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内気な私が菊地原君に告白するのは容易なことではなかった。友達と話していても、どうしても気を使って距離を置いてしまう私を、隣の席だった菊地原君が、「やめたら、それ」と声をかけてくれたのが、好きになったキッカケだった。どういうわけか、菊地原君は私の心を読むように話しかけてくれた。その優しさに救われて、私は以前より笑えるようになったと思う。
「僕の前で、言いたいこと言わずにいるのやめてくれる。気になるから」
何度か同じようなことを言われて、それなら全部話してしまおうと、恋心を打ち明けた。菊地原君は、
「言うのが遅いでしょ」
と言って少しだけ微笑んでくれた。それから、視線を下に落として
「僕も。多分早乙女のこと好きだから」
とだけ言ってその場を離れてしまった。次の日、四つ折りにされたメモを渡されて、電話番号とメールアドレスを知った。「いつでも連絡してきていいよ」と小さな字で書かれていた。慌てて私は書かれたアドレスにメールして、「よろしくお願いします!」と固い文章を書いた。案の定、「堅苦し過ぎ(笑)」と返信が着た。その日から、学校で会って話もするけど、毎日メールのやり取りをするようになった。たまに、
「明日からちょっとメール出来ないから。学校も休み。寂しくて泣いたりしないでね」
と連絡が取れないこともあったけど、そんな時は今までのメールのやり取りを見返して、士郎君の優しさに触れてやり過ごした。たくさんお話はしたけれど、士郎君はボーダーのA級隊員らしく、それがどれだけすごいのか私にはよく分からないけど、忙しかった。だからなかなかデートには誘えなかったんだけど。
「明日、日曜だけど任務ないから。映画でも見に行かない?」
初めてデートに誘われた。急なお誘いだったけど、勿論二つ返事でOKした。それから今日の朝になるまで、服装から持ち物まで悩みに悩んで、幸せな寝不足になった。うっかり寝坊しそうになったけど、走って電車に飛び乗ってなんとか間に合った。士郎君は、もう待ち合わせ場所に来ていた。
「随分ギリギリだね。寝坊でもした?」
「おっしゃる通りです……ごめんね、待たせて」
「いいよ、急に誘ったし。あきのことなら待てるから」
士郎君はふいっと歩き出す。その後ろを追いかけるように歩いた。日曜の駅前は人が多くて、何度も行く手を阻まれる。私が離れてしまう度、士郎君は立ち止まって待ってくれた。そんなことを2、3度繰り返したら、追いついたのに士郎君は動かなくなった。
「士郎君?」
「えっとさ、ほら。人が多いからさ。その、」
珍しくはっきり物を言わない士郎君に首を傾げる。ふーっと士郎君は長く息を吐くと、
「…………手。繋がない?」
と左手を差し出した。途端にドキドキと心臓が波打つ。うん、と声にならずに頷いて、右手を差し出す。そっと柔らかく手を繋がれて、再び歩き出す。
「あきの手、少し冷たいね」
「士郎君は、意外にあったかいんだね」
「意外って、なに」
「冷たいかと思ってた」
互いの手の温度が溶けあって、同じ温度になっていく。それがなんだか嬉しくて、眠気なんて吹き飛んだ。デートはまだ、始まったばかり。
「僕の前で、言いたいこと言わずにいるのやめてくれる。気になるから」
何度か同じようなことを言われて、それなら全部話してしまおうと、恋心を打ち明けた。菊地原君は、
「言うのが遅いでしょ」
と言って少しだけ微笑んでくれた。それから、視線を下に落として
「僕も。多分早乙女のこと好きだから」
とだけ言ってその場を離れてしまった。次の日、四つ折りにされたメモを渡されて、電話番号とメールアドレスを知った。「いつでも連絡してきていいよ」と小さな字で書かれていた。慌てて私は書かれたアドレスにメールして、「よろしくお願いします!」と固い文章を書いた。案の定、「堅苦し過ぎ(笑)」と返信が着た。その日から、学校で会って話もするけど、毎日メールのやり取りをするようになった。たまに、
「明日からちょっとメール出来ないから。学校も休み。寂しくて泣いたりしないでね」
と連絡が取れないこともあったけど、そんな時は今までのメールのやり取りを見返して、士郎君の優しさに触れてやり過ごした。たくさんお話はしたけれど、士郎君はボーダーのA級隊員らしく、それがどれだけすごいのか私にはよく分からないけど、忙しかった。だからなかなかデートには誘えなかったんだけど。
「明日、日曜だけど任務ないから。映画でも見に行かない?」
初めてデートに誘われた。急なお誘いだったけど、勿論二つ返事でOKした。それから今日の朝になるまで、服装から持ち物まで悩みに悩んで、幸せな寝不足になった。うっかり寝坊しそうになったけど、走って電車に飛び乗ってなんとか間に合った。士郎君は、もう待ち合わせ場所に来ていた。
「随分ギリギリだね。寝坊でもした?」
「おっしゃる通りです……ごめんね、待たせて」
「いいよ、急に誘ったし。あきのことなら待てるから」
士郎君はふいっと歩き出す。その後ろを追いかけるように歩いた。日曜の駅前は人が多くて、何度も行く手を阻まれる。私が離れてしまう度、士郎君は立ち止まって待ってくれた。そんなことを2、3度繰り返したら、追いついたのに士郎君は動かなくなった。
「士郎君?」
「えっとさ、ほら。人が多いからさ。その、」
珍しくはっきり物を言わない士郎君に首を傾げる。ふーっと士郎君は長く息を吐くと、
「…………手。繋がない?」
と左手を差し出した。途端にドキドキと心臓が波打つ。うん、と声にならずに頷いて、右手を差し出す。そっと柔らかく手を繋がれて、再び歩き出す。
「あきの手、少し冷たいね」
「士郎君は、意外にあったかいんだね」
「意外って、なに」
「冷たいかと思ってた」
互いの手の温度が溶けあって、同じ温度になっていく。それがなんだか嬉しくて、眠気なんて吹き飛んだ。デートはまだ、始まったばかり。