とある日の前夜

「フンッ!フンッ!フンッ!」
「……チッ。こんな時間まで筋トレかよ」

顔を合わせれば火花が散る。既にゴールドハイムにおける日常の一部となり、慣れや諦めから周囲の諌める声も減ってきているが、本人たちの諍いは決して減らない。

「ああ?てめえも今まで外ほっつき歩いてたんだろ、似たようなもんじゃねえか!」
「俺はベガの散歩に出てただけだ。筋トレでうるさくしてるてめえと一緒にすんな」
「いちいちうぜえ言い方しやがって!今日こそてめえをぶっ潰す!」

息巻く九十九に、ため息をつくギンコ。ベガを撫で、時計を見て、九十九が痺れを切らす直前に答えを返す。

「どうせ体動かしきるまでうるせえだろうし、仕方ねえ……ただし、一時間だ」
「なんだと?てめえ、一時間程度でへばるような軟弱になったか?」
「ちげえよ。明日が何の日か忘れたか?もし差し障るようなことがあればヘッドの名折れだ。てめえも、満足に動けなかったら困るだろ」
「そういや蛇ノ目に言われてた集合時間、早いんだったな……クソッ、だったら一時間以内にカタをつけてやる!」
「同感だ。それでも決着がつかなかったら……次の勝負は、明日だ!」
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