距離
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袖の長い服と首にはスカーフを巻いて痣を隠し、マリーネにだけ、手首を捻り、重たいものなど運べないと伝えた。
幸い昨日のスープが沢山残っていたので、朝食作業はいつもより楽なものだった。
配膳中、昨夜手当てをしてくれた方がこちらを心配そうに見つめているのに気がつき、「昨日はお見苦しい所をお見せしてすみませんでした。」と頭を下げれば、いいんだよ。と頭を撫でられ、ぎこちなく笑うことしか出来なかった。
予想していた通りリヴァイは食堂には現れず、同室の人に声をかければ、起きた時から見当たらない事と、あの部屋を使っていた大半の人が帰ってこなかった為、残った人達は皆違う部屋に纏められるとのことだ。
リヴァイはどこの部屋になるかまだ不明らしい事も伝えてくれる。
本人の希望によってはそのまま残ることも可能とのことなので、多分リヴァイは1人であの部屋を使うような気がした。
リヴァイに会えないことはなさそうだが、踏ん切りがつかない。
この痣を残したまま会うのも、なんて言えば良いのかも分からないのだ。
朝食の片付けが終わった後、ランドリーボックスを覗けばいつもより量は少なく、すぐに仕事が終わってしまった。
風に靡くマントと、そこについた自由の翼の紋章が酷く感傷的にさせる。
抜けるような青空。昨日の虹は見当たらなかった。
壁外調査の翌日は皆、報告書や書類仕事を行う。それは身体を休める名目のためにあるが、私達、幹部組は一番事務仕事が多くなる時期で、休むことは出来ない。
朝方からずっと机に向かっていて気分が滅入る。
気分転換も兼ねて、キース団長に報告書を届けに行こうと2階の廊下を歩けば、庭に兵士が溜まっているのが見えた。
建物の角の壁に、隠れるようなその様子に違和感を感じる。そして、彼等は一様に泣いているようだった。
その中にはミケやナナバもおり驚きを隠せない。
一体なにが…
その角の先を見やれば、無数の調査兵団のマントに囲まれてるあやかの姿があった。
きっと、洗濯済みのものを干し終わったのだろう。
彼女は切な気に空に手を伸ばし、時おり聖母のような顔をしながら口を動かしていた。
何か話しているのか…一体誰と…
気がつかれないよう、静かに窓を開ければ、風と一緒に空気に溶け込むような歌声が聞こえてきた。
触れることはもうかなわない でも いつも感じてる
わたしたちが生きた証しを くちびるに言葉を乗せ
あなたの代わりに 歌おう 声の限りに
あなたはいつだって わたしのそばにいる
目に見えぬ力で 心を奮わせる
いつかまた きっとまた めぐり会う時まで 少しだけのさよなら
悲しまないで うなだれないで
振り向かないで 怖がらないで
止(とど)まらないで あきらめないで
生きて行きたい あなたのように
あなたはいつの日か ふたたびよみがえり
永遠のどこかで わたしを待っている
たましいは決して 滅びることはない
いつかまた きっとまた めぐり会う時まで
少しだけのさよなら たくさんのありがとう
少しだけの さよなら
https://youtu.be/6D9YY2U7-WM
身体の力が抜け、今まで果てた仲間の顔が浮かんでくる。
鼻の奥がツンとして、目が潤んできていることに気がつき慌てて袖で拭う。
こんな感覚は子供の頃以来で戸惑いを隠せない。
声の主である彼女にもう一度目を落とせば、芝生に腰を下ろし、何も映さない表情で風に靡くマントを見つめていた。
昨日の言葉を思い出す。
─戦ってない私が、戦場にいる貴方を責められるわけないでしょう!─
そんな事を言われたのは調査兵団に入って、初めての事だった。
恨まれても仕方がないというのに
憎しみを全て私に向ければ楽になれるというのに
彼女はそれを望まない。
なんて優しくて壊れやすそうな人なのだろう。
血に染まってない一輪の無垢な花を見るようだ。
だから、彼等も必死に守っていたのか。
守ることで彼等は救われていたのだ。
儚げに揺れる姿を見ていると、ふいに顔をあげた彼女と目が合う。
その瞬間立ち上がり焦ったように会釈をした後、歩きだした。
その先には隠れて歌を聴いていた兵士がいて、焦ったように逆側へ走り去っていく。
滑稽で平和な光景に思わず笑みがこぼれ、私も気を引き締め直しキース団長の元へ急ぐ。
夕食時の配膳を行っていると、20名ほどの兵士が私にお礼を言ってきた。
「あやか、あんた何かしたの?」
「さ、さあ?なんだろう。」
心当たりが無さすぎる。
仕舞いにはエルヴィンさんやミケさんからもお礼を言われてしまい、何に対してのお礼か聞いてみるが答えが帰って来ず意味深に微笑まれるだけだった。
なんだろう…こわいな…
幸い昨日のスープが沢山残っていたので、朝食作業はいつもより楽なものだった。
配膳中、昨夜手当てをしてくれた方がこちらを心配そうに見つめているのに気がつき、「昨日はお見苦しい所をお見せしてすみませんでした。」と頭を下げれば、いいんだよ。と頭を撫でられ、ぎこちなく笑うことしか出来なかった。
予想していた通りリヴァイは食堂には現れず、同室の人に声をかければ、起きた時から見当たらない事と、あの部屋を使っていた大半の人が帰ってこなかった為、残った人達は皆違う部屋に纏められるとのことだ。
リヴァイはどこの部屋になるかまだ不明らしい事も伝えてくれる。
本人の希望によってはそのまま残ることも可能とのことなので、多分リヴァイは1人であの部屋を使うような気がした。
リヴァイに会えないことはなさそうだが、踏ん切りがつかない。
この痣を残したまま会うのも、なんて言えば良いのかも分からないのだ。
朝食の片付けが終わった後、ランドリーボックスを覗けばいつもより量は少なく、すぐに仕事が終わってしまった。
風に靡くマントと、そこについた自由の翼の紋章が酷く感傷的にさせる。
抜けるような青空。昨日の虹は見当たらなかった。
壁外調査の翌日は皆、報告書や書類仕事を行う。それは身体を休める名目のためにあるが、私達、幹部組は一番事務仕事が多くなる時期で、休むことは出来ない。
朝方からずっと机に向かっていて気分が滅入る。
気分転換も兼ねて、キース団長に報告書を届けに行こうと2階の廊下を歩けば、庭に兵士が溜まっているのが見えた。
建物の角の壁に、隠れるようなその様子に違和感を感じる。そして、彼等は一様に泣いているようだった。
その中にはミケやナナバもおり驚きを隠せない。
一体なにが…
その角の先を見やれば、無数の調査兵団のマントに囲まれてるあやかの姿があった。
きっと、洗濯済みのものを干し終わったのだろう。
彼女は切な気に空に手を伸ばし、時おり聖母のような顔をしながら口を動かしていた。
何か話しているのか…一体誰と…
気がつかれないよう、静かに窓を開ければ、風と一緒に空気に溶け込むような歌声が聞こえてきた。
触れることはもうかなわない でも いつも感じてる
わたしたちが生きた証しを くちびるに言葉を乗せ
あなたの代わりに 歌おう 声の限りに
あなたはいつだって わたしのそばにいる
目に見えぬ力で 心を奮わせる
いつかまた きっとまた めぐり会う時まで 少しだけのさよなら
悲しまないで うなだれないで
振り向かないで 怖がらないで
止(とど)まらないで あきらめないで
生きて行きたい あなたのように
あなたはいつの日か ふたたびよみがえり
永遠のどこかで わたしを待っている
たましいは決して 滅びることはない
いつかまた きっとまた めぐり会う時まで
少しだけのさよなら たくさんのありがとう
少しだけの さよなら
https://youtu.be/6D9YY2U7-WM
身体の力が抜け、今まで果てた仲間の顔が浮かんでくる。
鼻の奥がツンとして、目が潤んできていることに気がつき慌てて袖で拭う。
こんな感覚は子供の頃以来で戸惑いを隠せない。
声の主である彼女にもう一度目を落とせば、芝生に腰を下ろし、何も映さない表情で風に靡くマントを見つめていた。
昨日の言葉を思い出す。
─戦ってない私が、戦場にいる貴方を責められるわけないでしょう!─
そんな事を言われたのは調査兵団に入って、初めての事だった。
恨まれても仕方がないというのに
憎しみを全て私に向ければ楽になれるというのに
彼女はそれを望まない。
なんて優しくて壊れやすそうな人なのだろう。
血に染まってない一輪の無垢な花を見るようだ。
だから、彼等も必死に守っていたのか。
守ることで彼等は救われていたのだ。
儚げに揺れる姿を見ていると、ふいに顔をあげた彼女と目が合う。
その瞬間立ち上がり焦ったように会釈をした後、歩きだした。
その先には隠れて歌を聴いていた兵士がいて、焦ったように逆側へ走り去っていく。
滑稽で平和な光景に思わず笑みがこぼれ、私も気を引き締め直しキース団長の元へ急ぐ。
夕食時の配膳を行っていると、20名ほどの兵士が私にお礼を言ってきた。
「あやか、あんた何かしたの?」
「さ、さあ?なんだろう。」
心当たりが無さすぎる。
仕舞いにはエルヴィンさんやミケさんからもお礼を言われてしまい、何に対してのお礼か聞いてみるが答えが帰って来ず意味深に微笑まれるだけだった。
なんだろう…こわいな…