Dear Saiyans 15話・逃れぬ血筋

「どうしてぼくを!?」
クリスが言うと、クウラは腕を組みながら言った。
「貴様は我が一族を裏切り、サイヤ人どもに加担した。だがどんなにサイヤ人を愛していようが、貴様も我々と同じ血が流れていることに変わりない。どうあがこうと、貴様はフリーザの一族であるという運命からは、決して逃れることなどできんのだ!」
クリスはショックのあまり、へたりこんでしまった。
クウラはクリスの前に歩み寄ると、クリスの頬にそっと手を触れて言った。
「貴様のその姿、フリーザにそっくりだ…。第一形態の時と比べても、本当にそっくりだ…。今の貴様を見て、貴様のお友達はどう思うかな…?」
「…!?」
クリスは確かに、第一形態の時よりも、最終形態だとフリーザと瓜二つになっていた。
まるで自分が、フリーザに体を乗っ取られたようだった。
「これで分かっただろう?貴様にも悪の血が流れていることを…。ふふふ、裏切り者であるにも関わらず、結局は殺さなかったか…。オレも甘いな…」
クウラは満足そうに言うと、悟空を探しに飛び去った。

「ぼくは…、フリーザの、弟…。クウラの、弟…。宇宙、最強…」
クリスは涙声で呟いた。
涙が次々とこぼれ落ち、岩を濡らしていった。


しばらくすると、ベルとジングルが駆けつけてきた。いつまで経っても帰って来ないクリスを心配したのだ。
二人は、姿が変わったクリスを見て驚愕した。
「ク、クリス?!どうしたんだ、その姿は!?」
「何があったの?」
ベルとジングルはクリスに優しく声をかけた。
すると、クリスはすくっと立ち上がった。そして…。
「……ぼくのこと、忘れてください…。さようなら…」
クリスは悲しそうに言うと、そのまま走り去った。
「クリス!どこ行くんだよ!」
ベルはクリスを追いかけた。
「ラディッツさん達がカプセルコーポレーションで待っているんだよ!」
ジングルも追いかけた。
しかし、クリスの足は意外に速く、あっという間に遠くに消えてしまった。
「やっぱり、ぼくはフリーザとクウラの弟…!宇宙の帝王の血筋からは逃れられないんだ…!もう、みんなと一緒にはいられない…!ぼくを見て、みんな怖がっちゃうから!」
クリスはラディッツ達に、今の自分を見られるのが怖かった。
クリスはあてのない旅路を、ひたすら走り続けた。
「さようなら、ラディー…。さようなら、みんな…」




続く
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