Dear Saiyans 16話・孤独の旅路

すると、外から踏切の音が響いてきた。電車がやって来たのだ。
「ん?なんだこの音は?」
ラディッツも踏切が初めてだった。
「あ、そろそろ電車が来る時間だ」
未来の悟飯は腕時計を見て言った。
「そうか!でもその前に、忘れ物と落とし物をチェックしないとね…」
トランクスは周りを念入りにチェックした。
「よし!もう大丈夫だ。さぁ、電車に乗って帰ろう!」
「大丈夫だ、クリス。みんなは怒ったりはしてないぞ」
ラディッツはクリスの手をひいて言った。
「…うん、ありがとう…。勝手に飛び出して、迷惑をかけて、ごめんなさい…」
クリスはラディッツに謝った。
「いいってことよ。そうだ!あとで冒険話を聞かせてくれ。どんな世界を見てきたのか、すごい気になるんだ」
ラディッツはクリスが歩いた場所が、気になっていた。
「…うん、ぼくいろんなものをたくさん見てきたんだ」
クリスは少しだけ元気になった。


そして、悟空一行は電車に乗って、パオス山を目指した。
ラディッツは悟空に、ずっと抱えていた胸の内を語りだした。
「…聞いてくれ。オレはカカロットに会えて、本当に嬉しかったし、ホッとしたんだ。それにあの時、オレの仲間になれと言ったんだが、あれは違うんだ…」
悟空はラディッツの話を黙って聞いていた。
「本当は、お前に助けて欲しかったんだ。フリーザから酷い扱いをされて耐えられなかったんだ。だが、あの時のオレは、体の中にチップが何個も入っていて、どうすることもできなかったんだ…。だから、悪に染まるしかなかったんだ…」
ラディッツの目は、みるみる潤んでいった。
「…おめぇも、苦労してたんだな…。ベジータも、ナッパも…」
体の中のチップのせいで、弟に本当の気持ちを伝えることができず、挙げ句の果てには命をかけた戦いに発展してしまった。
悟空はラディッツの話を聞いて、悲しい気持ちになった。そして、お互い申し訳ない気持ちで、胸が張り裂けそうになった。
「…ごめんな、カカロット…」
ラディッツの目から、涙がこぼれ落ちた。
「…ああ。オラのほうこそ、ラディッツが、兄ちゃんが大変だったって気づけなくて、ごめん…」
悟空も涙を流した。
そしてラディッツは、未来の悟飯にも謝った。
「あの時は本当にごめんな…。怖い思いをさせちまって…」
未来の悟飯は、笑顔で答えた。
「いいえ…。逆にオレはあなたに感謝しています。叔父上が地球に来なかったら、オレは地球を守れなかったし、地球もフリーザに支配されていたのかもしれませんでした。オレと父さん達が強くなるきっかけを作ってくれて、ありがとうございました」
確かに、フリーザを倒せたのも、ベジータ達が地球に住めるようになったのも、ラディッツのおかげだった。
ラディッツは悟空達に申し訳なくて、そして感謝されたのが嬉しくて、泣き出してしまった。
「ラディー…、泣かないで…」
クリスもつられて泣いてしまった。
電車の運転手は、悟空達の話を黙って聞いていた。
ーよっぽど大変な目にあっていたんだな。
そう思いながら、悟空達を乗せた電車を走らせた。
美しい星空の下で、悟空達を乗せた電車が駆け抜けていく。
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