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暖かい日差しを浴びて伸びをする。大きく欠伸をして、耳の後ろを掻く。穏やかな午後、本日は晴天。街中をのんびり歩いていると、よく見知った泣きぼくろと目があった。
「おっいたいた」
爽やかに笑い駆け寄ってくる男から背を向けて逃げる。鬼ごっこは好きだ。彼が鬼で、私が逃げる。彼が私を見失わない程度に。時たま振り向けば、またにへらっと笑う。それを確認して、足の回転を速める。
「ほんま小さいのに、すばしこいやつやなぁ」
どこまででも彼はついてくる。誘い込むように、商店街を通り抜け、細い道から土手へと抜ける。お気に入りの場所。ここへ連れてくるのは、彼ぐらいのものだ。
「やーっと、捕まえたで」
「にゃあ」
ひょいと私の身体を持ち上げ、胸に抱きとめる。頭を擦り寄せれば、顎の下をわしわしと撫でられる。ごろごろと喉を鳴らしてご機嫌を伝えれば、だらしのない顔で私を見つめる。
「かわええなぁ。ほんまかわいい」
石段に腰を下ろすと、今度は膝の上に置かれて撫でられる。耳をそばだてながら、私は瞼を閉じた。無防備な私を、彼は黙って乗せたまましばらく遠くを見ていた。安らかな沈黙。次第に日が暮れ、斜陽が私達を照らす。
「そろそろ、こうするのも寒くてきつなるなぁ」
「にゃ?」
「お前は毛皮着てるから関係あらへんやろなぁ」
なにかお別れを言われている気がして、手を前足で掴んで噛んだ。
「いたっ。なんや、寂しいんか?」
「みゅー」
そのまま手をおもちゃに戯れれば、困ったように息を吐いた。
「??」
「こんだけ慣れてたら連れ帰れるかなぁ。けど、うちの猫気難しいからなー……」
他のやつの話をするので、起き上がって身震いした。毛並みに沿って撫でつけられ、お尻をぽんぽんと叩かれる。伸びをして、夜になる前に帰ろうと思ったら。
「待ち。ご飯あるで」
彼はポケットから白い紙に包まれた食べ物を出してきた。いい匂いに誘われて、カリカリとしたものを口にする。食べている間も、私を撫でる手は休まらない。
「ほんま野良のくせに懐っこいな。飼われてたんか?」
生まれてこの方、人間の顔を覚えたのは初めてな気がする。なんとなーく、彼の撫で方が好きなのだ。あとご飯もくれるし。なにか惹かれるものを感じて、いつもここに招くのだ。
「にゃあ」
「どういたしまして。おおきにな」
最後に頭をわしゃわしゃと撫でると、彼は立ち上がった。足元にまとわりついて、私の臭いを残す。
「ほな、また来るわ。あき、じゃあな」
数ある名前の中から、彼がつけた名前を呼ばれる。それに返事をして、どこかへ帰る背中を見送った。
「おっいたいた」
爽やかに笑い駆け寄ってくる男から背を向けて逃げる。鬼ごっこは好きだ。彼が鬼で、私が逃げる。彼が私を見失わない程度に。時たま振り向けば、またにへらっと笑う。それを確認して、足の回転を速める。
「ほんま小さいのに、すばしこいやつやなぁ」
どこまででも彼はついてくる。誘い込むように、商店街を通り抜け、細い道から土手へと抜ける。お気に入りの場所。ここへ連れてくるのは、彼ぐらいのものだ。
「やーっと、捕まえたで」
「にゃあ」
ひょいと私の身体を持ち上げ、胸に抱きとめる。頭を擦り寄せれば、顎の下をわしわしと撫でられる。ごろごろと喉を鳴らしてご機嫌を伝えれば、だらしのない顔で私を見つめる。
「かわええなぁ。ほんまかわいい」
石段に腰を下ろすと、今度は膝の上に置かれて撫でられる。耳をそばだてながら、私は瞼を閉じた。無防備な私を、彼は黙って乗せたまましばらく遠くを見ていた。安らかな沈黙。次第に日が暮れ、斜陽が私達を照らす。
「そろそろ、こうするのも寒くてきつなるなぁ」
「にゃ?」
「お前は毛皮着てるから関係あらへんやろなぁ」
なにかお別れを言われている気がして、手を前足で掴んで噛んだ。
「いたっ。なんや、寂しいんか?」
「みゅー」
そのまま手をおもちゃに戯れれば、困ったように息を吐いた。
「??」
「こんだけ慣れてたら連れ帰れるかなぁ。けど、うちの猫気難しいからなー……」
他のやつの話をするので、起き上がって身震いした。毛並みに沿って撫でつけられ、お尻をぽんぽんと叩かれる。伸びをして、夜になる前に帰ろうと思ったら。
「待ち。ご飯あるで」
彼はポケットから白い紙に包まれた食べ物を出してきた。いい匂いに誘われて、カリカリとしたものを口にする。食べている間も、私を撫でる手は休まらない。
「ほんま野良のくせに懐っこいな。飼われてたんか?」
生まれてこの方、人間の顔を覚えたのは初めてな気がする。なんとなーく、彼の撫で方が好きなのだ。あとご飯もくれるし。なにか惹かれるものを感じて、いつもここに招くのだ。
「にゃあ」
「どういたしまして。おおきにな」
最後に頭をわしゃわしゃと撫でると、彼は立ち上がった。足元にまとわりついて、私の臭いを残す。
「ほな、また来るわ。あき、じゃあな」
数ある名前の中から、彼がつけた名前を呼ばれる。それに返事をして、どこかへ帰る背中を見送った。