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「ありがとうございましたーまたのお越しをお待ちしております!」
最後のお客様を見送り、今日の営業は終了した。商店街にあるこの喫茶は、チェーン店ではあるがわりと常連客がおり、毎日そこそこ繁盛している。ただ、従業員は足りておらず、チーフである私はなかなか休めないでいる。今日なんか、閉店時間まで残っているのは私と高校生の烏丸君だけだ。こんな時間まで高校生を拘束しているなんて出るところに出られたら問題なのだが、烏丸君の事情と、彼が大変良く仕事が出来るために店長もなにも言わずにいる。加えて、烏丸君がホールに出ている日は集客率がアップする。主に女性客の。本当、こんなところでアルバイトなんかしないでアイドル事務所にでも行ったらいいんじゃないかと思う。ま、三門市から出るのも今の年齢じゃ無理か。そんな下世話なことを考えながら、レジ閉め作業をする。疲れから、手元のお札がぼやけて見える。人がいない日程や時間に優先的に入っているため、生活は不規則極まりなく、最近は1日しっかり休んだ記憶がない。そろそろやばいと思いつつ、仕事に穴を開けるわけにはと責任感が先に立つ。今日ももう終わりなんだからって、自分に喝を入れ計算をする。烏丸君は特に指示を出さなくても進んで店の清掃や片付けをしてくれている。そういうところを安心して任せられるのは大変助かる。レジのお金も1円もズレがなく、後は売り上げをエクセルに打ち込んで日報を書いたら帰れる。ふう、と息を吐き軽く伸びをした。
「あきさん、水飲みます?」
「おっありがとー。ごめん、片付け任せっきりで」
「いえ、大丈夫です。あきさんは終われそうですか」
「んーあとちょっとだから、烏丸君は先に上がってていいよー」
烏丸君がくれたコップを受け取り、水分を口に含む。飲んで初めて、意外と喉が渇いていたことに気づいた。一気に飲み干し、コップを空にする。烏丸君はその様子を見たまま、動かない。
「?? どうした? 帰んないの?」
「……ちょっと来月のシフトのことで相談があって」
「うん、それで?」
烏丸君の事だから、急に来なくなるなんてことはないだろうが、内心どんな要求が飛び出すのかビクビクしている。
「来月の最初の週の日曜日、全日お休みにして欲しいんです」
なんだ、それくらいなら。
「そっか、そうだよねー毎週日曜出てもらってるもんね。分かった、調整しておく」
1日くらいなら、休日出てくれる人もいるだろうし、私が出ればなんとかなる。忘れないようにメモを残していたら、
「その日、チーフにも休んで欲しいんです」
と、烏丸君は言った。
「は? え?」
「だから、その日はあきさんにも休んでもらいたいんです」
「え、いや、なんで? 流石に私も休むわけには……」
「店長に出てもらえばいいじゃないですか」
謎の注文に脳内は混乱する。店長が出れば、そりゃなんとかなるかもしれないけど……。
「いや、特に理由もなく日曜休むのは無理だよ」
「じゃあ、俺とデートする予定入れてください」
「え? ええ?」
ますます訳が分からない。なんで烏丸君とデートすることになってるんだ?
「烏丸君も日曜予定あるんじゃないの?」
「あきさんとデートする以外には特に予定はありません。」
「??? え、えー……?」
それじゃまるで私のために休むみたいなもんじゃないか。
「いいよ、そんな。私のことは気にせずゆっくり休んで」
「よくないです。ちゃんとあきさんも休んでください。それに、」
烏丸君と目を合わせる。その目は真剣で真っ直ぐで。ゴクリと息を飲んだ。
「俺があきさんとデートしたいんです。ダメですか?」
「ダ、ダメじゃない、けど……」
思わずそう言ってしまった。烏丸君はうっすら笑うと、鞄を持って出口に向かった。
「じゃあ、それでお願いします。ちゃんと休みになってなかったら、店長に抗議しますから」
お先に失礼します、と一礼して烏丸君は出て行った。私はポカンと呆気に取られて空いた口が塞がらない。なんで、私みたいなおばさんが烏丸君とデート? そこらの女の子に刺されるんじゃない?
「ど、どうしよう……」
イケメンから誘われて、ときめかないほど歳食ってない。どうやって日曜休もうなんて、計算を始めている私もいるわけなのだ。
最後のお客様を見送り、今日の営業は終了した。商店街にあるこの喫茶は、チェーン店ではあるがわりと常連客がおり、毎日そこそこ繁盛している。ただ、従業員は足りておらず、チーフである私はなかなか休めないでいる。今日なんか、閉店時間まで残っているのは私と高校生の烏丸君だけだ。こんな時間まで高校生を拘束しているなんて出るところに出られたら問題なのだが、烏丸君の事情と、彼が大変良く仕事が出来るために店長もなにも言わずにいる。加えて、烏丸君がホールに出ている日は集客率がアップする。主に女性客の。本当、こんなところでアルバイトなんかしないでアイドル事務所にでも行ったらいいんじゃないかと思う。ま、三門市から出るのも今の年齢じゃ無理か。そんな下世話なことを考えながら、レジ閉め作業をする。疲れから、手元のお札がぼやけて見える。人がいない日程や時間に優先的に入っているため、生活は不規則極まりなく、最近は1日しっかり休んだ記憶がない。そろそろやばいと思いつつ、仕事に穴を開けるわけにはと責任感が先に立つ。今日ももう終わりなんだからって、自分に喝を入れ計算をする。烏丸君は特に指示を出さなくても進んで店の清掃や片付けをしてくれている。そういうところを安心して任せられるのは大変助かる。レジのお金も1円もズレがなく、後は売り上げをエクセルに打ち込んで日報を書いたら帰れる。ふう、と息を吐き軽く伸びをした。
「あきさん、水飲みます?」
「おっありがとー。ごめん、片付け任せっきりで」
「いえ、大丈夫です。あきさんは終われそうですか」
「んーあとちょっとだから、烏丸君は先に上がってていいよー」
烏丸君がくれたコップを受け取り、水分を口に含む。飲んで初めて、意外と喉が渇いていたことに気づいた。一気に飲み干し、コップを空にする。烏丸君はその様子を見たまま、動かない。
「?? どうした? 帰んないの?」
「……ちょっと来月のシフトのことで相談があって」
「うん、それで?」
烏丸君の事だから、急に来なくなるなんてことはないだろうが、内心どんな要求が飛び出すのかビクビクしている。
「来月の最初の週の日曜日、全日お休みにして欲しいんです」
なんだ、それくらいなら。
「そっか、そうだよねー毎週日曜出てもらってるもんね。分かった、調整しておく」
1日くらいなら、休日出てくれる人もいるだろうし、私が出ればなんとかなる。忘れないようにメモを残していたら、
「その日、チーフにも休んで欲しいんです」
と、烏丸君は言った。
「は? え?」
「だから、その日はあきさんにも休んでもらいたいんです」
「え、いや、なんで? 流石に私も休むわけには……」
「店長に出てもらえばいいじゃないですか」
謎の注文に脳内は混乱する。店長が出れば、そりゃなんとかなるかもしれないけど……。
「いや、特に理由もなく日曜休むのは無理だよ」
「じゃあ、俺とデートする予定入れてください」
「え? ええ?」
ますます訳が分からない。なんで烏丸君とデートすることになってるんだ?
「烏丸君も日曜予定あるんじゃないの?」
「あきさんとデートする以外には特に予定はありません。」
「??? え、えー……?」
それじゃまるで私のために休むみたいなもんじゃないか。
「いいよ、そんな。私のことは気にせずゆっくり休んで」
「よくないです。ちゃんとあきさんも休んでください。それに、」
烏丸君と目を合わせる。その目は真剣で真っ直ぐで。ゴクリと息を飲んだ。
「俺があきさんとデートしたいんです。ダメですか?」
「ダ、ダメじゃない、けど……」
思わずそう言ってしまった。烏丸君はうっすら笑うと、鞄を持って出口に向かった。
「じゃあ、それでお願いします。ちゃんと休みになってなかったら、店長に抗議しますから」
お先に失礼します、と一礼して烏丸君は出て行った。私はポカンと呆気に取られて空いた口が塞がらない。なんで、私みたいなおばさんが烏丸君とデート? そこらの女の子に刺されるんじゃない?
「ど、どうしよう……」
イケメンから誘われて、ときめかないほど歳食ってない。どうやって日曜休もうなんて、計算を始めている私もいるわけなのだ。