short-1-
夢小説設定
ご利用の端末、あるいはブラウザ設定では夢小説機能をご利用になることができません。
古いスマートフォン端末や、一部ブラウザのプライベートブラウジング機能をご利用の際は、機能に制限が掛かることがございます。
※原作より2年後、荒船哲次と夢主が20歳の設定です。お酒は20歳を過ぎてから。
「さむっ」
「大丈夫か? マフラー貸そうか」
「いや、荒船君寒いだろうからいいよ」
成人式を終えて、新年会だと皆で集まった帰り道。皆慣れないお酒を飲んでみて、言うほど美味しくないだとか、やばいハマるとか、各々感想が出た。私も具合悪くならないように様子みながら飲んだが、これがアルコールの味か、味はともかくとしてほろ酔いは心地いいことを覚えた。日付が変わる頃解散して、酔い潰れたやつを運んだり、男子は女子を送ったりして。私には家が近いのと、それほど酔っていなさそうな荒船君がついた。少し身体がフラつくと、肩を抱いて支えてくれる。その……いつもより近い距離にお酒のせいだけでなくドキドキする。
「ごめん、ありがとうね?」
「礼には及ばねぇよ」
一瞬にっと口角があがる。今の表情すごく良かった。かっこいい。それと同時になんか悔しい。私ばっかり翻弄されているようで。私にとって、荒船君は気になる意中の人だ。酔ったテンションで告白しそうになるが、夜風で頭を冷やし言いとどまる。
「着いちゃった。ありがとう荒船君、ここまででいいよ」
「いや、見届ける」
「え、いいよ」
「見届ける」
マンションのロビーまで来て、ずっと私が動くのを待つもんだから、しっかり部屋の玄関まで送ってもらうことにした。エレベーターに乗って、4階402号室まで。その間、荒船君も私も喋らない。
「……今日はありがとうね、楽しかった。また飲みに行こうね。おやすみ」
そう告げて玄関の鍵を開けたら。なんとドアノブを荒船君が握った。そのまま、堂々と私の部屋に上がりこむ。突然のことに、呆然としてしまったが、慌てて荒船君に続いて部屋に入る。
「荒船君、ちょっと! 勝手に上がられたら困る!」
「そうか、なんで?」
「なんでって言われても……」
もしかして、荒船君酔ってる?
「ほら、早くこっち来いよ」
そう言って我が物顔で私の部屋の座椅子に座り込み、手招きをする。うん、完全に酔ってるな、これ。
「荒船君、酔ってる?」
「酔ってねえよ俺は~」
ケラケラ笑う姿は完全に酔ってる人のそれだ。そうか、荒船君は酔いが顔に出ないタイプなのか。
「ほら、早くこっち来いって」
ぱしぱしと自分の膝を叩いて私を呼ぶ。ほだされそうになるけど、心に鞭打ち帰ってもらうよう説得を試みる。
「荒船君、ここは貴方の家じゃないでしょう? 帰らなきゃ」
「なんで? 早乙女の家は俺の家だろ?」
「それは違う」
とんでもない暴君ルールが出たものだ。
「私困るから……帰ってよ」
「早乙女、俺を捨てるのか?」
「うっ」
「今日は一緒にいたい。ダメか?」
「…………」
私の決心がグラグラに揺れる。気になる人にそんなこと言われたら、どうしたってときめいてしまう。うるうると子犬のような視線を向けられて、もうどうにでもなれと思考停止した。
「……今日だけだからね、泊めるの」
「よっしゃあ!」
ガッツポーズする荒船君に微笑んでしまう自分がいた。これが噂の送り狼というやつか。まさか荒船君がなるとは思わなかった。
「あき~」
「きゃっ!」
少し油断していたら、至近距離に荒船君がいる。なぜか名前呼びになってるし。そっと抱き寄せられて、胸や首筋に顔を埋められる。
「荒船君、くすぐったい……!」
「可愛いなぁ、あきは。可愛い」
熱を含んだ、とろんとした目にゾクっとする。しかし、瞼が下りる回数が増えてきて、荒船君は私にもたれかかるように力が抜けてきた。
「荒船君、寝ないで! ベットで寝て!」
「んんー……」
完全に寝落ちてしまう前に、なんとか引きずってベットへ運ぶ。私は今日は床だな、なんて思っていたら。
「あき~!」
「わっ」
ぼすん、と一緒に倒れ込まれた。荒船君は私を抱き枕みたいにしっかり抱えてしまう。足が絡み合い、荒船君の筋肉質な胸が目の前にある。
「もうぜっーたい離さねぇ」
「ちょっと、せめて化粧だけ落とさせて……」
幸い、手が届く所にメイク落としのシートが転がっていた。片付けが下手な私を褒めたくなったのは今日が初めてだ。閉じ込められた腕の中、なんとか身じろぎして化粧を落とした。その間も頭にキスされたり、首筋を舐められたりやりたい放題だ。
「荒船君、」
動きが止まったと思えば、規則正しい寝息が聞こえた。私を抱きしめたまま、眠ってしまったようだ。人肌の暖かさに触れて、私にも睡魔が襲う。結局そのまま、私も眠ってしまった。
小鳥の声と、暖かい日差しが朝の訪れを知らせる。目が覚めると荒船君はベットにいなかった。帰ったのだろうかと部屋を見回すと。
「早乙女、ほんっとにすまん! この通りだ!」
ベットの足元から大声がしてびっくりする。荒船君は私に向かって、額を床にすりつけて土下座した。
「全部、全部責任取る! 俺がなにしたか、正直に言ってくれ!」
「えっと、覚えてないの?」
「……ぼんやりとしか」
こんな情けない声の荒船君は初めて見る。少し意地悪がしたくなった。
「覚えてないんだ~あんなに激しかったのにな~」
荒船君の額から冷や汗が流れる。絶望したような顔をして、
「ごめん、すいません、償わせてくれ。後生だから……!」
と必死に土下座を繰り返す。流石に可哀想になった。
「嘘だよ、荒船君。なんもなかったよ?」
「!? 本当か? 本当のこと言えよ? 隠さなくていいから」
「うーん、じゃあ。胸とか首筋に顔埋められたり、」
「うっ、それから?」
「キスされたり……」
また繰り返し荒船君は土下座した。いいからとなだめながら、
「あと、名前で呼ばれたり……したよ」
と本当のことを話した。荒船君はもう泣きそうになっていて、
「最っ悪だな、俺……最低だ。あり得ねえ。本当に最悪」
と項垂れた。
「別に大丈夫だから」
「大丈夫じゃねぇよ! 好きでもない男に、一晩中触られてたなんて……俺はなんてことを……」
「私! 荒船君のこと好きだもん! だから大丈夫!」
思わず口が滑って、本音を言ってしまった。ぽかんと荒船君は口を開けて固まった。それからみるみるうちに真っ赤になった。
「なっ、な……嘘だろ、俺に気を遣ってんだろ、そうだろ?」
「う、嘘じゃないよ! 私は荒船君が好きだよ!」
何回か瞬きをして、荒船君は頭を抱えて両手で掻きむしった。そして、大きく長く息を吐くと、そっと両手で私の肩を抑えた。
「順番がまるっきり逆になっちまったけど」
熱い視線はそらせない。荒船君はもう一度大きく息を吐いた。
「さむっ」
「大丈夫か? マフラー貸そうか」
「いや、荒船君寒いだろうからいいよ」
成人式を終えて、新年会だと皆で集まった帰り道。皆慣れないお酒を飲んでみて、言うほど美味しくないだとか、やばいハマるとか、各々感想が出た。私も具合悪くならないように様子みながら飲んだが、これがアルコールの味か、味はともかくとしてほろ酔いは心地いいことを覚えた。日付が変わる頃解散して、酔い潰れたやつを運んだり、男子は女子を送ったりして。私には家が近いのと、それほど酔っていなさそうな荒船君がついた。少し身体がフラつくと、肩を抱いて支えてくれる。その……いつもより近い距離にお酒のせいだけでなくドキドキする。
「ごめん、ありがとうね?」
「礼には及ばねぇよ」
一瞬にっと口角があがる。今の表情すごく良かった。かっこいい。それと同時になんか悔しい。私ばっかり翻弄されているようで。私にとって、荒船君は気になる意中の人だ。酔ったテンションで告白しそうになるが、夜風で頭を冷やし言いとどまる。
「着いちゃった。ありがとう荒船君、ここまででいいよ」
「いや、見届ける」
「え、いいよ」
「見届ける」
マンションのロビーまで来て、ずっと私が動くのを待つもんだから、しっかり部屋の玄関まで送ってもらうことにした。エレベーターに乗って、4階402号室まで。その間、荒船君も私も喋らない。
「……今日はありがとうね、楽しかった。また飲みに行こうね。おやすみ」
そう告げて玄関の鍵を開けたら。なんとドアノブを荒船君が握った。そのまま、堂々と私の部屋に上がりこむ。突然のことに、呆然としてしまったが、慌てて荒船君に続いて部屋に入る。
「荒船君、ちょっと! 勝手に上がられたら困る!」
「そうか、なんで?」
「なんでって言われても……」
もしかして、荒船君酔ってる?
「ほら、早くこっち来いよ」
そう言って我が物顔で私の部屋の座椅子に座り込み、手招きをする。うん、完全に酔ってるな、これ。
「荒船君、酔ってる?」
「酔ってねえよ俺は~」
ケラケラ笑う姿は完全に酔ってる人のそれだ。そうか、荒船君は酔いが顔に出ないタイプなのか。
「ほら、早くこっち来いって」
ぱしぱしと自分の膝を叩いて私を呼ぶ。ほだされそうになるけど、心に鞭打ち帰ってもらうよう説得を試みる。
「荒船君、ここは貴方の家じゃないでしょう? 帰らなきゃ」
「なんで? 早乙女の家は俺の家だろ?」
「それは違う」
とんでもない暴君ルールが出たものだ。
「私困るから……帰ってよ」
「早乙女、俺を捨てるのか?」
「うっ」
「今日は一緒にいたい。ダメか?」
「…………」
私の決心がグラグラに揺れる。気になる人にそんなこと言われたら、どうしたってときめいてしまう。うるうると子犬のような視線を向けられて、もうどうにでもなれと思考停止した。
「……今日だけだからね、泊めるの」
「よっしゃあ!」
ガッツポーズする荒船君に微笑んでしまう自分がいた。これが噂の送り狼というやつか。まさか荒船君がなるとは思わなかった。
「あき~」
「きゃっ!」
少し油断していたら、至近距離に荒船君がいる。なぜか名前呼びになってるし。そっと抱き寄せられて、胸や首筋に顔を埋められる。
「荒船君、くすぐったい……!」
「可愛いなぁ、あきは。可愛い」
熱を含んだ、とろんとした目にゾクっとする。しかし、瞼が下りる回数が増えてきて、荒船君は私にもたれかかるように力が抜けてきた。
「荒船君、寝ないで! ベットで寝て!」
「んんー……」
完全に寝落ちてしまう前に、なんとか引きずってベットへ運ぶ。私は今日は床だな、なんて思っていたら。
「あき~!」
「わっ」
ぼすん、と一緒に倒れ込まれた。荒船君は私を抱き枕みたいにしっかり抱えてしまう。足が絡み合い、荒船君の筋肉質な胸が目の前にある。
「もうぜっーたい離さねぇ」
「ちょっと、せめて化粧だけ落とさせて……」
幸い、手が届く所にメイク落としのシートが転がっていた。片付けが下手な私を褒めたくなったのは今日が初めてだ。閉じ込められた腕の中、なんとか身じろぎして化粧を落とした。その間も頭にキスされたり、首筋を舐められたりやりたい放題だ。
「荒船君、」
動きが止まったと思えば、規則正しい寝息が聞こえた。私を抱きしめたまま、眠ってしまったようだ。人肌の暖かさに触れて、私にも睡魔が襲う。結局そのまま、私も眠ってしまった。
小鳥の声と、暖かい日差しが朝の訪れを知らせる。目が覚めると荒船君はベットにいなかった。帰ったのだろうかと部屋を見回すと。
「早乙女、ほんっとにすまん! この通りだ!」
ベットの足元から大声がしてびっくりする。荒船君は私に向かって、額を床にすりつけて土下座した。
「全部、全部責任取る! 俺がなにしたか、正直に言ってくれ!」
「えっと、覚えてないの?」
「……ぼんやりとしか」
こんな情けない声の荒船君は初めて見る。少し意地悪がしたくなった。
「覚えてないんだ~あんなに激しかったのにな~」
荒船君の額から冷や汗が流れる。絶望したような顔をして、
「ごめん、すいません、償わせてくれ。後生だから……!」
と必死に土下座を繰り返す。流石に可哀想になった。
「嘘だよ、荒船君。なんもなかったよ?」
「!? 本当か? 本当のこと言えよ? 隠さなくていいから」
「うーん、じゃあ。胸とか首筋に顔埋められたり、」
「うっ、それから?」
「キスされたり……」
また繰り返し荒船君は土下座した。いいからとなだめながら、
「あと、名前で呼ばれたり……したよ」
と本当のことを話した。荒船君はもう泣きそうになっていて、
「最っ悪だな、俺……最低だ。あり得ねえ。本当に最悪」
と項垂れた。
「別に大丈夫だから」
「大丈夫じゃねぇよ! 好きでもない男に、一晩中触られてたなんて……俺はなんてことを……」
「私! 荒船君のこと好きだもん! だから大丈夫!」
思わず口が滑って、本音を言ってしまった。ぽかんと荒船君は口を開けて固まった。それからみるみるうちに真っ赤になった。
「なっ、な……嘘だろ、俺に気を遣ってんだろ、そうだろ?」
「う、嘘じゃないよ! 私は荒船君が好きだよ!」
何回か瞬きをして、荒船君は頭を抱えて両手で掻きむしった。そして、大きく長く息を吐くと、そっと両手で私の肩を抑えた。
「順番がまるっきり逆になっちまったけど」
熱い視線はそらせない。荒船君はもう一度大きく息を吐いた。