とある日の前夜

「おかえり、零士♡スペシャルドリンクを用意して待っていたよ」

創真の机には、フルーツに彩られたグラスが並んでいる。自室が小さなバー・カンパネラになったかのような光景に面食らう零士だったが、まずは扉を閉める。

「は、はあ……歯磨きはまだしていないので、いただきます」
「俺の愛を受け取ってくれるんだね?嬉しいよ、零士」
「そういう言い方はやめてください……既に作ってくださったものなら、無駄にするわけにはいかないというだけです」

辟易しながらも厚意は受け取ることにして、手を伸ばす。常に栄養価を気にかける彼は、それが安眠を助けるためのものだとすぐに気づいた。

「今日は、特に愛情を込めたんだよ。この後ぐっすり眠れるように、明日も愛に満ちた一日になるように……って、おまじないをかけたのさ」
「愛とかおまじないとかは、よく分からないですけど……そのお気持ちは嬉しいです。ありがとうございます」
「どういたしまして。さあ、飲み終わったら、体を温め合いながら眠ろうか♡」
「俺のベッドに入らないでください!そもそも、俺はまだやることが……八神さん!」

二人の夜の攻防戦は、まだ始まったばかり。
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