Dear Saiyans 27話・忍び寄る新たな影

クリスは涙をこらえてラディッツを怒った。
「そんなことしたって強くなれないし、サイヤ人の王様になんかなれない!!それこそ弱虫の…、フリーザみたいな卑怯者のやり方だよ!!!」
それを聞いたラディッツが逆上した。
「…てめぇ、オレを殴り、弱虫と言ってくれたなぁ…。ガキのくせに生意気言うなぁ…!フリーザと一緒にするなぁーーーーー!!!!!!」
ラディッツはクリスに飛びかかると、クリスの肩におもいっきり噛みついた。
クリスは肩から出血するぐらい、強い力で噛まれていた。
しかし、クリスは全く抵抗せず、痛みをこらえながらラディッツに抱き付いた。
「…ラディーは本当は弱虫じゃない。弱くなんかない。それに、強ければいいってものじゃないよ…」
ラディッツはクリスの肩に噛みついたまま、唸りながら鋭い眼でクリスを睨んでいた。
それでもクリスは、ラディッツを抱きしめ、髪を撫でながら優しく言った。
「…ぼくも昔、親や兄たちから弱虫だとか、泣き虫だとか言われてたんだ…。だから、ラディーの気持ちは痛いほど分かるよ…。でもね、そんな悪い力に頼ったって、絶対に強くなんかなれない。大切なのは『力こそが全て』じゃなく『優しさと心の強さ』なんだ…」
クリスは激痛に耐えながら、ラディッツに言い続けた。
ーどんなに戦闘力が低くても、力が弱くても、心が強ければみんなを守れる力になれる。そして誰にでも優しく思いやりを持てば、自分にも良いことが起こる。
それに、悟空は悟空なりの、ベジータはベジータなりの、ラディッツはラディッツなりの個性がある。同じサイヤ人でも、そして同じ兄弟であっても、それぞれの個性があるもの。
ラディッツは、戦闘力こそは他のサイヤ人と比べても低いが、仲間を思いやる優しさは誰よりも強い。
過去に地球に来襲し、まだ幼かった悟飯を人質にしたものの、結局は一切手を出さなかったほどだ。
それだけに、ラディッツは本当は優しいサイヤ人なのだ。
「…クリス…」
ラディッツは噛むのをやめ、クリスを見つめた。
「…ラディー…」
クリスは涙を目に溜めながらラディッツを見つめた。
額には紋章が残ってはいるものの、あの悪魔のような怖い顔でなくなり、元の優しい顔に戻っていた。
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