日常編
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俺の同期の若葉は贔屓目を抜いても
美人だと思う
「隆太ー。私達これから八隅の兄貴の射撃訓練を
受けるんだよ?そんなにボーっとして大丈夫?」
「大丈夫だって」
ちなみに俺達は入門1日目にして結構な
喧嘩をしている
あれは確か親父に挨拶をする為に執務室へ
呼ばれた時の事だったな
「そんな細い癖に極道になんの?女なのに」
「……は?」
今だったらこの言葉が若葉にとって言っては
いけない禁句だと理解している
しかし当時の俺は何の考えもなしに挑発とも取れる
言葉を口にしてしまったんだ
「ぐぉっ!?」
「もう一回言ってみな!女だから何だって!?」
そのしなやかな脚から想像が出来ない程に
強烈な蹴りをお見舞いされた。いや、あれは
本当に痛かった
「阿久津!若葉を止めろ!」
「おい、若葉!その辺にしておけ」
「……次にそんな事言ったら蹴り潰すからね」
後にも先にもその抑揚のない声色で
話しかけられたのはこの時だけだ
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「北岡。お前も男だな」
「何のことですか?八隅の兄貴」
昔の事で物思いにふけていると八隅の兄貴から
唐突にそんな事を言われた
「同期とはいえ女の脚をジロジロ見るのは
失礼だぞ?」
「な、そういう風に見ていた訳じゃないですよ!」
「……見てた事は認めるのかよ」
「あの、少しだけ静かにしてもらえませんか」
先に射撃演習を受けていた若葉の元に
真剣な顔をしながら八隅の兄貴は近づく
「10発中7発か……苦手な種類のチャカにしては
まぁまぁだな」
「やっぱり私にこれは難しいみたいです」
「得手不得手は誰にでもある。気にするな」
ちなみに普段、若葉の愛用するチャカは
八隅の兄貴から譲り受けた物
だが今日の演習で使っているのはそれではない。
慣れないチャカのせいか、命中率が普段より
下がって少し落ち込んでいるみたいだ……
「何ならそれを若葉専用にカスタマイズ
すればいい。その手の知り合いなら紹介してやる」
「でも既に兄貴から一つ譲ってもらってますけど」
「気にするな。お前の命を守れるなら安いもんだ」
そう言えば八隅の兄貴は若葉に甘いんだよな。
いや、それは阿久津のカシラも同じか
「隆太?どうしたの」
「え?な、何でもない」
「考え事なんて随分と余裕だな」
俺があれこれ考えている間に順番が
回ってきたらしい。そして訓練が始まったんだが……
「北岡……どうしてお前のスコアと若葉のスコアが
同じなんだ?」
「え、えーと……」
結果は同じ7発なんだが、ある意味ハンデを
持っていた若葉と同じスコアだったのが兄貴は
不満だったようだ
「北岡。お前は居残り決定だ」
「えぇ!?俺、速水と飲みに行く約束を」
「文句あるのか?」
「いえ!滅相もない!」
「八隅の兄貴、お疲れ様です。隆太ぁ、頑張れ!」
そして演習場に残ったのは八隅の兄貴と
俺の二人だけ
「お前ら。随分と仲が良いんだな」
「え?まぁそれなりに付き合いはありますし」
言い争いをする事もあるけどバカやったり
呑んだり……ある意味、俺は第二の青春を
送っているような感覚でいた
「ほぉ……兄貴分にマウントを取るとは随分
偉くなったもんだな」
「へ?」
「言っておくが付き合いが長いのはお前だけじゃ
ないんだぞ?」
な、何だ?なんか八隅の兄貴からスゲー圧を
感じるような……
「10発中10発当てるまで帰らせないぞ」
「!?それ命中率100%じゃ」
「出来なかったらどうなるか……分かるよな?」
「はいぃぃ!!」
よく分からないが俺は兄貴を
刺激してしまったらしい
そう言えば阿久津のカシラも八隅の兄貴も
若葉が絡むと結構マジになるっつーか……
「10発中6発?さっきより下がってるじゃねぇか。
やる気はあるのか」
「すみません!」
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結局、俺が演習場を後にしたのは日付が変わる
ギリギリだった
「あー……疲れ」
「隆太お疲れ」
「え?若葉……お前なんでここに居るんだよ」
帰り支度をしようと事務所に戻るとそこには
若葉が居た
ん?でも今日は比較的落ち着いた日だったから
皆、各々の仕事が終わったら帰る感じだったのに……
どうしたんだ一体
「同期が頑張ってるから家まで送ってあげようと
思ってさ?待ってた」
「へ?マジ?助か」
「北岡。お前は俺が送っていく」
「「や、八隅の兄貴?」」
後ろから来た八隅の兄貴はまるで割って入るように
言葉を遮ると若葉に早く帰るように促す
「いや、八隅の兄貴もこんな時間まで隆太の演習に
付き合ってお疲れですよね?無理しない方が」
「大した事はないさ。それより……いや、何でもない」
「「?」」
「それよりも若葉。コイツを送った後で
良ければ飯でも行かねぇか?」
……飯?
「明日休みだよな。ちょっとお前も大人なんだから
少しくらい夜遊びしてもいいんじゃないのか?」
「八隅の兄貴も悪い人ですねぇ」
その一言に好奇心を擽られた若葉は即座に
返事をした
「ファミレスでいいか?時間が時間だしな」
「いいですよ」
「じゃあ先に行って待っててくれ」
「はいっ!隆太、またね!」
俺はここでようやく気が付いた
「若葉と飯に行く口実に俺を使わないで下さいよ」
「北岡。俺はな?若葉を飯に誘う口実にお前を
利用する程純情じゃねぇぞ」
「どういう意味ですか?」
「こんな時間にお前と2人きりになんかさせるかよ」
「!!」
「分かったなら早く支度しろよ。可愛い可愛い
彼女が俺を待ってるんだからな」
どうやら俺はまだまだ八隅の兄貴には遠く
及ばないみたいだ
明らかに機嫌の良いその背中を見ながらふと思った
「あの!八隅の兄貴って若葉の事が
好きなんですか?」
「何言ってるんだ。んなの当たり前だろ?」
「いや、そうではなくてですね」
「ほらボサッとするな」
舎弟の面倒見がいいのは八隅の兄貴だけじゃない
やっぱり俺の勘違いか?でもそれならさっき、何で
わざわざ2人きりなんかにさせないって……あれ?
「(何か混乱してきたぞ……?)」
結局、俺は何がなんだか分からないまま
八隅の兄貴に家まで送ってもらい、眠れない夜を
過ごすことになるのだった
「若葉。むやみに男と二人きりになるなよ。
お前が他の野郎に取られるなんて……」
「分かってますよー!あ、おかわりいいですか?」
「おう。どんどん食え」
悩みに悩んでいる頃、仲睦まじくファミレスで
食事していた二人の会話にこの疑問に関する答えが
出ていたなんて俺には知る由もない
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