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俺の真正面から、冷たい風が吹き抜ける。その風が冷たい、ということだけを感じて別に震えはしない、不思議な身体。昼も夜も人の気配のない街で、今夜も防衛任務にあたる。視覚支援を受けている目には、敵の姿がはっきりと映る。流れるように近界民のトリオン兵を片付けていくと、
「迅さーん!」
と元気な声が飛んできた。
「迅さん! 私、今10体目まで頑張ったよ!」
「おー大したもんだ」
俺が褒めてやると嬉しそうに飛び回る彼女は、最近どこからか林道さんが連れてきた。名を早乙女あきという。元気いっぱいで人懐こく、明るいあきの面倒は俺が見るように命令された。なので、今まで1人だった防衛任務は、最近少し賑やかになった。
「夜の任務楽しーね!」
「そうか? 夜も昼も変わらないけど」
「そんなことないよー! なんか、暗闇ってワクワクするじゃん!」
そう言ってその場でくるりと回る彼女は、実年齢よりもあどけなく幼く見える。俺よりみっつ歳下だと言っていた。はしゃぎながらも次々にトリオン兵を片付けていく姿は、緑川や双葉ちゃんを想起させる。端的に言えば、この子は強い。強くなる。トリガーを持って1ヶ月かそこらとは思えない。
「あきはさ、」
「なーに! 迅さん」
「あきは、近界民じゃないんだよな?」
きょとん、とあきの動きが止まる。首を傾げ、大げさに分からないというポーズをとった。
「違うと思うけど、じゃあ何て言えばいいの? こっちの人間?」
「まあ、そういう言い方になるかな。」
「そっか。こっちで生まれて育ったよー! 三門市から出たことないくらい!」
「そうなんだ。あきは覚えるのが速いね」
「何が?」
「戦うのが、さ」
さっき開いたゲート以外は、しばらく来る未来は見えない。少し休憩しようと俺はそこらの瓦礫に座り込んだ。すると、ぴったりとあきが横に座る。可愛い、と思うと、こんな子が戦いに慣れているというのは、悲しいことなんじゃないかと少しセンチメンタルな気分になる。
「戦わなくていい未来がくればいいのにな」
「迅さん?」
「誰も死なないし傷つかない、そんな平和な未来がさ」
「迅さんは、今幸せじゃないの?」
「そーだなぁ。どうだろうね」
自分が上手く笑えてるのか、不安になる。見えない黒く塗り潰された過去が、俺の後ろには続いている。
「私は幸せよ?」
俺を励ますように、あきは満面の笑みを向ける。その輝かしさに一瞬俺は気圧された。あきは立ち上がると俺に背を向けて、
「近界民が侵攻してきて、悲しいことはあったけど、いいこともたくさんあったと思うの!」
と向かいの家の屋根まで登った。ばっと両手を広げて振り向いた姿は、月光に照らされて美しい。
「だってこんな綺麗な星空、他じゃなかなか見れないわ!」
はっと俺は夜空を見上げた。街灯も消えたこの街の空は、こんなにも星に溢れていたのか。宝石をこぼしたような星空に、俺は息を飲んだ。
「綺麗だな」
「でしょう?」
彼女の考えは聞く人が聞けば反感を買うだろう。とても自分本位な考えだ。けれど、にこっと笑うあきは、今この世で一番綺麗なものに見えた。
「だから私、戦うのも嫌いじゃないわ。私達しか知らない、秘密の場所だもの、ここは!」
どんな未来になっても、笑い続けているあきが見えた。この子には、俺が見えていないものが見えるのかもしれない。彼女の笑う未来が、俺の笑える未来なのだろうか。彼女の未来に賭けたくなった。
「そうだな。あきといれば、俺も幸せになれるかもな」
「なれるんじゃない、幸せにするわ!」
「……ありがとうな」
まだ短い付き合いなのに、こんなにも胸に熱いものがこみ上げるなんて。俺には見えていなかった。
「迅さーん!」
と元気な声が飛んできた。
「迅さん! 私、今10体目まで頑張ったよ!」
「おー大したもんだ」
俺が褒めてやると嬉しそうに飛び回る彼女は、最近どこからか林道さんが連れてきた。名を早乙女あきという。元気いっぱいで人懐こく、明るいあきの面倒は俺が見るように命令された。なので、今まで1人だった防衛任務は、最近少し賑やかになった。
「夜の任務楽しーね!」
「そうか? 夜も昼も変わらないけど」
「そんなことないよー! なんか、暗闇ってワクワクするじゃん!」
そう言ってその場でくるりと回る彼女は、実年齢よりもあどけなく幼く見える。俺よりみっつ歳下だと言っていた。はしゃぎながらも次々にトリオン兵を片付けていく姿は、緑川や双葉ちゃんを想起させる。端的に言えば、この子は強い。強くなる。トリガーを持って1ヶ月かそこらとは思えない。
「あきはさ、」
「なーに! 迅さん」
「あきは、近界民じゃないんだよな?」
きょとん、とあきの動きが止まる。首を傾げ、大げさに分からないというポーズをとった。
「違うと思うけど、じゃあ何て言えばいいの? こっちの人間?」
「まあ、そういう言い方になるかな。」
「そっか。こっちで生まれて育ったよー! 三門市から出たことないくらい!」
「そうなんだ。あきは覚えるのが速いね」
「何が?」
「戦うのが、さ」
さっき開いたゲート以外は、しばらく来る未来は見えない。少し休憩しようと俺はそこらの瓦礫に座り込んだ。すると、ぴったりとあきが横に座る。可愛い、と思うと、こんな子が戦いに慣れているというのは、悲しいことなんじゃないかと少しセンチメンタルな気分になる。
「戦わなくていい未来がくればいいのにな」
「迅さん?」
「誰も死なないし傷つかない、そんな平和な未来がさ」
「迅さんは、今幸せじゃないの?」
「そーだなぁ。どうだろうね」
自分が上手く笑えてるのか、不安になる。見えない黒く塗り潰された過去が、俺の後ろには続いている。
「私は幸せよ?」
俺を励ますように、あきは満面の笑みを向ける。その輝かしさに一瞬俺は気圧された。あきは立ち上がると俺に背を向けて、
「近界民が侵攻してきて、悲しいことはあったけど、いいこともたくさんあったと思うの!」
と向かいの家の屋根まで登った。ばっと両手を広げて振り向いた姿は、月光に照らされて美しい。
「だってこんな綺麗な星空、他じゃなかなか見れないわ!」
はっと俺は夜空を見上げた。街灯も消えたこの街の空は、こんなにも星に溢れていたのか。宝石をこぼしたような星空に、俺は息を飲んだ。
「綺麗だな」
「でしょう?」
彼女の考えは聞く人が聞けば反感を買うだろう。とても自分本位な考えだ。けれど、にこっと笑うあきは、今この世で一番綺麗なものに見えた。
「だから私、戦うのも嫌いじゃないわ。私達しか知らない、秘密の場所だもの、ここは!」
どんな未来になっても、笑い続けているあきが見えた。この子には、俺が見えていないものが見えるのかもしれない。彼女の笑う未来が、俺の笑える未来なのだろうか。彼女の未来に賭けたくなった。
「そうだな。あきといれば、俺も幸せになれるかもな」
「なれるんじゃない、幸せにするわ!」
「……ありがとうな」
まだ短い付き合いなのに、こんなにも胸に熱いものがこみ上げるなんて。俺には見えていなかった。