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駅前の広場。約束の時刻を過ぎても、待っている人物は現れない。横に立つ出水君も、気持ちが急いているのかそわそわしている。
「太刀川遅いねー」
「そっすね」
今日は太刀川に誘われて、当真が美味しいと言っていたラーメンを食べに行く予定なのだが、いっこうに来る気配がない。携帯で時刻を確認すると、新着メールが着ていた。
『マジごめん! レポート終わんないから先行ってて』
はあー……と思わずため息が出た。本当に戦闘以外はだらしない男。このパターンは今日中には終わらないやつである。こうなっては仕方がないので、出水君と2人で食べちゃおう。せいぜい羨ましがるがいい。
「出水君、太刀川来れないって。もう行っちゃおう」
「え、あ、はい!」
太刀川さんからさっきメールが来た。
『俺は家で大人しくしとくから、まあ頑張れよ!』
本当にあの人は、余計な気を回してくる。単位いつもギリギリのクセに。待っている間も、どうしたらいいのか心臓はばくばくだったのに、来ないと分かってさらに緊張は高まった。憧れの早乙女先輩と2人きりでラーメン。ラーメンという、あんまりおしゃれとは言えないシチュエーションが、かえって自然体の先輩を見れる気がしてドキドキした。
「ありゃ、これ道逆に来ちゃったかも!」
急に先輩がこちらを向くので心臓は跳ね上がる。
「あっ、大丈夫っすよ! 俺、地図見ましょうか!」
「本当? じゃあお願いしようかな」
地図見るの苦手でさーなんて言いながら先輩が一歩俺と距離を詰める。ふわっと香った早乙女先輩の匂いにクラクラする。心拍はこれ以上アクセル踏めないってくらい速い。パニックになりながらも、なんとか目的地の方へ歩く。
「あ、先輩危ないっす!」
後ろから来た自転車から、スマホに気を取られてる手を引いて守る。ぽすっと先輩の頭が俺の胸辺りにある。
「わあー出水君さすが! 名アシスト!」
「あ、ははは。そんなことないっす。それより、気をつけてくださいよ」
「うん、そうだね~」
今あんなに近かったのに、先輩の様子はなに一つ変わらない。なんも意識してないんだろうな、って分かってチリチリと胸が痛む。
「あ、あそこじゃない!?」
お目当てのラーメン屋を見つけると、早乙女先輩は子供のように駆け出した。その姿に俺は苦笑する。
「さって、ニンニクましましにしちゃおっかなー!」
先輩は俺の気も知らずにラーメンにご機嫌だ。ご機嫌な先輩は可愛い。ちょっと悔しいくらいに。
「出水君、なににする?」
「え、じゃあ豚骨醤油」
「おっけー」
反射的に答えてしまったが、平然と出された財布に我に返る。
「ちょっと、お金自分で出しますよ!」
「いいのいいの! 高校生は奢られときなさい」
あっという間に俺の分まで食券を買われて、カウンターに座られてしまった。今更だが財布を出してお札を渡そうとするが、
「本当にいいから! しまってしまって!」
と頑なに受け取ってくれなかった。
「ラーメン美味しいといいね~」
「そっすね」
先輩の頭はもうラーメンのことしかないようで、バレないようにため息を吐く。やがてラーメンが運ばれてくると、そりゃもう美味しそうにすすって、会話すらなくなってしまった。俺もラーメンに口をつけるけど、横の先輩が気になって味わうどころじゃなかった。早乙女先輩が俺の恋人になったとしたら、こんな光景に慣れる日が来るんだろうか。そんな日が来ればいい。そう願いながら、一杯のラーメンをご馳走になった。
「太刀川遅いねー」
「そっすね」
今日は太刀川に誘われて、当真が美味しいと言っていたラーメンを食べに行く予定なのだが、いっこうに来る気配がない。携帯で時刻を確認すると、新着メールが着ていた。
『マジごめん! レポート終わんないから先行ってて』
はあー……と思わずため息が出た。本当に戦闘以外はだらしない男。このパターンは今日中には終わらないやつである。こうなっては仕方がないので、出水君と2人で食べちゃおう。せいぜい羨ましがるがいい。
「出水君、太刀川来れないって。もう行っちゃおう」
「え、あ、はい!」
太刀川さんからさっきメールが来た。
『俺は家で大人しくしとくから、まあ頑張れよ!』
本当にあの人は、余計な気を回してくる。単位いつもギリギリのクセに。待っている間も、どうしたらいいのか心臓はばくばくだったのに、来ないと分かってさらに緊張は高まった。憧れの早乙女先輩と2人きりでラーメン。ラーメンという、あんまりおしゃれとは言えないシチュエーションが、かえって自然体の先輩を見れる気がしてドキドキした。
「ありゃ、これ道逆に来ちゃったかも!」
急に先輩がこちらを向くので心臓は跳ね上がる。
「あっ、大丈夫っすよ! 俺、地図見ましょうか!」
「本当? じゃあお願いしようかな」
地図見るの苦手でさーなんて言いながら先輩が一歩俺と距離を詰める。ふわっと香った早乙女先輩の匂いにクラクラする。心拍はこれ以上アクセル踏めないってくらい速い。パニックになりながらも、なんとか目的地の方へ歩く。
「あ、先輩危ないっす!」
後ろから来た自転車から、スマホに気を取られてる手を引いて守る。ぽすっと先輩の頭が俺の胸辺りにある。
「わあー出水君さすが! 名アシスト!」
「あ、ははは。そんなことないっす。それより、気をつけてくださいよ」
「うん、そうだね~」
今あんなに近かったのに、先輩の様子はなに一つ変わらない。なんも意識してないんだろうな、って分かってチリチリと胸が痛む。
「あ、あそこじゃない!?」
お目当てのラーメン屋を見つけると、早乙女先輩は子供のように駆け出した。その姿に俺は苦笑する。
「さって、ニンニクましましにしちゃおっかなー!」
先輩は俺の気も知らずにラーメンにご機嫌だ。ご機嫌な先輩は可愛い。ちょっと悔しいくらいに。
「出水君、なににする?」
「え、じゃあ豚骨醤油」
「おっけー」
反射的に答えてしまったが、平然と出された財布に我に返る。
「ちょっと、お金自分で出しますよ!」
「いいのいいの! 高校生は奢られときなさい」
あっという間に俺の分まで食券を買われて、カウンターに座られてしまった。今更だが財布を出してお札を渡そうとするが、
「本当にいいから! しまってしまって!」
と頑なに受け取ってくれなかった。
「ラーメン美味しいといいね~」
「そっすね」
先輩の頭はもうラーメンのことしかないようで、バレないようにため息を吐く。やがてラーメンが運ばれてくると、そりゃもう美味しそうにすすって、会話すらなくなってしまった。俺もラーメンに口をつけるけど、横の先輩が気になって味わうどころじゃなかった。早乙女先輩が俺の恋人になったとしたら、こんな光景に慣れる日が来るんだろうか。そんな日が来ればいい。そう願いながら、一杯のラーメンをご馳走になった。