クリスは山を目指して、街中を歩いていた。
その街は、クリス達がいた町よりも大きく、多くの観光客で賑わっていた。
さらに、あちこちから漂ってくる美味しそうな匂いが、空腹感を増していった。
しかし、クリスは食べる気にもならなかった。
こんなにお腹が空いて食べたいはずなのに、食欲が全くわかなかった。
慣れない最終形態と、今までに経験したことのないほどの長い距離を走り続けたために、体がすっかり疲れきってしまったのだ。

時間はもう夕方の5時、もう体力はない。
だがそれでも、クリスはひたすら歩いた。
もう帰る場所などない。もうラディッツ達とも会いたくない。あてのない旅を、続けるしかなかった。




やっとのことで、街を抜けたクリス。
そして、広い公園に入った。
その公園は、子ども達が遊ぶ遊具や、色とりどりの花が咲く大きな花壇、そして所々に売店がある広い公園だった。
普段は賑わいを見せる場所だが、今はすっかり日が暮れて、誰もいなくなっていた。
さすがにクリスは、だんだん心細くなってきた。お腹も空いているし、とても寒い。そして何よりも、暗い夜道が怖かった。
「…でも帰れない…。どこか明るい所を探そう…」
クリスは弱々しい声で、再び歩み出した。





公園を抜けると、辺りはすっかり真っ暗になっていた。
そこは民家も建物も何もない、寂しい道だった。頼りになるのは、古い街灯だけだった。
「……怖い…」
クリスはだんだん怖くなって、ブルブル震えながら歩き続けた。

やがて、街灯が途切れ、気がつくとそこは深い森だった。
虫の声やフクロウの鳴き声が響いている、不気味な森だった。
クリスは恐ろしくなって、思わず走り出した。