とある日の前夜

「……」
「ンフフ、ンフフフフフ!」

さっき掃除をしてから自分の領域は侵されていない。そう信じて眠ろうと目を瞑っていた蛍だが、早々に限界が訪れる。

「ちょっと蛇ノ目君、今日くらい静かに寝かせてくれないかな!?」
「仕事がありますので。それに、いつも通り過ごした方が落ち着けると思いませんか?」
「いつも平穏に過ごせるのなら、僕もそう思うよ。はあ……君だって明日は踊るんだろう?そんなことしてていいわけ?」
「分かっていますよ。ですから、このデザイン画を仕上げたら眠る予定ですが……仕方ありません。では静かに進めましょう。最大限の譲歩です」

これ以上は不毛な議論にしかならないと察した蛍は、諦めて布団を被り直す。部屋にはシキがペンを滑らせる音だけが響く。

「……」
「……」
「影宮くん、今『落ち着かないな』と思いましたね?」
「思ってない!もう少し黙ってくれていれば寝られそうだったのに、全く……!」
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