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2月14日、目の下のクマをファンデで隠して、指先の絆創膏を綺麗に貼り直して、ピンクの箱を手にあの人の元へ。風間さんと付き合って2回目のバレンタイン。それと同時に、風間さんと結ばれて1年が経つ。1年経っても憧れで愛しい人なのには変わらず、距離は近くなっても風間さんと呼んでしまう。
「風間さん、お待たせしました!」
『あきか、待ってたぞ』
風間さんが一人暮らししているマンションの、チャイムを鳴らし自動ドアを開けてもらう。お部屋にお呼ばれするのは初めてだ。ドキドキと高揚してコートの内側が汗ばむ。エレベーターを降り、もう一度目の前のチャイムを鳴らす。ガチャリ、と中から風間さんが出てきた。
「……寒いから早く入れ」
「はい、お邪魔します!」
靴の少ない玄関、シンプルに必要なものだけが置かれたワンルーム。促されて、その場に腰をかける。
「何を飲む? 温かいものがいいか」
「ホットミルクでお願いします!」
そう伝えれば、
「そう言うと思った。」
と微笑まれた。私と風間さんの、2人が好きな飲み物。正確に言えば多分、この人が美味しそうに飲んでたから好きになった。色違いのマグカップの、片方を渡されて手に包む。
「いただきます」
口をつけ、しばし無言になる。けど、風間さんは元々口数は多くないし気にはならない。普段であれば。今日はなんとなくそわそわして、どこか不安にも似た浮遊感を感じている。
「……風間さん、これ。今年のバレンタインチョコです!」
「ああ。ありがとう」
風間さんは私からチョコを受け取ると、じーっと箱を見つめた。
「今年も風間さんだけ、特製チョコです」
「ああ」
「去年より自信作です!」
「……ああ」
「食べてください!」
その言葉に返事はなく、風間さんは箱と私を交互に見た。
「……勿体無くないか?」
「勿体無くないです。折角作ったので、食べてください」
熱心にそう言えば、しぶしぶ風間さんは箱を開け、ゆっくりと取り出して一粒口に入れた。
「美味い」
「ありがとうございます! 去年より美味しくないです?」
「…………」
「去年と比べてどうですか?」
「去年と、」
「……味、落ちました?」
見た目だけにしたくなくて、必死にレシピを見て納得いくまで作り直したのだ。ごくり、と唾を飲み込み風間さんの言葉を待つ。
「……悪い、去年のを食べてないから比べることが出来ない」
「……はい?」
「だから、去年のチョコは勿体無くて、食べていないんだ」
目が点になった。食べてない?
「えっ、じゃあ去年のチョコは……」
「大事にとって、ある」
いつもより小さい声で風間さんは言った。嬉しかったのは一瞬で、冷静になって去年のチョコも手作りなことを思い出す。取ってあるのは、絶対にまずい。
「どこ! どこですかチョコ! 絶対悪くなってますよ!」
「その、」
「ここですか!? どこですかー!?」
慌てて部屋を探そうとする私を、
「待て、待て! 悪かったから部屋を漁るな!」
と風間さんが押し止める。結局、去年のチョコの行方ははぐらかされたまま。
「告白してきたあきがあまりにも可愛くて。どうしても食べられなかった」
そんなこと言われたら、捨ててなんて言えないじゃないですか!
「風間さん、お待たせしました!」
『あきか、待ってたぞ』
風間さんが一人暮らししているマンションの、チャイムを鳴らし自動ドアを開けてもらう。お部屋にお呼ばれするのは初めてだ。ドキドキと高揚してコートの内側が汗ばむ。エレベーターを降り、もう一度目の前のチャイムを鳴らす。ガチャリ、と中から風間さんが出てきた。
「……寒いから早く入れ」
「はい、お邪魔します!」
靴の少ない玄関、シンプルに必要なものだけが置かれたワンルーム。促されて、その場に腰をかける。
「何を飲む? 温かいものがいいか」
「ホットミルクでお願いします!」
そう伝えれば、
「そう言うと思った。」
と微笑まれた。私と風間さんの、2人が好きな飲み物。正確に言えば多分、この人が美味しそうに飲んでたから好きになった。色違いのマグカップの、片方を渡されて手に包む。
「いただきます」
口をつけ、しばし無言になる。けど、風間さんは元々口数は多くないし気にはならない。普段であれば。今日はなんとなくそわそわして、どこか不安にも似た浮遊感を感じている。
「……風間さん、これ。今年のバレンタインチョコです!」
「ああ。ありがとう」
風間さんは私からチョコを受け取ると、じーっと箱を見つめた。
「今年も風間さんだけ、特製チョコです」
「ああ」
「去年より自信作です!」
「……ああ」
「食べてください!」
その言葉に返事はなく、風間さんは箱と私を交互に見た。
「……勿体無くないか?」
「勿体無くないです。折角作ったので、食べてください」
熱心にそう言えば、しぶしぶ風間さんは箱を開け、ゆっくりと取り出して一粒口に入れた。
「美味い」
「ありがとうございます! 去年より美味しくないです?」
「…………」
「去年と比べてどうですか?」
「去年と、」
「……味、落ちました?」
見た目だけにしたくなくて、必死にレシピを見て納得いくまで作り直したのだ。ごくり、と唾を飲み込み風間さんの言葉を待つ。
「……悪い、去年のを食べてないから比べることが出来ない」
「……はい?」
「だから、去年のチョコは勿体無くて、食べていないんだ」
目が点になった。食べてない?
「えっ、じゃあ去年のチョコは……」
「大事にとって、ある」
いつもより小さい声で風間さんは言った。嬉しかったのは一瞬で、冷静になって去年のチョコも手作りなことを思い出す。取ってあるのは、絶対にまずい。
「どこ! どこですかチョコ! 絶対悪くなってますよ!」
「その、」
「ここですか!? どこですかー!?」
慌てて部屋を探そうとする私を、
「待て、待て! 悪かったから部屋を漁るな!」
と風間さんが押し止める。結局、去年のチョコの行方ははぐらかされたまま。
「告白してきたあきがあまりにも可愛くて。どうしても食べられなかった」
そんなこと言われたら、捨ててなんて言えないじゃないですか!