short-1-
夢小説設定
ご利用の端末、あるいはブラウザ設定では夢小説機能をご利用になることができません。
古いスマートフォン端末や、一部ブラウザのプライベートブラウジング機能をご利用の際は、機能に制限が掛かることがございます。
俺は人なんて好きじゃない。痒いし、痛ぇし、いいことねぇ。勝手なことばかりだし、嘘を吐くなんて日常茶飯事だ。それでも、中には俺と仲良くしてくれる奴らもいて、そいつらのことはまぁ、大事にしとこうと思うけど。俺は人なんて好きじゃない。そんな俺が、見つけると話しに行っちまう奴がいる。
「よぉ、今暇か?」
「……暇、だけど」
こちらを見ずに、ぼんやりと早乙女は返事をした。ボーダー本部のロビー、少し人は多いが早乙女と話せるんならいい、我慢する。目を合わせないこいつの横に座り、こいつが追う視線の先を見る。
「人間観察なんて、楽しいのか? いつもしてるけどよ」
「……楽しいよ。人の見られたくないちょっとした失敗とか見れたりして」
「趣味悪りぃな」
カカカッと笑い飛ばしても、特に反論も意見も言わない。また吸い込まれる様に、人の波を追っている。
初めは、この視線がくすぐったかった。攻撃や批判をするわけでも、好意を寄せてるわけでもねぇ視線。ただただ、俺を観察してるだけの感情。他とは異質過ぎて、気持ち悪くなって問い詰めに行った。
「お前、どういうつもりなんだ」
と。すると、俺の胸辺りを見つめ、顔を上げようとしては下を向いて、
「……どんな人なのかなって。思ったから、見てた」
なんて、申し訳なさそうに言うので、怒る気など失せてしまった。恥じらっている様で、
『仲良くしたい』
そんな感情が刺さってきた。目はずっと、合わせないまま。
「じゃあ俺見かけたら声かけてやるから。もう俺を観察すんなよ」
気付けばそんな事を口走っていて、こくり、と早乙女は頷いた。その時、何かを一緒に奪われた気がした。
今、彼女は日課の人間観察をしている。早乙女の頭の中にはありもしない空想があるらしく、唐突にそれを語ることもあった。返事をしてやれば、うっすらと笑う。その横顔に、胸が締め付けられた。けど、俺は早乙女の目を見たことがない。ずっと、集中して人間観察をしているこいつの瞳に、俺の顔は映ったことがねぇ。ただ、
『貴方といると心地が良い』
そんな感情が、穏やかに肌を撫でている。くすぐったいけど、離れたいとは思わない。けど、そろそろこっちを向いてくれてもいいと思う。
「おい、聞いてるか?」
「聞いてるよ」
「こっち向け」
「…………」
言葉は帰って来ず、
『恥ずかしい恥ずかしい』
と感情は訴える。そんなこと知るか。俺は早乙女の目が見たいんだよ。
「お前と目を合わせて話がしてぇ」
「……怖くて出来ない」
「なんもしねぇよ。心配すんな。いつも通り、俺の話を聞いてるだけでいい。話したかったら話せばいい。だから、こっち向けよ」
努めて優しく声をかけたつもりだ。少しの間、早乙女は悩んでいた。だが、諦めない俺に観念したのか、身体ごとこちらを向いて座り直した。視線は、俺の膝にあるが。
「顔上げられるか?」
ふるふると早乙女は顔を横に振る。その姿は小動物のようで愛らしい。俺はもう自分の気持ちにとっくに気づいていた。だから、このチャンスは逃してはダメだと思った。
「早乙女、俺はお前が好きだ。だから、お前の目を見てみたい」
ぎゅっと縮こまる身体。キュッと早乙女は自身のスカートを握った。そして、バッと一瞬顔を上げた。バッチリと合って、すぐに逸らされた目。けれど、目が合った瞬間に、
『私も好きです』
と感情を受け取った。それが俺の胸を貫いて、自然と手が伸びていた。
「!!」
「なんだ、やっぱ綺麗な目してんな」
無理やり合わせた目には、戸惑いが揺れていたけど、奥底はきっと、俺と同じ色をしていた。
「よぉ、今暇か?」
「……暇、だけど」
こちらを見ずに、ぼんやりと早乙女は返事をした。ボーダー本部のロビー、少し人は多いが早乙女と話せるんならいい、我慢する。目を合わせないこいつの横に座り、こいつが追う視線の先を見る。
「人間観察なんて、楽しいのか? いつもしてるけどよ」
「……楽しいよ。人の見られたくないちょっとした失敗とか見れたりして」
「趣味悪りぃな」
カカカッと笑い飛ばしても、特に反論も意見も言わない。また吸い込まれる様に、人の波を追っている。
初めは、この視線がくすぐったかった。攻撃や批判をするわけでも、好意を寄せてるわけでもねぇ視線。ただただ、俺を観察してるだけの感情。他とは異質過ぎて、気持ち悪くなって問い詰めに行った。
「お前、どういうつもりなんだ」
と。すると、俺の胸辺りを見つめ、顔を上げようとしては下を向いて、
「……どんな人なのかなって。思ったから、見てた」
なんて、申し訳なさそうに言うので、怒る気など失せてしまった。恥じらっている様で、
『仲良くしたい』
そんな感情が刺さってきた。目はずっと、合わせないまま。
「じゃあ俺見かけたら声かけてやるから。もう俺を観察すんなよ」
気付けばそんな事を口走っていて、こくり、と早乙女は頷いた。その時、何かを一緒に奪われた気がした。
今、彼女は日課の人間観察をしている。早乙女の頭の中にはありもしない空想があるらしく、唐突にそれを語ることもあった。返事をしてやれば、うっすらと笑う。その横顔に、胸が締め付けられた。けど、俺は早乙女の目を見たことがない。ずっと、集中して人間観察をしているこいつの瞳に、俺の顔は映ったことがねぇ。ただ、
『貴方といると心地が良い』
そんな感情が、穏やかに肌を撫でている。くすぐったいけど、離れたいとは思わない。けど、そろそろこっちを向いてくれてもいいと思う。
「おい、聞いてるか?」
「聞いてるよ」
「こっち向け」
「…………」
言葉は帰って来ず、
『恥ずかしい恥ずかしい』
と感情は訴える。そんなこと知るか。俺は早乙女の目が見たいんだよ。
「お前と目を合わせて話がしてぇ」
「……怖くて出来ない」
「なんもしねぇよ。心配すんな。いつも通り、俺の話を聞いてるだけでいい。話したかったら話せばいい。だから、こっち向けよ」
努めて優しく声をかけたつもりだ。少しの間、早乙女は悩んでいた。だが、諦めない俺に観念したのか、身体ごとこちらを向いて座り直した。視線は、俺の膝にあるが。
「顔上げられるか?」
ふるふると早乙女は顔を横に振る。その姿は小動物のようで愛らしい。俺はもう自分の気持ちにとっくに気づいていた。だから、このチャンスは逃してはダメだと思った。
「早乙女、俺はお前が好きだ。だから、お前の目を見てみたい」
ぎゅっと縮こまる身体。キュッと早乙女は自身のスカートを握った。そして、バッと一瞬顔を上げた。バッチリと合って、すぐに逸らされた目。けれど、目が合った瞬間に、
『私も好きです』
と感情を受け取った。それが俺の胸を貫いて、自然と手が伸びていた。
「!!」
「なんだ、やっぱ綺麗な目してんな」
無理やり合わせた目には、戸惑いが揺れていたけど、奥底はきっと、俺と同じ色をしていた。