とある日の前夜

309号室では、光国が布団を広げることが就寝の合図のようになっている。

「ミッツ〜、いつも思うけど早いヨ〜……」
「何を言う!ダンサーは体が資本、睡眠はきちんととらねばいかん!」

そして、望が不満の声を漏らし光国がさらに反論する。幾度となく繰り返されているやり取りだが、心なしか柔らかな声色は、魂の繋がりが深まっている証だ。

「シアベルと三千世界のダンキラのスタイルが違うように、僕とミッツの生活スタイルも違うんだってば。ミッツのやり方に、僕を巻き込まないでよネー?」
「むう、それは確かに……。しかし、異文化交流は新たな発見を生む。どうだ三木、試しに明日の朝稽古に参加してみないか?」
「ちょっと待って!せめて明日は勘弁してヨ!」
「わっはっは!つい気が急いてしまった、すまんすまん」
「ま、いつでも変わらないのはミッツのいいところだよネ。……ひとまずかわせたけど、また修行だ稽古だって言ってくるだろうし、バ先の新作スイーツで買収しないと……」
「ん?何か言ったか?」
「なんでもなーい!僕もそろそろ寝よっカナ、おやすみーっ☆」

勢いで布団を翻す。不本意ながら後に引けず、結果的に早寝早起きをする望であった。
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