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「世の中正しくないことばかりだ」
腹いせに、粛清するように拳銃を撃ちまくる。このモールモッドは装甲が厚いらしく、私のアステロイドでは殆どキズがつかなかった。諦めて弧月を抜いたとき。
「!!」
横から別の銃声がする。モールモッドに黒く硬い重しが生え、動きが鈍る。その隙を逃さず、私は真っ直ぐに斬り上げた。モールモッドはふたつに裂かれ、動かなくなる。一息ついて、視線を近付く少年に移した。三輪君は少し戸惑うように、
「大丈夫か」
と声をかけた。
「別に頼んでない」
「知ってる。俺が勝手に手を出した。」
「それは、どうして?」
「……そうすべきだと思ったから」
2、3秒視線を交わす。これ以上言うことはないと私は踵を返した。次のゲートの誘導位置を、遠くでオペレーターが伝えた。
「まだ痛覚は切ってないのか?」
私の背に三輪君は問いかけた。黙って少しだけ立ち止まる。
「近界民が憎いのは、俺も同じだ。けど、痛覚があるまま戦い続けてたら、いくらトリオン体でももたないぞ」
「……別に。兄さんはもっと痛かった」
ギッと三輪君を睨めば、三輪君は口をつぐんだ。その様にまた憎しみが湧き上がる。目をつぶり、息を吐いて気持ちを落ち着かせた。
私の兄も、彼の姉も、2人とも近界民に殺された。殺された時、2人は一緒にいた。何故なら、三輪君のお姉さんは私の兄さんの彼女だったから。あの時、三輪君より先に私は2人を見つけた。見つけてしまった。甲高い叫び声と、彼女を庇って胸を貫かれた兄を。その兄の返り血を浴びて動けず、結局殺された彼女を。その光景を見て、何も出来ずに走り去った私を。思い出すだけで身体が震える。あの時、兄はなにを思って死んだのだろう。なにを思っていても、兄の死は無意味だった。無価値だった。守った人も、自分自身も、一緒に屠られたのだから。もし、2人が一緒にいなかったら? 兄が彼女を守らずに逃げていたら? 彼女がしっかり自分の身を守れていたら?
私は、兄の死を無駄にしたあの女が許せなかった。一緒に死ねて幸せだった? それこそ、吐き気がする。
「近界民を排除することは、ボーダーの責務だ。それを阻害する感情はいらない。早乙女は貴重な戦力だ。痛みで鈍るには勿体無いだろ」
三輪君の声ではっと現実に意識が戻る。灰色の、なにも変わらない現実。
「ごもっともね。で、それになんの意味があるの?」
「……意味?」
「三輪君は正しいこと言ってる。けど、それに意味なんてないでしょう?」
正しかったから兄は死んだ。正しくなくても彼女は死んだ。なら、正しさになんの意味があるだろう。
「私は私のやり方で復讐を果たす。この身体が悲鳴をあげて、使い物にならなくなるまで。毎日だって戦い続ける」
それを聞いて、三輪君は悲しげな瞳で頷いた。なんで、君がそんな顔をするのだろう。
「俺はただ、お前まで失いたくないだけで」
苦しげに吐き出された言葉を、聞こえないフリをしてその場を後にした。
腹いせに、粛清するように拳銃を撃ちまくる。このモールモッドは装甲が厚いらしく、私のアステロイドでは殆どキズがつかなかった。諦めて弧月を抜いたとき。
「!!」
横から別の銃声がする。モールモッドに黒く硬い重しが生え、動きが鈍る。その隙を逃さず、私は真っ直ぐに斬り上げた。モールモッドはふたつに裂かれ、動かなくなる。一息ついて、視線を近付く少年に移した。三輪君は少し戸惑うように、
「大丈夫か」
と声をかけた。
「別に頼んでない」
「知ってる。俺が勝手に手を出した。」
「それは、どうして?」
「……そうすべきだと思ったから」
2、3秒視線を交わす。これ以上言うことはないと私は踵を返した。次のゲートの誘導位置を、遠くでオペレーターが伝えた。
「まだ痛覚は切ってないのか?」
私の背に三輪君は問いかけた。黙って少しだけ立ち止まる。
「近界民が憎いのは、俺も同じだ。けど、痛覚があるまま戦い続けてたら、いくらトリオン体でももたないぞ」
「……別に。兄さんはもっと痛かった」
ギッと三輪君を睨めば、三輪君は口をつぐんだ。その様にまた憎しみが湧き上がる。目をつぶり、息を吐いて気持ちを落ち着かせた。
私の兄も、彼の姉も、2人とも近界民に殺された。殺された時、2人は一緒にいた。何故なら、三輪君のお姉さんは私の兄さんの彼女だったから。あの時、三輪君より先に私は2人を見つけた。見つけてしまった。甲高い叫び声と、彼女を庇って胸を貫かれた兄を。その兄の返り血を浴びて動けず、結局殺された彼女を。その光景を見て、何も出来ずに走り去った私を。思い出すだけで身体が震える。あの時、兄はなにを思って死んだのだろう。なにを思っていても、兄の死は無意味だった。無価値だった。守った人も、自分自身も、一緒に屠られたのだから。もし、2人が一緒にいなかったら? 兄が彼女を守らずに逃げていたら? 彼女がしっかり自分の身を守れていたら?
私は、兄の死を無駄にしたあの女が許せなかった。一緒に死ねて幸せだった? それこそ、吐き気がする。
「近界民を排除することは、ボーダーの責務だ。それを阻害する感情はいらない。早乙女は貴重な戦力だ。痛みで鈍るには勿体無いだろ」
三輪君の声ではっと現実に意識が戻る。灰色の、なにも変わらない現実。
「ごもっともね。で、それになんの意味があるの?」
「……意味?」
「三輪君は正しいこと言ってる。けど、それに意味なんてないでしょう?」
正しかったから兄は死んだ。正しくなくても彼女は死んだ。なら、正しさになんの意味があるだろう。
「私は私のやり方で復讐を果たす。この身体が悲鳴をあげて、使い物にならなくなるまで。毎日だって戦い続ける」
それを聞いて、三輪君は悲しげな瞳で頷いた。なんで、君がそんな顔をするのだろう。
「俺はただ、お前まで失いたくないだけで」
苦しげに吐き出された言葉を、聞こえないフリをしてその場を後にした。