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「運動会なんて2年振りですよ!」
ジャージを着て準備運動に励む若葉の
後ろ姿を見ながら永瀬と小峠はポツリと呟く
「あいつにとってこの間の事なんだな」
「……若いっていいですね兄貴」
懇意にしているクーリュー餃子の社長から直々に
誘いを受けた天羽組一行は親っさんから全ての競技で
1位を取るようにと命令が下されている
和中、永瀬、小峠、そして茂木……この4人は
その使命に燃えているがただ一人、若葉だけが
純粋に運動会を楽しもうとしていた
「若葉。これは遊びではない。組の威信が
かかった戦いだ。気を緩めるな」
「はいっ!」
和中の言葉が響いているのか響いていないのか。
その様子はいつもと何も変わりない
「天羽組の和中、こんな所で会うとは驚きだねぇ」
「む……」
声の方向に振り向くとそこには……
「和中の兄貴の親友ですか?」
「断じて違う」
「じゃあソウルメイトですか?」
「同じ意味だねぇ」
見かねた小峠が助け舟を出す
「河内組改め獅子王組……最高戦力の伊武さんだ」
「え、あ……失礼しました」
「別に気にする事はないねぇ……それにしても」
すると伊武は意味深に言葉を続ける
「こんな可愛い子が居たなんて驚きだねぇ」
「茂木の兄貴、良かったですね!可愛いって
言ってもらえましたよ」
「「「………は?」」」
一同、ポカンとするもすぐに正気を取り戻したのは
和中だった
「若葉。お前の事だ」
「和中の兄貴?そんな訳ないじゃないですか!
だとしたらこの人、スゴい悪趣味な人になりますよ?」
「中々の毒舌だねぇ」
舎弟の阿蒜は悪趣味呼ばわりされた事に伊武が
腹を立てるのではないかとハラハラしているが
当の本人は然程、気にしていないようだ
「若葉。俺の後ろにいろ」
「えぇ?」
和中が若葉を自身の背に隠した瞬間。伊武との間に
火花が散り始め、辺りは妙な緊張感が漂い始める
「こんな所で油を売る暇があるのなら自分の陣地に戻れ」
「言われなくともそうするがまだ話は終わってないねぇ」
「ならば手短に済ませろ」
「全種目で1位を取るつもりなんだろうが
いる限りそれは難しいだろうねぇ」
最後にきっちりと挑発する辺り、相手もやはり
武闘派だ。抜け目がない
「……お前ら。この大会死ぬ気でかかれ」
「「「は、はい!」」」
「変な所でマジになるからなぁ。俺の同期は」
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親っさんの命令通り、今の所全種目で
1位を獲得している天羽組一行
途中、気合を入れすぎた小峠が二人三脚で共に
出場した永瀬の引っ張ってしまうアクシデントが
起きたものの……まずまずの結果に茂木は
一安心しきっていた
「親っさんに良い報告出来そうですね!
小峠の兄貴!」
「気を抜くな茂木。次は借り物競争だ」
これは実力の他に有利になるお題を引き当てる
運というものが加わる。それにこの競技は彼自身が
参加する事になっている
小峠はそんな楽観した様子に喝を入れ、茂木を
送り出した
「伊武さんも出場するみたいですね」
「そうみてぇだな」
小峠と永瀬の視線の先には先程、和中と若干の
小競り合いをしていた伊武に向けられていた
「さっきは化け物みたいな力を見せてくれたが
今回はどうだろうな」
「気になりますね」
その時。少し離れた所で若葉はウォーミングアップに
励んでいた
「花形任されちゃったなぁ……あ、伊武さんも出るんだ。
さっき綱引きにも出てたのに大変だなぁ」
最終種目であるチーム対抗リレーのアンカーを
兄貴分達から託された若葉は気合に満ちている
時々、中央を覗くとその紙に何が書かれているのか
出場選手の反応は様々だったが……今の若葉は
そこまで注意深くは気にしていないようだ
「天羽組の若葉」
「……へっ?い、伊武さん……?」
だからこそ。すぐ近くまで来ていた伊武に
全く気が付かなかった
「ひゃっ!?」
「一緒に来てもらおうかねぇ!!」
「えぇ!?ちょっと!?」
声を掛けられた瞬間、お姫様抱っこをされた
若葉はつい反射的に伊武にしがみついた
「何で若葉を抱えて走ってんだ!?」
観客席から見ていた小峠は驚きのあまり声を荒らげる
「あーあ……1位取られちまったな。親っさんに
どやされるわ」
「伊武……あろう事か若葉を拐って1位とは
なんたる不届き者だ」
永瀬は全種目1位という命令を守れなかった事を
ボヤいているが、和中だけは若葉をつれて走った事が
気に入らないようだ
「和中の兄貴!どちらへ向かわれるんですか」
「愚問だな。華太」
和中の背中に鳳凰の入れ墨ではない何が宿っていたのは
きっと小峠の気の所為ではないだろう
「いきなり何なんですか!?びっくりさせないで下さい!」
「すまなかったねぇ」
一方その頃、若葉は伊武に文句を言っていた
「お題を見た時、真っ先に思い浮かんだのが
お前だったんでねぇ」
「もう……それでお題は何だったんですか?」
「これだねぇ」
伊武が若葉にお題が書かれた髪を渡そうとした時、
背後から伸びた手がそれを強引に奪い取った
「確かにこのお題なら若葉が思いつくかもしれん」
「和中の兄貴!?」
「しかし若葉でなくとも良かった筈だ。
お前の舎弟を連れても良かっただろう」
「そこは俺の自由だねぇ」
「和中の兄貴ー……それ何て書いてあるんですか?」
「知る必要はない、行くぞ。借り物競争で
1位を落としたのならチーム対抗リレーで1位を
取らねば親っさんに顔向けできん」
「が、頑張ります……」
「天羽組の和中も男だねぇ。俺も負けてられないねぇ」
「あの男のいう事は無視しろ。若葉」
ちなみにこの後のリレーだが、茂木のバトンミスにより
天羽組はまたしても1位を逃す危機に陥るも……
「な、何だあの子は!?めちゃくちゃ速いぞ!」
「まるでターミネーターのあの警官みたいじゃないか!?」
「嘘だろ!?逆転したぞ!1位だ!」
その脚力と速さと走るフォルムからT−1000が
会場に現れたと一瞬大騒ぎになったとか……
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「伊武の兄貴……一つ聞いてもいいですか」
「阿蒜?どうした」
白熱した運動会の翌日。事務室にいた伊武に
阿蒜は恐る恐る声を掛ける
「伊武の兄貴が引いたお題って何だったんですか?」
「あぁあれか……」
すると伊武は不敵な笑みを浮かべた
「会場の中で一番可愛いもの、だねぇ」
「会場で一番可愛い……?ちょっと待って下さい!
まさかですけど伊武の兄貴……」
「そのまさかだねぇ」
「う、嘘ですよね!?」
「こればかりはどうする事も出来ないねぇ」
「あの、天羽組の和中さんも相当気に入ってる
みたいですが……」
「阿蒜ぅ……それは俺に諦めろって言ってるのか?」
「滅相もございません!」
阿蒜が心配しているのは狂人同士の争いに
巻き込まれるのではないか?という事
「あんな可愛い子、簡単に諦めるつもりはないねぇ」
「(若葉ちゃん……ごめん。止められなかったよ)」
何故だが分からないが、心の中で若葉に対して
謝る阿蒜であった
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