Dear Saiyans 8話・孤独のサイヤ人

ターレスは、自分の身に起きたことを話した。
「…それでオレはカカロットと決着をつけようと戦ったんだが、カカロットが放ったすげぇエネルギー弾を食らって、そしたら穴みたいな奴に吸い込まれて…、気がついたらここで寝てたんだ」
どうやらターレスは、この世界とは別の時空から飛んできたサイヤ人のようだった。
「なんだか、不思議な話だね…。でも、星を荒らすのは…」
「……やめるさ」
「え?」
ターレスの意外な発言に、ラディッツとクリスは目を丸くした。
「やめるって、本当に?」
「あぁ、カカロットが放ったあのエネルギー弾のせいか分からねぇが、なぜか星を荒らす気が無くなっちまったんだ。それに、この星が好きになったんだ」
ターレスは笑みを浮かべて言った。
「だからって、地球を乗っ取るような真似はするなよ?」
ラディッツが言った。
「言ったろ。もう二度と星を荒らさないって」
ターレスは微笑んだ。
しかし、その顔はどこか寂しそうだった。
「…ねぇターレスさん」
「なんだい?クリス」
「…家族とか、友達とかは…いない?」
クリスはそっと言った。
「…部下はいたんだが、友達も家族も…いなかった。両親はオレがガキの頃に死んじまってな…」
ターレスは子供の頃からずっとひとりぼっちだった。両親を亡くし、誰にも愛されぬまま過ごし、本来神にしか口にする事が許されない神精樹の実の味と力を覚え、悪の道を突き進むしか生きる道はなかった。
クリスは、ターレスの壮絶な過去に涙を流した。
「ターレスさん、これからはぼく達と一緒に暮らそうよ」
「あ、あんた達と?」
ターレスは目を丸くした。
「楽しいぞ?ここの暮らしは」
ラディッツは微笑んで言った。
「あ、ありがとうよ…。じゃあ、お言葉に甘えるぜ…」
ターレスは涙を流した。
彼が涙を流したのは、生まれて初めてだった。
「めそめそするな。それでもサイヤ人か?」
ラディッツはそう言いつつも、ターレスの肩をぽんっと叩いた。
「これからもよろしくね…」
クリスは涙を拭って言った。
「あぁ、よろしく頼むぜ」
ターレスは涙を拭くと、嬉しそうに微笑んだ。
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