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「若葉?」
和中の目の前には無防備にもソファーですやすやと
眠る若葉がいた
今日は確か小峠と北岡、そして速水が一緒に残業を
していると聞いてきたのだけれど……
「そう言う事か」
武闘派舎弟が出払っているとなるとそれしかない。
恐らく組に守代を収めている店で何か起きたのだろう
若葉は武闘派でない故にこのような状況になった時、
組に残る事が多い。それが自尊心を傷つけていると
してもそうせざるを得ないのだ
「……全く」
そうなればこういった事務作業を一手に担う事になる。
締め切りが近い今の時期は残業に残業を重ねる日々が
続いた結果……仮眠を取らなければならない程に疲弊
しきってしまった
「せめて何か羽織って寝れば良いだろう」
時刻は深夜。こんな所で何もかけずに寝れば体調を
崩すかもしれない
近くにあった若葉のコートをタオルケット代わりに
かけ、そっと腰を下ろす
「……いつも助かってる」
自分を含む兄貴分は恨みを買う事が非常に多い。
カタギの中にはあからさまに距離を置く人間もいる
そんな時、間に入って色々と調整をするのはいつも
若葉の役目だった
「ありがとう」
額に張り付いた前髪を払い、そのままそこへ唇を
落とす
「努力家で真っ直ぐで、そんな若葉が好きだ」
「………」
「……いつまで寝た振りを続けるつもりだ?」
「……気がついてたんですか」
その言葉に誘われるように目を開けた若葉は
誤魔化しきれない程顔が赤くなっている
「俺を誰だと思っている」
コートをかけた辺りで目を覚ましたけれど、和中が
静かに語りだしたせいで起きるタイミングをすっかり
失ってしまったとの事
つまりそこから先は若葉が起きていると
知った上での行動らしい
「それで返事はないのか」
「え?」
「聞いていただろう」
__努力家で真っ直ぐで、そんな若葉が好きだ
「えっと、その」
「兄貴分にここまで言わせておいて濁そうなんて
考えているのではないだろうな」
初めて見る兄貴分の男の顔に言葉を失っている時、
痺れを切らした和中が再び顔を近付ける
「あ、兄貴。近いです」
「近づけているのだから当たり前だ」
あと少しで唇が触れる……と思った時、和中は
スッと離れた
「え……和中の兄貴?」
「何だ。期待したのか」
「ち、違いますよ!」
らしからぬ不敵な笑みを浮かべる和中に若葉は
その照れを誤魔化す為にソファーから体を起こし、
途中になっていた書類の処理に取り掛かる
「甘言蜜語」
「?」
「後で調べると良い。今後、俺が若葉を
鼓舞した時はそういう意味だ」
「わ、分かりました……?」
「俺は刀の手入れをしてから帰る」
「お……お疲れ様でした」
事務室の扉を静かに閉めた途端、和中は視線も
くれずに口を開く
「邪魔をしなかった事は褒めてやろう。だが盗み聞きとは
関心がしない」
「「「わ、和中の兄貴」」」
扉の向こうにいた気配に始めから気がついていたらしい
青ざめた様子の小峠、北岡、速水の3人は和中に
何をどう言い訳しようか必死に考える……が
「早く事務作業に戻ると良い。さもなくば明日の稽古を
一層、厳しくする」
ただでさえ厳しい稽古なのに更に上をいく稽古を
課される事を恐れた3人は休む間もなく若葉に
任せてしまった仕事を手伝うべくなだれ込むように
事務室へ入るのだった
「なぁ若葉。和中の兄貴に何か言われたんだよね。
意味は調べた?」
「え、何で速水君がそれを知ってるの」
「(盗み聞きしてたとは言えない……)
ま、まぁちょっとね……で、どうだった?」
「えーと……あれ、なんて言ってたっけ」
「え、え?まさか忘れたの?それマズくない?」
盗み聞きしていた事を知られたくなくて言葉を
濁した結果、尊敬する兄貴分が片思いを拗らせる事に
なるとあの日盗み聞きしていた3人は知る由もない
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