通常
Name Change
ご利用の端末、あるいはブラウザ設定では夢小説機能をご利用になることができません。
古いスマートフォン端末や、一部ブラウザのプライベートブラウジング機能をご利用の際は、機能に制限が掛かることがございます。
「史之舞ー。転職で天職見つけたんだってぇ?」
「若葉……文字に起こさないと伝わらないよそれ」
「まぁ細かい事は気にしないの」
今日の一人目の客は元同期の若葉だった
「誰から聞いたんだい?俺がおにぎり屋を
始めたって」
「龍臣さんから」
「あぁ死龍からか」
「何かこっちにまで危うく飛び火しそうだった
……っていうか思いっきり巻き込まれた内部抗争が
ようやく終わったって聞いてさ。来てみたの」
「う……返す言葉も無いな」
若葉は元袴田班に所属しており、鶴城とは
幼馴染であり同期という間柄だった
しかし突然、やりたい事を見つけた!なんて誰かと
似たような理由でアッサリと組織を抜けた若葉も
先の内部抗争でターゲットとなり……
「まさか君から受けた攻撃のせいで死龍に
負けるなんて」
「え、そんなにヤバかった?」
最終的には殴り合いで決着をつけた龍臣と鶴城。
途中で鶴城の動きが僅かに鈍ったのを見逃さなかった
龍臣がトドメを刺した……らしい
「でも史之舞だって普通に私の事を潰しに
かかったんだからいいよね」
「……本当にごめん」
あの落とし穴での決戦……
通りかかったのは本当に偶然だった。もしも若葉が
居なければジェイクは今のように龍臣のメロンパン屋を
手伝う事は無かったのかもしれない
「若葉の事は狙うつもりはなかったんだ。
だけど行く先々で君と顔を合わせる度に昔の事を
思い出して……」
「それで?」
「俺は君の事を忘れた事なんかないのにまるで俺との
思い出なんか無かったように過ごしているのを見て
腹が立ったんだよ」
「いやそんな逆恨みで狙われてたの?私」
CODE-EL最高傑作と呼ばれた鶴城と交えても
生きていたのは幼馴染故にあらゆる癖などを
誰よりも熟知していたからだった
「あー……今日はこんな話をしに来たんじゃなくてね」
「う、うん」
「差し入れ届けに来たの」
「差し入れ……?って、死龍のメロンパンじゃないか」
「仕込みも一段落したんでしょ?これ食べて
仕事頑張らなきゃ」
仕込みが一段落した事もあり、すぐ近くの公園に
移動した二人はベンチに深く腰掛けていた
「ねぇ一つ聞いてもいいかな」
「何?」
「若葉がずっと俺の傍に居てくれたのは
どうしてなんだい?」
「え、史之舞が私の傍から離れようと
しなかったんでしょ」
「え?」
「え?」
二人が袴田班に所属していた時。鶴城は究極の
アサシンとして期待され、若葉は平気で上官に
噛みつく問題児として二人は組織から全く異なる
評価を受けていた
組織に従順である鶴城と全く型に嵌まらない若葉では
相性が最悪で同じ班にするのは危険過ぎるとの声も
上がっていたのだが……
「いやだって私が龍臣さんと話してたりしたら
すっごい睨んできてたじゃん」
「……俺、そんな事してたんだ」
「無自覚だったの?」
__鶴城。お前だって本当は気がついてるんだろ?
__何の話だ
__このままじゃ若葉が離れていくばかりだってな
__何を言うかと思えば……アイツは裏切ったんだ
__組織を裏切った事じゃなくて自分を裏切った事を
憎んでいるんだろ?
殴り合いの最中、龍臣のその言葉を聞いた瞬間
心臓が締め付けられた
ジェイクを抹殺すべく死闘を繰り広げたあの時、
自分は若葉に対して何をした?どんな言葉を
投げかけた?
__若葉、どうして……そっちに居るんだ。
俺は……
それはその場に、鶴城に似つかわしくない悲痛な
一言だった
そして向けられた切っ先に込められた殺意が
僅かに薄れていた事はその場に居たジェイクにも
伝わっていた
「そうか‥…俺は……そうだったのか」
無意識に求めていたのだ。唯一の安らぎであった若葉を
「いや、一人で解決しないでよ」
「ごめん」
「あと、謝る相手他にいるよね?袴田教官とか」
「……」
「史之舞のせいで片目の視力無くなったんだよ?
ちゃんと謝った?」
「まだ‥…だけど」
「駄目じゃん。一緒に謝りに言ってあげるから」
「い、いいのかい?」
「いいよー。今ね教官……じゃなくて袴田さんは
モーリーの副社長やってるの」
経営陣が一人だとやる事が多くて困ると
泣きついて半ば強引に袴田を会社陣営に招いた
毛利のその時の様子は想像に容易い
「若葉はアホになったのかい?」
話の流れを切るように放たれた一見すると
暴言にも聞こえる一言に若葉は眉間にシワを寄せる
「は?」
「ごめん。そうじゃなくて……死龍のメロンパンを
食べてその、君もそうなったのかなって」
「なったよ」
「そ、そうなんだ」
後ろめたさがある人間がメロンパンを食べると
アホになる。それは若葉も同じだったらしい
「見たかったな。その表情」
「嫌だよ。史之舞に見られるとか一番嫌」
「きっと可愛いいんだろうな」
「アホ面が可愛いとか大丈夫?」
「ん?あ……兄貴からだ」
ベンチから離れ、何やら込み入った様子で
話し込む若葉の後ろ姿を鶴城はジッと見つめていた
「……今更遅いのかな」
若葉はとっくの昔に歩むべき道を進んでいる。
果たして今の自分はどうだろうか?
少ししてから電話を切り、再びベンチへ戻ってきた
若葉に鶴城は恐る恐る話しかけた
「若葉は俺の事をどう思ってるんだい?」
「放っておけない世話の掛かる幼馴染」
「そうじゃなくて……」
「もしくは弟?かなぁ」
「1週間早く生まれただけじゃないか」
「まぁ正直言うと嫌いではないよ」
「そ、そうなんだ?」
隣でガバっと顔を上げた鶴城に気付かず、若葉は
更に言葉を続ける
「内部抗争の時もムカついてはいたけど……
だからって殺そうとは思わなかったし。寧ろ
その逆で止めないとって思ってたくらいだし」
「君は優しいんだね」
「……本当に優しかったら史之舞にあんな真似なんか
させてないでしょ」
間違いに気がつく機会を自ら潰してきたのは
他でもない自分
それなのに心を痛める若葉には申し訳なさで
いっぱいだった
「でもこれからはちゃんと自分の意思で
歩いていくから」
「応援してるよ」
「良かったら今度、天羽組に挨拶がてらおにぎりを
届けてもいいかな」
「正気?幸真さ……じゃなくて小林の兄貴もいるけど」
「うん。あの人にも巻き込んだお詫びをしたいから」
さて。そろそろ開店時間だ
店に戻る道中、鶴城は何度も何度も若葉を
チラチラと見つめていた
「何?」
「その、手でも繋がないか?昔はよく
繋いでた気がする」
「いや、子供なら微笑ましいけど私達は
もう大人だよ?」
「いいじゃないか。久しぶりに会えたんだし」
色々感傷に浸っているのかと思った若葉は
渋々、その手を握った
「……史之舞の手って大きいね」
「そうかなぁ。若葉が小さいんだよ」
微かに上がった体温で頬が赤く染まった事を
知られたくない若葉は少しだけ顔を逸らす
しかしトップアサシンだった鶴城にはその手に
触れた温もりだけでもそれを読み取ってしまう
「若葉」
「何?」
「幸せだね」
「そうだね」
今まで貼り付けたような笑みしか浮かべて
こなかった自分が自然に笑えている
こんなすぐ近くに幸せがある事を噛み締めながら
今日も一日頑張ろうと思うのだった
____________________
_______________
「若葉」
「どうしました。小峠の兄貴」
「親っさんの所にに高級焼き海苔の詰め合わせが
届いている。差出人は不明だが心当たりはあるか?」
「寧ろ心当たりしかありません」
「あれ?おかしいな……一緒に手紙も入れた筈なのに
なんでここにあるんだろう」
店で封筒を持ちながら不思議そうに鶴城が首を
傾げていた事は誰も知らない
1/9ページ