん、全宇宙にも平和が訪れてよかった。
ジングルはそう思った。
そして、ラディッツはこう呟いた。
「よくやったな…、カカロット…。お前がナンバーワンだ…」
ラディッツの目から涙がこぼれ落ちた。
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