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ガチャリ、と玄関のドアが開く音がする。うとうととしていた意識が、ふっと現実に引き戻された。リビングに入ってきた悠一は、驚いた顔で、
「あれ、起きてたんだ」
と言った。悠一の顔色は白く、目の下には隈が出来ている。
「おかえり。なにか食べる?」
ここは別に悠一の家ではないのだが、ふらりと悠一が立ち寄ることがある。今夜は、帰ってくる気がしたのだ。女の勘。
「いや、夕飯は玉狛で食ってきたよ」
悠一は冷蔵庫を開けると、お茶を取り出してコップに注いで飲み干した。そっと近づけば、コップを差し出され飲むかと訊かれたので、首を横に振り断った。コップを片付ける背中に問いかける。
「ねえ、ちゃんと寝てるの?」
「んー」
曖昧な返事。悠一が私に弱さを見せなくなったのは、いつからだっただろうか。思い出せないくらい、昔のことだ。
「ご飯は? お風呂とかも入れてる?」
「大丈夫だよ」
「でも、」
「大丈夫だって」
振り返って悠一は笑う。その笑顔は周りを安心させるためのものであって、決して悠一の本心ではないことを知っている。何も言えずに目で訴えるけど、やっぱり悠一は笑うのだ。笑うしか、出来ないのだ。
「心配すんなよ。俺、実力派エリートだから」
そう茶化して、寝室に行ってしまう。堪らず追いかけて、その腕を引いた。
「!! 何、姉ちゃん」
目を見てしまえば言葉に詰まる。目も見つめられないなんて、なんて情けない姉だろうか。
「……無理は、しないで」
「………………分かったよ」
おやすみ、と私の頭を撫でて、悠一は来客用の寝室に入った。今夜はちゃんと寝てくれるだろうか。優しい弟が、未来のために自分を犠牲にしないよう、亡き母に祈った。
「あれ、起きてたんだ」
と言った。悠一の顔色は白く、目の下には隈が出来ている。
「おかえり。なにか食べる?」
ここは別に悠一の家ではないのだが、ふらりと悠一が立ち寄ることがある。今夜は、帰ってくる気がしたのだ。女の勘。
「いや、夕飯は玉狛で食ってきたよ」
悠一は冷蔵庫を開けると、お茶を取り出してコップに注いで飲み干した。そっと近づけば、コップを差し出され飲むかと訊かれたので、首を横に振り断った。コップを片付ける背中に問いかける。
「ねえ、ちゃんと寝てるの?」
「んー」
曖昧な返事。悠一が私に弱さを見せなくなったのは、いつからだっただろうか。思い出せないくらい、昔のことだ。
「ご飯は? お風呂とかも入れてる?」
「大丈夫だよ」
「でも、」
「大丈夫だって」
振り返って悠一は笑う。その笑顔は周りを安心させるためのものであって、決して悠一の本心ではないことを知っている。何も言えずに目で訴えるけど、やっぱり悠一は笑うのだ。笑うしか、出来ないのだ。
「心配すんなよ。俺、実力派エリートだから」
そう茶化して、寝室に行ってしまう。堪らず追いかけて、その腕を引いた。
「!! 何、姉ちゃん」
目を見てしまえば言葉に詰まる。目も見つめられないなんて、なんて情けない姉だろうか。
「……無理は、しないで」
「………………分かったよ」
おやすみ、と私の頭を撫でて、悠一は来客用の寝室に入った。今夜はちゃんと寝てくれるだろうか。優しい弟が、未来のために自分を犠牲にしないよう、亡き母に祈った。