通常
Name Change
ご利用の端末、あるいはブラウザ設定では夢小説機能をご利用になることができません。
古いスマートフォン端末や、一部ブラウザのプライベートブラウジング機能をご利用の際は、機能に制限が掛かることがございます。
「若葉。そろそろ皆呼んでくるか?」
「ありがとうお兄ちゃん」
「いちいちお礼言わなくていいっての。まぁお前が
作った唐揚げなら俺が呼びに行かなくても飛びつく
だろうけどな」
今日の夕飯は若葉が作った唐揚げがメインだ。
きっと組員全員が喜ぶだろう
永瀬と入れ違いでキッチンに青山が現れると
若葉は小さな声で何かを呟いていた
「後で洗濯物を畳んで、それから……」
「夕飯を食べ終えたら俺も手伝いますよ」
「青山さん?あの……帰りが遅くなっちゃいますよ?
手伝わなくていいです」
青山の溢れんばかりのホスピタリティを素直に
受け取らないのは恐らく(名前)くらいだろう
「大丈夫。それを言うなら遅くまで働き続けて
君が寝不足になる方が心配だ」
「私は大丈夫です。早く行かないとおかず
無くなりますよ」
「………」
夕飯を終えて部屋から出ていこうとした舎弟達を
青山は丸太のような太い腕で捕まえる
「食うだけ食って片付けもしないのか?少しは
手伝った方がいいぞ」
「それが私の仕事なので。皆さん、戻って大丈夫ですよ」
兄貴分と若葉。どちらの言う事を聞くべきかは
考えるまでもない
「じゃ、じゃあ洗い物が片付いたら事務室に戻ります」
「早く終わらせるぞ速水」
「飯豊さん、速水さん……」
結局、飯豊と速水が後片付けをする事になり……
若葉はあからさまにため息を付く
「青山さん。私の仕事なんですからこういった事は
控えてほしいです」
「全部一人でこなす必要はない。事務作業だってそうだ。
先回りで作業をしようとするから舎弟達だって君が
やるものだと思って手伝おうとさえしないじゃないか」
「役割っていうのがあるんですよ。桂司さんと
京子さんも納得してるんです」
若葉は幼い頃に両親を亡くしている。養護施設に
行くという話も持ち上がった事があるが、叔母である
京子が猛反対し……それ以降は天羽夫妻によって
育てられた
「甘えてられないんですよ」
「永瀬の兄貴は別なのかい?」
「お兄ちゃんはまぁ……長い事一緒にいますから」
「俺もそれなりに長く一緒にいるつもりなんだけどな」
この媚びない姿勢を天王寺組の組長である三国、
そして若頭の大嶽も気に入ったのだろう
厳密に言えば少し違うものの、天羽夫妻の娘という
名前を抜いたとしても若葉は裏社会にそれなりに
顔が利く
「では私は仕事に戻りますので……
青山さん。また明日」
「……分かったよ」
______________________
________________
翌日。各自、仕事に励んでいた時に怪訝そうな
表情を浮かべた天羽が事務室を尋ねてきた
「お前達。若葉を見なかったか?」
「若葉さんなら買い出しに行きましたが」
「何時頃だ?」
どうやら宇佐美が最後の目撃者のようだ。若葉が
組を出たのは午前11時頃……
何度も電話をかけたが一向に繋がらないという
「3時間前だと?」
「少し遅すぎますね……確か飯豊の兄貴と速水の兄貴が
一緒に行った筈なんで連絡取ってみます」
しかしその二人ですら繋がる気配がない。焦りを
隠せない宇佐美はどんどん顔が青くなっていく
「まさか……何か巻き込まれたとかじゃないですよね」
「宇佐美。滅多なことを言うんじゃない」
「す、すみません!」
「外回り業務に出ている組員に伝えなさい。
三人がどこにいるのかすぐに知らせるようにな」
「承知しました!」
買い物から戻るのが遅いくらいで……と若葉に
怒られるような気もするが娘が帰ってこない事を
心配するのは親として当然の事
天羽は落ち着かない様子で組長室に戻るのだった
「よし……異常は無し。たまにはこういう日があっても
いいかもしれないな」
今日の外回りは非常に穏やかだった。天羽組が
ケツ持ちしている店で半グレが迷惑をかけているとの
報告もなく、帰路についている時……
「こんにちは」
「あらまぁ青山さん!」
とあるスーパーの前を通りかかり、せっかくだからと
挨拶をしに来た青山を出迎えたのはこの肉屋の店主である
おばちゃんだ
「あ、そうだ!今日も若葉ちゃんが店に
来てくれたのよ!」
「一緒に来ていた二人はちゃんと荷物持ってましたか?」
「当たり前よ!ま、私が持たせたんだけどね。
組でも言われないと手伝ったりしないでしょ?」
「はは……彼らなりに頑張ってますよ」
肯定すべきか否定すべきか悩んだ青山が曖昧な
返事をした時、スマホに着信が入る
「ジュン。どうした?」
電話の相手は宇佐美だ
「若葉が帰ってこないんです!」
「何?」
要領を得ない宇佐美の説明だったがその焦りが
交じる声色に何かあったのだとすぐに察する
「今、若葉さんが買い物に来たスーパーに
来ているんだが……もう居ないぞ?」
「嘘、そんな」
「すぐに折り返す」
強引に電話を切り、若葉が店を出たのが
いつかを訪ねた
「12時前には帰った筈よ。その後すぐに奥の部屋から
お昼のニュースが始まったのが聞こえたから……」
「……2時間も連絡が途絶えている」
一緒にいた飯豊と速水とも連絡が取れない。もはや
何も疑う余地はない
「じゃあ俺はこれで……」
「青山さん。お気をつけて」
「えぇ」
いつも通る道を探索する事にした青山は道端に
とある物が落ちている事に気が付く
「鶏モモ肉……あの店のじゃないか」
大ぶりの鶏モモ肉が入ったパッケージが一つ落ちていた
間違いない。この辺に何か手掛かりがある筈……青山は
慎重に歩みを進める
「!!」
そして細い路地から何かの気配を感じ、足を踏み入れた
そこにいたのは血まみれで僅かにうめき声を上げて
横たわる飯豊と速水の二人だった
「しっかりしろ!」
「あ、兄貴……すみま、せ」
「トヨ、喋るな!傷が開く!」
「青山の兄貴、これを……」
速水がスマホを差し出す。そこには1台の車が
写っている
「この、車の持ち主が……若葉さんを」
「良くやった。後は任せろ」
程なくして二人は病院へ連れて行かれた。現場に
残った青山は速水から預かったスマホを使い、組へ
報告を入れる
「親っさん。若葉は何者かによって連れ去られました」
「何だと!?」
「俺はこのまま救助に向かいます」
「分かった。頼んだぞ」
そして次に連絡を取ったのは天羽組御用達の情報屋
……伍代だ
「ちょうど連絡いれようと思っていたんだ。彼女を
連れ去った犯人のアジトは☓☓☓って所だよ」
「仕事が早くて助かる」
「まさかとは思うけど一人で特攻するつもりかい?」
「いつもの事さ。情報料は後で必ず支払う」
「今回は要らないよ。いつも天羽組には贔屓
してもらってるからね」
狩猟用ナイフも何も持っていないがそんな事は
関係ない
青山は修羅のオーラを纏いながら敵のアジトへ
向かうのだった
「大人しくしろよこのアマ!」
ボロボロの扉からは中の声が漏れ聞こえていた
「おい、あんまり傷つけんじゃねぇよ!売り物に
ならなくなったらどうすんだよ」
「そんなの俺等のお楽しみに使えばいいだろ?」
あまりにもゲス過ぎる会話。もはや何かを
問う必要もない
「うちの姫を返してもらうぞ」
扉を蹴破り、近くにいた護衛の命を瞬時に刈り取る
その部屋の奥ではリーダーと思わしき男が若葉の
髪を掴み上げていた
「レディーに手荒な真似してんじゃねぇよ」
「あ、青山さん……?」
その綺麗な顔には殴打、そして涙のこぼれ落ちた跡が
残っている
「中々の大物の登場だな。お前を殺せば一気に
俺も有名になるなぁ……」
「いつまでその汚ぇ手で若葉さんに触れてんだ」
手首を掴み、そのまま……
「ぎゃあああ!?」
「女性を大事に扱えない手は要らないだろ」
なんとそのままへし折ってしまった。そしてそのまま
男の脚を蹴り上げてあり得ない方向に曲げる
忠誠心も何も無い残党は破壊された扉を目掛けて
逃げ出そうとするが……
「お前ら生きてここから逃げられると思ってる訳?」
逆光でシルエットしか見えないが、轟々と音を
立てながら燃えるガスバーナーを片手に立つその男が
逃亡を阻む
「俺の可愛い可愛い若葉を虐めた奴らは
バーナーで炙ってやるよ」
「お、お兄ちゃ……?」
若葉は青山の腕の中で意識を失うのだった
______________________
_______________
半グレ組織は青山と永瀬の手により瞬時に殲滅。
リーダーの男は天羽が自ら拷問にかけて屠られ……
「まともなアジトを用意出来ねぇ奴らに
負けてんじゃねぇよ」
目が血走った永瀬は飯豊と速水に詰め寄っていた
ちなみに永瀬から説教を受けている二人はベッドの上で
頭を擦り付けて土下座をしている
「お兄ちゃん止めてよ。二人共怪我してるんだから」
「お前なぁ……下手すれば死ぬ所だったんだぞ?」
「飯豊さん、速水さん。私は大丈夫ですから
顔を上げてください」
「はいはい。可愛いお前の頼みだ。
これくらいにしといてやるよ」
「お見舞い来ますから……また明日」
「「は、はい……」」
「なぁ若葉。何か唐揚げの量多くねぇか?」
「うん。今日は多めに揚げるの」
昼間、あんな事件に巻き込まれたというのに
いつもと変わらず夕飯の支度をする若葉に
呆れながら永瀬は準備を手伝っていた
「あ、お兄ちゃんと青山さんだけ別皿だよ」
「はぁ?何でだよ」
「皆より多めに盛りたいから」
「……そういう事か」
「若葉さん。俺も手伝うよ」
「青山さん?」
キッチンに現れた青山に若葉はお盆を渡す
「これは青山さんの分ですから」
「大量ですね」
「残さないでくださいよ?」
「残す訳ないさ」
この二人のやり取りを傍で見ていた永瀬は
若葉に声を掛けた
「油の処理は俺がやっとくから先に
広間に行ってろ」
「うん。お願い」
そしてキッチンには青山と永瀬の二人だけになる
「俺も大盛りにしてもらえたんだわ。自分だけが
特別だと思うなよ?」
「今まで永瀬の兄貴だけ特別扱いだったのが俺も
そうしてもらえるようになった。それだけで
十分ですよ」
「若葉はやらねぇからな」
「それは若葉さんが決める事です」
後ろの鍋からは油のパチパチと弾ける音が
響き続けていたのだった
「今度、花見やるやんか。若葉ちゃんの揚げた
唐揚げを弁当のオカズにしたいんやけど」
「それ本人に言うたらええんとちゃいます」
「大嶽ぇ……お前も食いたいやろ?食いたいよな?」
「何で2回も言うたんで……ん?」
「どないした」
「何で若葉ちゃんの得意料理が唐揚げやって
知っとるんですか」
「………」
「ここで無言にならんといて下さい。流石に怖いわ」
東京から遠く離れた大阪、とある居酒屋にて
三國と大嶽の二人はそんな他愛のない話に花を
咲かせていたらしい……