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島田美月こと香月紫苑は今、神城組に
事務員として潜入していた
家入組長と宇佐美が瀕死の重傷を負わされた事を
切っ掛けに抗争へと発展。天羽組は防衛の為に
神城組がシマへ侵入してこないように香月を
送り込んだ訳だが……
「島田さーん。ご飯食べに行きませんか!」
「ええ是非」
そこで知り合った神城組妹分である若葉と
特に親しくなっていた
「(本当に可愛いな)」
香月は女嫌いではあったが、どういうわけか
若葉に対しては苦手意識を持たなかったようで……
目的を忘れた訳では無いけれど、若葉に
関しては個人的に興味を抱き、観察するのが日課に
なりつつあった。
そしてその結果、分かった事がある
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_香月side
俺は香月紫苑。組の命令で神城組に潜入している
天羽組の人間だ
今日は神城組の妹分である若葉について観察
してみようと思う
「若葉。髪の毛跳ねてるぞ」
「名波のカシラ?本当ですか」
「ジッとしてろ。直してやるから」
若葉の髪を直し終わると……
「気づかないなんて若葉らしいな」
「カシラの意地悪……」
「んな顔しても可愛いだけだぞ」
名波はサラッと褒めやがった。おい、下心が
透けて見えてんぞ
「若葉。お前、指怪我してんぞ」
「あ……本当だ。いつの間に」
「ったく。気をつけろよな」
広瀬はポケットから絆創膏と取り出して指に
巻き付けた
「これからは怪我したらちゃんと報告しろよ。
かすり傷でもだ」
「えぇ……?」
過保護過ぎねぇか?コイツ
「若葉。百田に見つかる前に食っちまえ」
「わ……!あんまんだぁ」
神城の野郎から渡されたあんまんを頬張る若葉……
可愛いな。おい
「んな所にあんこ付けんじゃねぇよ。子供か?」
「っ、親父様!」
「怒るなよ。取ってやっただけだろ」
何が取ってやっただけだ。口の端についたあんこを
指で取った後、食ったじゃねぇか。ハラスメントで
訴えるぞこの野郎
とにかく若葉は愛されている。実は既に
この事を俺は組に伝えていた
「(若葉に万が一の事があったら……)」
奴らを焚きつける事になる。組の威信とは別に
きっと報復に来る筈
「(要らない揉め事はつくるもんじゃねぇな)」
そんな事を考えながら俺等は今日も事務作業に
取り掛かっ……って
「若葉ちゃん……起きて?怒られるよ」
「うーん……」
ふと隣をみると穏やかに居眠りをしている若葉が
俺の目に入った。いくら彼女でも居眠りをしていたら
流石に怒られると思い、起こそうとしたが……
「別嬪さん。神城さんはいるかい」
「っ!?」
音も気配もなく背後から俺に声を掛けてきたのは
天羽組も警戒する妖怪、和泉錦之助だった
「え、えぇ……奥の部屋にいます」
「………」
すると視線は俺から若葉へと向けられる
「す、すみません。すぐ起こします。
若葉ちゃん……お客様がいるから起きて」
「構わんよ」
「え?」
すると和泉は若葉の頭を優しく撫で始める。
おい。何してんだよ
「この子の愛らしい寝顔を拝めるなんて今日の
あっしは誰よりも運がいいんでさぁ」
「あ、愛らしい‥…」
まさかこの男からそんな言葉を聞く事になるとは
思っていなくて俺は思わず面を食らってしまった
「うぅん……錦之助さ……」
「起こしてしまいましたか」
途中で目を覚ました若葉は寝ぼけ眼で
和泉の顔を見つめ……ん?待てよ。今、この男の事を
名前で呼んでなかったか?
「ごめんなさい……居眠りしちゃって……」
「お疲れなのでしょう。兄貴達に言いつけたりなんか
しませんから安心して下さい」
すると和泉は手に持っていた袋を若葉に手渡した
「知人から貰いましたがあっしには甘すぎますので
良かったら食べて下さいや」
ジジイ。甘いのは菓子じゃなくてテメェの若葉に
対する接し方だよ
つーかそれ、本当は貰い物じゃなくてテメェが
買ってきたんだろ?何白々しい嘘ついてんだ
「ありがとうございます……!」
騙されるな若葉!
「今度また甘味処付き合ってくれますか?」
「あっしが若葉さんの誘いを断った事ないでしょう。
いつでも声を掛けて下さって構いませんよ」
おいおいおい。どういう関係なんだよこの二人……
「島田さんっ!これからカフェ行きませんか?」
仕事を終え、帰り支度をしていた俺に若葉が
声を掛けてきた
「いいですよ」
「駅前に可愛い雰囲気のお店あるんです。
島田さんと行ってみたくて……!」
可愛いのはアンタの方だよ
「若葉、し、島田さん……」
「あ、市合の兄貴?」
すると同じく業務を終えた市合が俺達の傍に
来やがった
「俺も、一緒に行っていいかなぁ……?」
「あ、兄貴も是非」
「すみません。これから私達女子会をするので!
若葉ちゃん、早く行きましょ?」
「えっ、島田さん?私、そんな事一言も」
俺は急いで若葉の手を引いて組を後にした。
なんか後ろの方で奴が露骨に落ち込んていたのが
見えたが……俺達の邪魔をしようとするからこう
なるんだよバーカ
「島田さんが事務に来てくれて嬉しいです」
「私も若葉ちゃんに会えて嬉しい」
カフェに向かう道中。そんな事を言いながら
若葉は俺に笑顔を向けてきて……
だから俺はせめてもの笑顔と気持ちを返した
「(今だけは独占させてもらうぞ)」
ただでさえストレスの溜まる潜入捜査だ。
これくらいの癒やしがあってもいいよな?
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「香月の兄貴。傷の具合はどうですか」
「もう少しで復帰できそうだ」
香月は名波に正体を見破られ、圧倒的な戦力を前に
入院を余儀なくされた
そうなった以上、当然神城組には居られない。
若葉に会う事もなく空龍街に戻ってきたのだった
「小峠。若葉って妹分の情報は上がっているか?」
「最近、その女と思わしき人物の目撃情報が
報告されるようになりました」
小峠は言葉を続ける
「島田さんに会いたい、何処に居るの?と泣きながら
必死に探しているそうです」
「そう、か」
若葉の事が唯一の気掛かりだった香月にとって
あまり良くない報告だったのだろう
「全部が嘘じゃなかった、なんて信じてもらえるわけ
ないよな」
「香月の兄貴……あの」
「分かってる」
何がとは聞けなかった。あの香月がこんなにも
顔を曇らせているのだ
「どうか無理だけはしないで下さい」
「お前も人の事ばかり心配してないで自分の事を
心配しろよ。名波にやられた傷、完全に塞がって
ないんだろ?」
一人となった病室で香月は思考を巡らせる
「次に会える時があるとしたら……」
島田美月として、だろうか?それとも武闘派極道
香月紫苑としてだろうか
「会いたい、か……俺もだよ」
その小さく呟かれた一言は風に揺らめく
カーテンの擦れる音にかき消されたのだった