すると、ラディッツはクリスの服を引っ張った。
「どうしたの、ラディー？」
クリスは心配そうに言った。
ラディッツの視線の先には、木陰でそっぽを向くベジータがいた。
ラディッツはどうしても、ベジータが怖くて会いたくなかったのだ。
「…分かったよ、ラディー。今はゆっくり休もう…」
クリスは少し複雑だったが、ラディッツにこれ以上ストレスをかけまいと、その場から離れた。

やがて、宇宙船が到着し、クリスとラディッツ達は宇宙船の中に入り、ふぅとため息をついてくつろいだ。殺風景で、注射器やメス、医療器具などが揃っているちょっと物騒な雰囲気でも、世話になったこの宇宙船はもはや家のようなものだ。
クリスとラディッツ達は、宇宙船の中から最長老の話を黙って聞いていた。
遠く離れたナメック星で、悟空が勇敢にフリーザと戦っている話を。
やがて、最長老は本当の寿命を迎え、みんなに見守られながら、安らかな眠りについた。
クリスとラディッツ達は、涙を流した。

そして夕方、ナメック星人は最長老の、クリスとラディッツ達はアバランのお葬式をそれぞれおこなった。
クリスは、ノーマン一家を始め、お世話になった地球人らと共に、アバランを見送った。
そして、アバランを火葬する時がやってきた。
「アバラン…、ごめんね…。君の気持ち、理解できなくて…」
クリスは泣きじゃくりながら言った。
「アバラン、すまなかった…。両親を、手にかけて…」
ラディッツもアバランを抱きしめて泣いた。
やがて、アバランは煙となり、夕日の彼方へと登っていった。
クリスとラディッツ達は、大声で泣き叫んだ。

事故によって両親を失い、憎しみと怒りに潰され、サイヤ人を目の敵にしていたアバラン。
しかし、本当は誰よりも家族を愛し、仲間を大切に思い、例え相手が憎たらしい敵であろうと、傷ついた時は必ず手を差しのべる、心優しいフリーザ一族の戦士だった。

そんなアバランは、何度か星の制圧に参加したため、一度は地獄行きだと思われたが、ラディッツと同じく異星人を一切攻撃せず、命を助けたことが分かり、天国行きになっていたのだった。