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午前3時45分。寝静まった街にこっそり繰り出したのは、危ない好奇心と代わり映えのない日常にちょっぴり疲れたから。来る日も来る日も、勉強ばかりの毎日。学校行って、塾行って、帰ってからも勉強して、また朝が来たら学校へ行って。うちの両親は一流大学に合格することに固執していて、中学生になった頃から自由な時間なんてほとんどなかった。別に勉強は嫌いじゃないから、周囲の子達が思ってるほど辛くはないんだけど、やっぱり部活動だったり委員会だったり、普通の高校生活にも憧れはある。まあ、普通の高校生はこんな時間に出歩いたりしないんだけど。これは私のささやかな反抗だ。眠れない時間くらい、好きに使ったっていいじゃない。街灯と星明かりだけが照らす道を、軽やかに歩いていく。すると、前方の道の端に、体育座りで座り込む人影を見つけた。具合でも悪いのだろうか、でもこんな時間だ、酔っ払いだったら面倒。避けるように離れて歩き、通り過ぎようとした。
「……!??」
横目にその人物を確認して驚く。どう見ても、小学生くらいだったのだ。
「君、どうしたの!?」
「お?」
「こんな時間に1人なんて……ご両親は?」
「いや、親はもういません」
「!? えっ、じゃあお家は? 帰らないと危ないよ?」
「おねーさんこそ、みせーねん? ってやつだろ? 俺よりよっぽど危ないと思うけど」
悪びれる様子もなく、淡々と私の言葉に答えてくる。妙に落ち着いていて、外見との違和感を覚えた。男の子は立ち上がると、私の前を歩き出す。
「おねーさんも帰る気ないんでしょ? ちょうどいいから、一緒に散歩しようよ。」
「えっ、私は……帰らないと」
「つまんない嘘つくね?」
私を見上げるふたつの眼は、全てを見通しているようで少し怖い。なんだか、この世界の人間じゃないんじゃないかなんて、SFチックな考えが浮かぶ。とにかく、逆らえないような気がしてその子の後をついて行った。
「おねーさん、名前は?」
「……早乙女あき、あきだよ」
「あきさんか。俺はクガユーマ。好きに呼んでいいよ」
「じゃあ、ユーマ君。ユーマ君はなんでこんな時間に外にいるの?」
「んー俺、眠れない身体なんだ。だから、夜はいつもヒマでさ」
「眠れない身体……??」
なんでもないようにさらりと言うけど、そんなことってあるのだろうか。
「あきさんは? なんかマジメそうなのに」
「真面目か……うん、そうだね。普段は真面目だよ。でも、ちょっとそれに疲れちゃって」
いつだって起きている時は、親や先生の言うことに従ってきた。それが真面目っていうならそうなんだろう。
「ふーん。じゃあ、やめれば? マジメ」
「えっ」
私の悩みを、すぱっと切り捨てるような物言いに戸惑う。ユーマ君の顔は、小学生のそれじゃなく、たくさんの経験を積んできた勇者のようだった。
「人間、いつ死ぬか分からないんだし、ルールとかしがらみとか、そんなものに縛られたらもったいないよ」
「死ぬって……真面目で死ぬことなんて」
「分からないよ?」
ハッキリとユーマ君は言い切る。その言葉が、私の心の中心を貫いてやけに響く。死ぬ、なんて。そんなこと、深く考えたことなかった。
「明日は今日とは違うんだから」
ユーマ君はそう言って笑いかけた。やっぱり、ユーマ君はなにか他の人と違う。少なくとも、私は今までに会ったことのない人物だ。私は、その魅力にものすごく惹かれ始めていた。
散歩のコースはユーマ君に任せっきりだった。気づいたら、小高い丘に連れてこられていた。
「よし、そろそろだな」
「なにが?」
「空、見てて」
空は星々が消えていき、徐々に光が照らし始めていた。やがて、地平線の向こうから太陽が登り始めた。
「うわあ……!!」
顔を出した太陽が、静かな三門市を明るく染め上げていく。どこまでも清々しい、朝焼け。
「私、こんなの初めて見た……!!」
「マジメなままだったら、見れてなかっただろ? よかったな」
自然と笑顔になっていることに気づいた。ユーマ君も笑っている。楽しい、と心が叫んでいた。私の中で、何かが変わるような気がした。太陽が全部姿を現し、街は朝を迎えた。
「……私、帰らなきゃ」
「そっか」
「ねえ、また会えるかな?」
「会えるよ。また、一緒に散歩しよう」
小指を差し出すと、不思議そうな顔をした。指切りを知らないらしい。ますます、不思議に満ちた子だ。もっともっと、彼のことを知りたい。生まれ変わった朝に、私はユーマ君と初めての指切りをした。
「……!??」
横目にその人物を確認して驚く。どう見ても、小学生くらいだったのだ。
「君、どうしたの!?」
「お?」
「こんな時間に1人なんて……ご両親は?」
「いや、親はもういません」
「!? えっ、じゃあお家は? 帰らないと危ないよ?」
「おねーさんこそ、みせーねん? ってやつだろ? 俺よりよっぽど危ないと思うけど」
悪びれる様子もなく、淡々と私の言葉に答えてくる。妙に落ち着いていて、外見との違和感を覚えた。男の子は立ち上がると、私の前を歩き出す。
「おねーさんも帰る気ないんでしょ? ちょうどいいから、一緒に散歩しようよ。」
「えっ、私は……帰らないと」
「つまんない嘘つくね?」
私を見上げるふたつの眼は、全てを見通しているようで少し怖い。なんだか、この世界の人間じゃないんじゃないかなんて、SFチックな考えが浮かぶ。とにかく、逆らえないような気がしてその子の後をついて行った。
「おねーさん、名前は?」
「……早乙女あき、あきだよ」
「あきさんか。俺はクガユーマ。好きに呼んでいいよ」
「じゃあ、ユーマ君。ユーマ君はなんでこんな時間に外にいるの?」
「んー俺、眠れない身体なんだ。だから、夜はいつもヒマでさ」
「眠れない身体……??」
なんでもないようにさらりと言うけど、そんなことってあるのだろうか。
「あきさんは? なんかマジメそうなのに」
「真面目か……うん、そうだね。普段は真面目だよ。でも、ちょっとそれに疲れちゃって」
いつだって起きている時は、親や先生の言うことに従ってきた。それが真面目っていうならそうなんだろう。
「ふーん。じゃあ、やめれば? マジメ」
「えっ」
私の悩みを、すぱっと切り捨てるような物言いに戸惑う。ユーマ君の顔は、小学生のそれじゃなく、たくさんの経験を積んできた勇者のようだった。
「人間、いつ死ぬか分からないんだし、ルールとかしがらみとか、そんなものに縛られたらもったいないよ」
「死ぬって……真面目で死ぬことなんて」
「分からないよ?」
ハッキリとユーマ君は言い切る。その言葉が、私の心の中心を貫いてやけに響く。死ぬ、なんて。そんなこと、深く考えたことなかった。
「明日は今日とは違うんだから」
ユーマ君はそう言って笑いかけた。やっぱり、ユーマ君はなにか他の人と違う。少なくとも、私は今までに会ったことのない人物だ。私は、その魅力にものすごく惹かれ始めていた。
散歩のコースはユーマ君に任せっきりだった。気づいたら、小高い丘に連れてこられていた。
「よし、そろそろだな」
「なにが?」
「空、見てて」
空は星々が消えていき、徐々に光が照らし始めていた。やがて、地平線の向こうから太陽が登り始めた。
「うわあ……!!」
顔を出した太陽が、静かな三門市を明るく染め上げていく。どこまでも清々しい、朝焼け。
「私、こんなの初めて見た……!!」
「マジメなままだったら、見れてなかっただろ? よかったな」
自然と笑顔になっていることに気づいた。ユーマ君も笑っている。楽しい、と心が叫んでいた。私の中で、何かが変わるような気がした。太陽が全部姿を現し、街は朝を迎えた。
「……私、帰らなきゃ」
「そっか」
「ねえ、また会えるかな?」
「会えるよ。また、一緒に散歩しよう」
小指を差し出すと、不思議そうな顔をした。指切りを知らないらしい。ますます、不思議に満ちた子だ。もっともっと、彼のことを知りたい。生まれ変わった朝に、私はユーマ君と初めての指切りをした。