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「鬼頭さん。こちらの女性は?」
「あぁそうか。飛田はまだ会った事なかったな。
彼女は藤間若葉だ」
例の如く鬼頭の奇食旅に同行する事になった飛田は
隣に立つ女性……藤間に釘付けだった
「俺が設立したオーガヘッドフーズの
優秀な社員だった。今はフリーの翻訳家を
やっている」
「はじめま……きゃっ!?」
「初めまして飛田新治です!!
ちなみに貴方と同じく私もフリーでございます!」
「落ち着け飛田!若葉とお前では
フリーの意味が違うだろう!」
鼻息を荒くし、両手をガッチリ包まれながら
ものすごい勢いで自己紹介をする飛田に驚く若葉
見かねた鬼頭が飛田を強引に引き離し、何とか
その場は落ち着いた
「という事は若葉さんも奇食を?」
「いや、彼女は持病の関係で無茶をさせる事は
出来ない」
今回の奇食を提案したアベルチョフ曰く、店主は
あまり英語が通じないとの事
鬼頭はローカルな言語の心得はあるものの、
トラブル回避の為に。念には念を、と言う事で
通訳として若葉に同行を頼んだのだ
「先方を待たせて機嫌を損ねて奇食を食い損ねる
なんて事は避けたい。早く行くぞ」
「では若葉さん。私が手とり足取り
腰取りエスコートさせていただきます」
「貴様!俺の優秀な助手にセクハラをするな!」
「あはは……面白い方ですね」
「飛田。出掛けないのか?」
「出かけるって何処に?」
奇食を堪能した後、ホテルに戻った鬼頭と飛田は
夕食までの時間を部屋でゆっくりと過ごしていた
いつもなら例の店に行く事を想像してソワソワする
飛田だが今日はやけに落ち着いている。それを見て
違和感を覚えた鬼頭は尋ねた
「お前はいつも俺の奇食旅にかこつけて色店に
行っているじゃないか」
「色店?そんなの飛行機に乗る前に
キャンセルしましたよ」
「何ぃ!?キャンセルだと!?」
三度の飯より色店の飛田がまさかの店を
キャンセルしていた。それにより鬼頭の頭の中には
ある不安が過ぎる
「まさか若葉に良からぬ事を考えているのでは
ないだろうな」
「とんでもない!今晩、彼女と食事に行く
約束はしていますけどね」
しかし若葉は予定があり、飛田とは
レストランで待ち合わせる事になっていた
「………」
「そんな目で見ないでくださいよ!まるで俺が
悪い事をしようとしているみたいじゃないですか」
「日頃の行いのせいだ。それで約束の時間は
何時なんだ?」
「20時ですね。ではそろそろ」
「飛田。今、何時だと思っている?」
「18時ですね」
「流石に早すぎるだろう」
「あんなに素敵なレディを待たせる訳には
いきませんから」
「その律儀さを他に活かしてもらいたいものだな」
約束していたレストランの近くまで来たのは
よかったものの……
「ママー、あのおじさん何してるの?」
「み、見ちゃ駄目よ」
「あの日本人、何をブツブツ呟いてるんだ?」
「うーん……もう少し身だしなみを整えて
来た方がよかったか?」
ガラスで念入りに身だしなみをチェックする
飛田は周囲からすれば怪しい人物でしかなかった
「飛田さん?」
「!!若葉さん」
振り返るとそこには若葉は驚いた表情を
浮かべながら立っていた。どうやら思いの外、仕事が
早く終わったらしい
「約束していた時間より早いですけど入りますか?」
「俺の方は構いませんよ」
そして二人はレストランの中へと入った
「まさかアルバイトから正社員になれるとは
思いませんでしたよ」
「ローカルな言語に長けている人材は
彼にとって喉から手が出る程欲しかったでしょうね」
食事中、二人は意外にも仕事の話で花を
咲かせていた
「飛田さんも仕事の関係で海外に行く事があると
聞きましたよ」
「俺は基本的に英語圏内が多いので若葉さん程では
ありませんよ」
する飛田は改めて若葉の顔を見た。一呼吸
してから口を開いたがどうも歯切れが悪い
「あの、若葉さんはその」
「はい?」
「えーと……その」
喉でつっかえている一言がどうにも出てきそうに
ない。いつもの饒舌さは何処へ行ったのか
「こ、こい……」
「こい?」
「こ……コイのあら汁は食べた事ありますか?」
「はい。鬼頭さんに連れて行ってもらった
料亭で頂いた事はありますよ」
「そ、そうでしたか」
駄目だった。聞きたかったのはそんな事じゃない
「(一体、俺はどうしたんだ……?)」
飛田は平静を装うも、その内心は頭を抱えていた
「(恋人がいるのかどうか聞く事くらい色店の
予約を取るよりも簡単だろう……?)」
簡単の基準が少しおかしい気もしなくはない。
結局、この食事で飛田が若葉に恋人の有無を
聞ける事はなかった
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「今回は平和に終わりましたね」
「そうだな。ところで飛田。今回は感謝しよう」
「感謝?何の事です」
ラウンジで一行は飛行機が飛び立つまでの間を
ゆっくりと過ごしていた
すると鬼頭は若葉が飲み物を取りに席を
たった瞬間、飛田に礼を口にする
「若葉は人見知り故に周囲に誤解される事が
あってな。過去に色々とあったのだが……」
「そう、だったんですか」
「もう少しちゃんと人と関われるように頑張りますって
彼女が言っていた。お前がいい影響を与えたのだろう」
「それならよかった」
まさかその裏に少しばかりの下心があった事は
若葉は知らないだろう。とは言え、飛田のおかげで
あることに変わりはない
「しかし!俺は決してお前を認めた訳では無い!
帰国した後、くれぐれも彼女に付き纏うなよ!」
「ちょ、何でそうなるんですか!?ここから先は
大人同士の濃密で濃厚な関係を」
「やはり下心で優しくしていたのか貴様は!!」
この後、ラウンジで日本人同士が揉めていると
聞いて慌てて戻って来た若葉は二人の仲裁に
疲れて飛行機の中でぐっすりと眠ったらしい