Dear Saiyans 23話・クリスの力

バーダック達は客船に避難した。
島の人々や動物達を乗せた客船は、既に出発していた。
バーダックの体は、培養液で大ケガをして、動けなくなっていた。
培養液でやられた傷が思った以上に深く、非常に危険な状態だった。
「師匠、しっかりして!死んじゃ嫌だ…」
クリスは泣きながら手当てをした。
「へへ、このケガぐらいで死ぬもんか…うぅ!」
バーダックは激痛で唸った。
「親父!しっかりしろ!」
ラディッツも目に涙を浮かべて言った。
バーダックの意識がぼんやりとし始め、何も答えられなくなった。
そして、心臓の鼓動が弱り始めた。
「死んじゃ嫌だ!師匠!」
クリスはバーダックを抱きしめた。
その時、クリスに抱かれたバーダックの体の傷が、みるみる癒えていった。
そして、バーダックの心臓の鼓動が元気を取り戻し、顔色も良くなった。
「傷が小さくなった?」
クリリンは驚いた。
「クリス…、あなた…」
ギネはクリスを見た。
「え?師匠…?」
クリスにも分からなかった。
バーダックはクリスに抱かれながら、すぅ…と寝息をたてて眠っていた。
「…あの時のオレと同じだ…」
ラディッツは、ピッコロに倒され、大ケガをしていたあの日を思い出した。

当時ラディッツは、地獄に落ち、苦しい罰を受けていた時に、クリスが地球に来てくれた。
その時は意識がなく、何日も眠っていたが、クリスがラディッツから離れず、ずっと側にいてくれた。
そして、クリスの楽しい話や子守唄が聞こえ、心と体の傷が癒されていった。
今、目の前で寝ているバーダックを見て、ラディッツは当時のことを思い出したのだ。
そしてギネは、クリスには不思議な力を持っていることに気づいた。
「ねぇクリス、びっくりしないで聞いて」
「え?なんですか?」
ギネはクリスにそっと話した。
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