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今日もいつも通り朝が来て、太陽が空を巡って、夕暮れになって、夜が来た。世界はなに一つ変わらない日だったはずだけど、私は1日憂鬱に過ごした。気がかりというには、あまりにも大きく重いこと。でも、私に出来ることは祈ることくらいで、自分の無力さを思い知った。なんで世界には争いが絶えないんだろうって、正義のヒーローみたいなことを考えもした。そんな風に悩むなんて私には似合わないことだけど。でも、愛は人を変えるんだって誰かが言ってたから、これもきっと愛なんだろう。
明日、士郎君が遠征に行く。
ボーダーの関係者しか知らないことだけど、私は士郎君にこっそり教えてもらった。近界民と戦うなんてそれこそ私は怖くて出来ないのに、士郎君はさらにそいつらを送ってくる星に行くのだと言う。正直、どんなものかなんて想像つかないししたくない。悪い、暗いイメージばかり浮かんでしまって背筋が寒くなる。怖い思いをしないだろうか、怪我しないだろうか、ちゃんと、帰ってくるだろうか。不安が心を埋め尽くす。耐えきれなくなって携帯に手を伸ばす。夜も遅いし、明日のためにもう寝ているかもしれない。でも、怒られてもいいから、声が聞きたかった。2コール、電話は繋がった。
「……もしもし」
「うわ、ひどい声」
開口一番、そう言われる。士郎君に隠し事なんて出来ない。
「あの、ごめん。寝てるかもって思ったんだけど、その、怖くて」
「寝てないから大丈夫。怖いの?」
「うん……不安なの」
「……僕が遠征に行くのが?」
「うん……危ないことないかなって……ちゃんと帰ってこれるのかなって……帰ってこなかったらどうしようって……!」
士郎君は強いから、こんなこと言ったら面倒くさい女だと思われるかな。けど、口からはポロポロ気持ちがこぼれていく。
「士郎君、行かないで……!」
ついには涙声になって、雫が頬をつたう。士郎君は黙って私の声を聞いていた。
「……あきの家の近く、公園あるでしょ。出てきなよ。会いに行くから」
「ぐすっ、う、ん」
「10分経ったら、家出て」
ガチャリ、と通話が切れる。涙をぬぐい、気持ちを落ち着かせようとしたけど、あまり効果はなかった。
10分後、私はそろりと家を出た。つん、と冷えた空気が肺に入る。家の斜め向かいの公園に入れば、ベンチに士郎君が座っていた。私に気づくと、こちらに来てくれる。止まった涙が、またこみ上げてくる。
「ふっ、うえ、士郎君、」
「あーもう、泣かないでよ……」
士郎君はそっと私を引き寄せると、ゆっくり私の頭を撫ぜた。その行為が優しくて、余計に涙が出る。私は士郎君の上着の襟を握りしめて、わんわん泣いた。
「うーっ、ぐすっ、嫌だぁ、すん、士郎君、いなく、なったら」
「…………ごめん。遠征のこと、言わなきゃよかったね」
「そんな、うっ、勝手に、あぶ、ないこと、ふっ、されるのも、嫌だぁ……」
「じゃあどうすればいいのさ」
士郎君が私の顔を見る。困ったような、心配してるような、そんな顔。はぁ、と溜め息を吐くと、親指の腹で私の目尻をなぞった。
「大丈夫だよ。僕強いし、そんな危ないことしないし」
「嘘、だあ……」
「嘘言ってどうするの。もう、そんな後ろ向きなんて、あきらしくない」
「だってぇ……士郎君の、ことだもん……大事、だもん……」
「分かった、分かったから」
ちゅ、と士郎君が私の涙を吸った。驚いていると、今度は唇に触れた。そのまま隙間なく抱きしめられる。暖かくて、安心する。気づいたら涙はひっこんでいた。
「ちゃんと、帰ってくるから。約束する」
「うん」
「危ないことしないし、いなくもならない。帰ってきたら、1番にあきに会いにくるから」
「うん」
「だから、あきも笑顔でいること。いい?」
「……うん」
よく出来ました、と士郎君は頭を撫でる。不安が食い尽くされることはないけど、士郎君の約束が私の心を支えてくれた。士郎君のこと、信じて待とうと思った。そうしたら、ちゃんと士郎君は帰ってきて、また私を抱きしめてくれるはずだから。
「他に、なにかして欲しいことは?」
「……もっかい、キス、して」
「……なにそれ、恥ずかしい」
もう一度、ちゅ、と触れ合う唇。その感触、温度を、次に会う時まで忘れない。
「これで満足?」
「うん!」
「……やっぱり笑った方がいいよ、あきは」
そう言って士郎君は微笑む。ようやく、普段の自分を取り戻せた気がする。貴方が帰ってくるまで、貴方が好きだと言ってくれた笑顔を絶やさないと誓うよ。だから、どうか私のところへ帰ってきて。
明日、士郎君が遠征に行く。
ボーダーの関係者しか知らないことだけど、私は士郎君にこっそり教えてもらった。近界民と戦うなんてそれこそ私は怖くて出来ないのに、士郎君はさらにそいつらを送ってくる星に行くのだと言う。正直、どんなものかなんて想像つかないししたくない。悪い、暗いイメージばかり浮かんでしまって背筋が寒くなる。怖い思いをしないだろうか、怪我しないだろうか、ちゃんと、帰ってくるだろうか。不安が心を埋め尽くす。耐えきれなくなって携帯に手を伸ばす。夜も遅いし、明日のためにもう寝ているかもしれない。でも、怒られてもいいから、声が聞きたかった。2コール、電話は繋がった。
「……もしもし」
「うわ、ひどい声」
開口一番、そう言われる。士郎君に隠し事なんて出来ない。
「あの、ごめん。寝てるかもって思ったんだけど、その、怖くて」
「寝てないから大丈夫。怖いの?」
「うん……不安なの」
「……僕が遠征に行くのが?」
「うん……危ないことないかなって……ちゃんと帰ってこれるのかなって……帰ってこなかったらどうしようって……!」
士郎君は強いから、こんなこと言ったら面倒くさい女だと思われるかな。けど、口からはポロポロ気持ちがこぼれていく。
「士郎君、行かないで……!」
ついには涙声になって、雫が頬をつたう。士郎君は黙って私の声を聞いていた。
「……あきの家の近く、公園あるでしょ。出てきなよ。会いに行くから」
「ぐすっ、う、ん」
「10分経ったら、家出て」
ガチャリ、と通話が切れる。涙をぬぐい、気持ちを落ち着かせようとしたけど、あまり効果はなかった。
10分後、私はそろりと家を出た。つん、と冷えた空気が肺に入る。家の斜め向かいの公園に入れば、ベンチに士郎君が座っていた。私に気づくと、こちらに来てくれる。止まった涙が、またこみ上げてくる。
「ふっ、うえ、士郎君、」
「あーもう、泣かないでよ……」
士郎君はそっと私を引き寄せると、ゆっくり私の頭を撫ぜた。その行為が優しくて、余計に涙が出る。私は士郎君の上着の襟を握りしめて、わんわん泣いた。
「うーっ、ぐすっ、嫌だぁ、すん、士郎君、いなく、なったら」
「…………ごめん。遠征のこと、言わなきゃよかったね」
「そんな、うっ、勝手に、あぶ、ないこと、ふっ、されるのも、嫌だぁ……」
「じゃあどうすればいいのさ」
士郎君が私の顔を見る。困ったような、心配してるような、そんな顔。はぁ、と溜め息を吐くと、親指の腹で私の目尻をなぞった。
「大丈夫だよ。僕強いし、そんな危ないことしないし」
「嘘、だあ……」
「嘘言ってどうするの。もう、そんな後ろ向きなんて、あきらしくない」
「だってぇ……士郎君の、ことだもん……大事、だもん……」
「分かった、分かったから」
ちゅ、と士郎君が私の涙を吸った。驚いていると、今度は唇に触れた。そのまま隙間なく抱きしめられる。暖かくて、安心する。気づいたら涙はひっこんでいた。
「ちゃんと、帰ってくるから。約束する」
「うん」
「危ないことしないし、いなくもならない。帰ってきたら、1番にあきに会いにくるから」
「うん」
「だから、あきも笑顔でいること。いい?」
「……うん」
よく出来ました、と士郎君は頭を撫でる。不安が食い尽くされることはないけど、士郎君の約束が私の心を支えてくれた。士郎君のこと、信じて待とうと思った。そうしたら、ちゃんと士郎君は帰ってきて、また私を抱きしめてくれるはずだから。
「他に、なにかして欲しいことは?」
「……もっかい、キス、して」
「……なにそれ、恥ずかしい」
もう一度、ちゅ、と触れ合う唇。その感触、温度を、次に会う時まで忘れない。
「これで満足?」
「うん!」
「……やっぱり笑った方がいいよ、あきは」
そう言って士郎君は微笑む。ようやく、普段の自分を取り戻せた気がする。貴方が帰ってくるまで、貴方が好きだと言ってくれた笑顔を絶やさないと誓うよ。だから、どうか私のところへ帰ってきて。