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マッドカルテル日本支部改め裏神の独立は裏社会に
多大なる影響を及ぼした
各国で反発の動きが強まる中、それを抑えるべく
本国も徐々に動きを見せつつあった
「若葉の処遇についてだが……セルジオ。お前に任せる」
若葉を除く日本支部元メンバーに対して抹殺の命令が
下されたのはセルジオも知っている。しかしその処遇に
関して決定を任せられる事になるとは意外であった
「モンテロの旦那。珍しい判断ですね」
「お前はマッドカルテルに必要不可欠な男だ。
そんな男をある意味でコントロール出来るのは
私ではなくあの子だけだろう」
「若葉のようなひ弱な女の子が抑えられるほど
俺は優しい男じゃありませんよ」
「だからこそ厄介なのだ。力ではなく心で
コントロールしているのだからな」
「………」
「いずれにせよ本格的に動くにはまだ早い。
いつでも動けるように準備をしておいてくれ」
「……了解」
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モンテロと別れた後、その足は自然とあの花壇へ
向かっていた
「若葉。今年も綺麗に咲いたぞ」
美しく咲くこの花はその昔に若葉が植えたものだ。
セルジオは花が好きだが、その中でもこれが一番
好きだという
「………」
水を与える手を止めるとセルジオは不意に
昔の事を思い出すのだった……
「君が例のアジア人か」
あれは若葉が組織に拾われて間もない頃の事
アジア人、さらには女の子という事で若葉は
色々な意味で目立つ存在であった。セルジオは
そのような噂には興味を示さなかったものの一応、
覚えていたらしい
「………」
「ここで一体、何をしている?」
土を掘り起こしていたのだろうか?
手が汚れているのが目に入った
「何を埋めようとしていた?」
「………」
「林檎の種か」
その小さな手のひらの中には林檎の種が
3粒乗っていた
そう言えば今日の食事に林檎が出ていたような
気がするが……
「植えたら林檎がいっぱい食べられる?」
「そんな簡単に出来る訳がないだろう」
「………」
あからさまに落ち込む若葉がどうにも可哀想で
仕方がなかったセルジオはポケットからある物を
取り出す
「これは何?」
「花の種だ」
「植えたら食べられる?」
「食べられはしないが綺麗な花を咲かせるぞ」
「そうなの?」
「あぁ。だから林檎の種ではなく、これを埋めよう」
埋め終わった後、その場から離れようとしない
若葉にセルジオは笑いながら話しかける
「そんなに見つめてもすぐには咲かない」
「どうして?」
「………」
子供の無邪気な疑問ほど答えにくいものはない。
セルジオが苦笑いを浮かべながらどう答えるか
考えていると……
「おいアジア人!さっさと戻れ……って、セルジオ!?」
教官が大声を上げながらこちらへと向かってきた。
せっかく花を愛でようとしていたのにとんだ邪魔者が
来たと思ったその時
「!!」
咄嗟に後ろに隠れた若葉の様子にセルジオは
何かを察する
「急ぎの用事でもあるのか」
「そういう訳では無いが……」
「若葉は今、俺と話をしている。大した要件じゃ
ないなら後にしてくれ」
「……チッ」
若葉の反応を見る辺り、酷い扱いを受けているのは
容易に想像できる。弱い人間を庇うつもりはないが
差別を容認してる訳でもない。寧ろそのような真似を
平然と行う人間に嫌悪感すら感じる
「後で教官には俺の方から言っておく。そろそろ
戻ったほうがいい」
「……はーい」
もう関わる事はないだろうと考えていたセルジオだが
その予想は外れる事となった
翌日もその翌日も。若葉は花壇に現れた。
どうやら先日に埋めた種から芽が出るのが楽しみで
仕方がなかったらしい
そして種を植えてから1週間後……
「まだ花は咲かないの?」
「そう焦るな。まだ芽が出始めてから間もないんだ」
水を沢山与えれば早く咲くかな、なんて言いながら
ジョウロを持つ若葉の手をセルジオは止める
「そんな事をしたら根腐れする。ゆっくり愛でながら
育てないと駄目だ」
「分かった。セルジオ」
組織最強と呼ばれるセルジオと拾われて日が浅い若葉は
こうして少しずつ距離を縮めていったのだ
「……若葉」
マッドカルテル日本支部の前代表の代わりに香坂を
中心とした日本人構成員が入れ替わるように本国から
派遣された
同じ日本人という事で少なからず仲間意識があった
香坂が本国に置いていけないと哀れんだからこそ
今、若葉はここに居ないのだろう。彼も同じように
組織内で差別を受けた人間だ
「お前はあの時、どんな気持ちで俺に
抱かれていたんだ?」
ある日、若葉は薄っすら涙を浮かべながら
唐突にセルジオに迫った
__セルジオ……私の初めてを貰ってください
女構成員はハニートラップなどの色仕事を
請け負わないといけない時がある。知らない男に
抱かれるより、自分に抱かれる方が遥かに
マシだと考えていたのだろう。そう考えたが……
一夜を共にしてから僅か数日後。若葉は香坂らと共に
日本へ赴任した。今となっては何故そのような事を
突然言い出したのか、確かめる事が出来ない
「……お前の好きそうな花の種を用意したんだ。
早く帰ってこい」
若葉が知らずのうちにセルジオの心へ植え付けた種は
とうの昔に花開いた
自分の手から離れた美しい花を前に果たして無慈悲に
なれるのかはセルジオ本人でさえ分からなかった